国内屈指のリゾート地、軽井沢はスポーツアクティビティの宝庫! その魅力に迫る
夏は避暑地として、冬はスキーリゾートとして人気の軽井沢。軽井沢駅から車で10分ほどのエリアに、カーリングやアイススケートなど氷上のスポーツからテニスやバスケまで楽しめる 「軽井沢風越(かざこし)公園」があります。今回はその風越公園の魅力を探りに、「4years.」で活躍するスポーツライター・北川直樹さんが、旅で訪れても学生の合宿地としても満喫できる風越公園の施設を体験しました。
東京から軽井沢までたったの1時間
朝10時の東京駅発の北陸新幹線に乗り、11時に軽井沢駅に到着。東京から60分ほどのアクセスの良さだが、軽井沢に降り立って感じるのが澄み切った空気と風の心地よさ。
駅近くにはアウトレットやスキー場のほかに飲食店も多く、そばや定食が味わえる食事処から新鮮な地野菜を使ったレストランまで、ランチやディナーにも困らない。今日はこの後の体験取材に備えてソースかつ丼で腹ごしらえ。
昼食後、早速、今回の体験取材のメイン「軽井沢風越公園」まで車で移動。軽井沢駅から公園までは車で10分ほど。木漏れ日が美しい道路を走っていると標高2500mの名峰・浅間山も姿を見せ、これだけでも気分があがってくる。
駅から10分で、軽井沢風越公園へ
風越公園に近づくと、まず見えてくるのが立派な建物「軽井沢アイスパーク」。国内最大規模の6シートのカーリング競技場があるこのホールをはじめ、公園の端から端まで徒歩10分ほどのなかにさまざまなスポーツ施設がまとまっている。1998年長野オリンピックのカーリング競技会場となり現在は通年型屋内アイスリンクとして使われているアイスアリーナや、外周400mの屋外アイススケートリンクなど冬季スポーツを存分に満喫できる充実の施設。しかも、サッカーや野球ができるグラウンドや、バスケットボール、バレーボール、武道などに使える総合体育館、室内プールやトレーニングルームもあり、一年中スポーツを楽しめるスポーツ好きにはたまらない公園だ。
旅で訪れてスケートやカーリングといった氷上スポーツを楽しむ人もいれば、学生の合宿地としても人気が高まっているらしい。ここ数年でも、アイスアリーナを早稲田大学や法政大学、信州大学のアイスホッケー部が合宿で活用したり、屋外スケートリンクを東洋大学や山梨学院大学が活用したり、体育館ではバスケ強豪校の土浦日大高校、グラウンドでは鎌倉学園のアメフト部などが合宿地としてこの施設を活用している。都心からのアクセスの良さにくわえ、軽井沢周辺には宿泊施設も多いので、学生の合宿地としてぴったりだ。
最近では、アイスパークで実施するカーリングを用いたチームビルディングを企業研修の一貫として取り入れる企業も増えているという。たしかに近隣のホテルを利用して「ワーケーションしつつ、スポーツを楽しむ」という使い方もできるので、ビジネスパーソンにもおすすめだ。カーリング以外にも屋内アイスリンクでスケートを楽しんだり、トレーニングルームやプールで運動したり、手軽に利用することができる。
“カーリングの町・軽井沢”の聖地が、このアイスパーク
ぐるっと公園を一周して魅力を肌で感じたところで、アイスパークのカーリングホールへ。6つのカーリングシートや、200席以上の観客席を備え、NTC(ナショナルトレーニングセンター)競技別強化拠点にも指定された、国内最大級の立派な施設だ。
平日にもかかわらず、地元の小学生グループから高齢の方まで、多くの人が趣味としてカーリングを楽しんでいた。さすが“カーリングの町・軽井沢”の聖地だ。その横で、日本を代表するカーリング選手たちが練習をしているところを見られるのも素晴らしい環境。ここではひとりでもグループでもカーリング体験できるのが魅力だ。
カーリングは基本的に1チーム4人のスポーツ。対戦する2チームが交互にストーン(ハンドルのついた円盤型の石)を投げ、4人が2回ずつ投げて計16回投げると1エンドが終わり、計8~10エンド(大会によりエンド数は異なる)で勝敗をつける氷上のスポーツだ。カーリングをプレーしたことがある人は一般的には少ないかもしれないが、自分も初体験。カーリングといえば、世界大会で活躍し話題になった女子チーム「ロコ・ソラーレ」の試合をテレビで見たことしかなく、ストーンを中心近くに残したチームに得点が付くという、なんともざっくりとしたルールを知っている程度。スケート靴を履いていないのになぜあんなに滑れるのか? ブラシでリンクをこすることにどれほど意味があるのか? など疑問だらけ。体験することで、競技の見方も選手との距離感も近くなるのでは? そして、初心者にとってカーリングの醍醐味とは? と、アイスパークの雰囲気を見るだけで期待が膨らんでくる。
今回のカーリング体験の講師はSC軽井沢クラブの選手
今回のカーリング体験の講師は、この軽井沢アイスパークを本拠地として活動するクラブチーム「SC軽井沢クラブ」所属の山口剛史選手、小泉聡選手、栁澤李空(りく)選手の3名。今回は体験取材のためスペシャル講師として日本のトップ選手が教えてくれた。
SC軽井沢クラブは、世界で活躍する一般男子チーム、エリートチーム(女子・SC軽井沢クラブ、女子・SC軽井沢クラブJr.)、エリートアカデミー(世界を目指す21歳以下のジュニアカテゴリー)で構成されている。トップの選手たちがジュニア選手を指導し、そのジュニアがトップチームにあがりジュニアを教えるという地域スポーツの好循環を生み出し、常に世界で活躍する選手を排出する仕組みを目指しているクラブチームだ。
初めてのカーリング体験
カーリング体験の利用料金は、基本レクチャーとミニゲームがついて平日は60分コースひとり2420円、土日祝は90分コースひとり3410円(予約状況などによりコースの時間に変更の可能性あり/シューズ、ブラシなどの用具レンタル代込み)。さらにカーリング体験でレクチャーを受けると、後日またプレーしたいときにひとり1時間800円でフリーシート(共有使用のシート)を利用することもできる。1シートを占有貸切する場合は、1時間4000円で複数人の利用が可能だ(占有貸切は完全予約制)。
今回は、90分コースの体験へ。
専用のシューズを履いた後、カーリングホールに入る。室温は冷蔵庫と同じ約5℃なので上着が必要。さらに安全対策のための手袋と、転倒の際に頭を守るためのニット帽も必須だ。カーリングシートの氷面はスケートリンクとは異なり、水滴を撒いて凍らせたザラザラとした触感がある。
まずはストレッチ。内股をとくに良くほぐすようアドバイスを受ける。次にストーンの扱いについて説明を受けるが、初めて手にするストーンは想像以上に重く20kgほどの重量があるとのこと。
体験では実際にストーンを投げる前に、氷上で動き方の基礎を学ぶ。小さい頃、プールにはじめて入ったときに水に少しずつ顔をつけて慣らすのに似たもので、氷上をお腹で滑ってみたり、頭を打たないよう柔道の受け身に似た練習をしたり、ストーンを投げるポーズをとってみたり、徐々にリンクに慣れていく。氷上に慣れてくるとはじめに感じていた「転びそう…」という怖さもなくなり、「早くストーンを投げたい!」という思いに変わってくる。体の軸を保ったままデリバリー(ストーンを投げる動作)するのは難しいが、この動きがカーリングの基本で、何度も繰り返して感覚をつかんでいく。この基本動作にストーンを加えると、一通りの流れの出来上がり。
指導にあたってくれた選手たちは、親切にひとつひとつの動きにアドバイスを示しながら場を盛り上げてくれる。基礎的な練習、カーリングの試合の流れやコツを教わりながら理解を深めていく。ストーンを投げる動きは、氷上を見極める感覚がボーリングやビリヤードにもすこし似ていて、初めてでも親しみやすい。氷上を滑る気持ちよさや約40m先の「ハウス」と呼ばれる円にストーンを滑らせていき、他のストーンを弾き出す快感を体験では思う存分味わえる。ブラシでストーンの前の氷を掃きこすり、進行方向や距離を調整するスイーピングの難しさもわかる。カーリングは“氷上のチェス”と呼ばれるが、たしかに頭脳戦でもあり、コミュニケーションも大切だ。90分だったが、この一回だけでも競技に対しての見方も変わってくるのが、このカーリング体験のいいところだ。
最後にゲーム形式の対戦も経験でき、競技がぐっと身近になった。いままであいまいだったルールもより理解できる。そしてプレーをしてみると、リフレッシュ感や体を動かす気持ちよさもあるので、地元の方たちがカーリングを趣味にするのも納得だ。大学までスポーツをやりながら、いまは東京でつねに原稿に追われて体をなかなか動かす機会のない自分にとって最高の時間になった。
SC軽井沢クラブの選手に聞く、「カーリング界への思いと目標」
取材後に、今回カーリングを教えてくれた山口選手、小泉選手、栁澤選手に、これからのカーリング界への思いと目標について話を聞いた。
「カーリングは世界を目指す競技としての魅力はもちろん、生涯スポーツとして、レクリエーションとしての可能性にも期待を持っています」という山口選手は2005年にSC軽井沢クラブに加入。長年日本のカーリングを支え、2018年の平昌オリンピックでも日本代表として活躍。ジュニアの育成にも力をいれている。
SC軽井沢クラブを中心とした“カーリングの町”となったわけをこう考える。
「40m先の的を狙って当てる楽しさはシンプルながら奥が深く、年齢問わずいろいろなレベルで楽しむことができます。SC軽井沢クラブがスタートしたときに教えていた子どもたちが、ときを経て今ではチームメイトになっているという、世代の広さがカーリングの大きな魅力ですね」と言う。
その山口選手らに幼少期から指導を受けて今では世界を相手に戦う選手が、現在20歳の栁澤選手。
軽井沢出身の栁澤選手もまた、ジュニア世代にカーリングを伝えていきたいと考えている。
「カーリングに親しんだ子たちが高校や大学に進学しても競技を続けられるような流れをずっとつくることができたらと思っています」と言う。今後は自らのプレーに磨きをかけることに加えて、「SC軽井沢クラブの一貫した組織をさらに成熟させて、カーリングの楽しさを全国の方に伝えていくとともに、就職支援なども通じた取り組みをしていきたいです」
長野県上田市出身の小泉選手は、以前は同県東御(とうみ)市で中学校の体育教諭をしながらカーリングに取り組んできただけにカーリング普及に対する思いがとくに強い。
「軽井沢だけにとどまらず、様々な場所にリンクをつくることでカーリングを盛り上げることができたらと思っています。小さい子どもたちが上を目指せる環境をつくり、カーリングに関連する仕事やカーリングの選手として活躍しながら続けられる仕事があれば、もっと世界の舞台で活躍できる人材が育つことにもつながります。スケールをより広げてカーリングの普及に取り組んでいきたいです」と話す。
3人の話を聞いて思うのが、カーリングに対する熱い思いだけでなく、“未来のカーリング界”に対する熱い思い。1998年の長野オリンピックが開催されて以降、「ナガノ」と言えば世界でも通じるそうで、カーリングの聖地として知られる軽井沢では競技に幼少から親しむことができる。近隣にある3つの小学校では、5年生までに年1回カーリング大会を体験している。この“カーリングの町・軽井沢”がもっと世界に知られるために、そして全国にこの好循環の輪を広げるために3選手は、日本トップの選手として活動している。
結論、風越公園は、軽井沢旅行や部活の合宿プランに加えたい
今回丸一日かけて見て回って、体験した風越公園。軽井沢の自然豊かな環境のなかで気軽に楽しめる冬季スポーツ。夏はテニスもできればグラウンドも使うことができ、まさに通年型のスポーツ公園だった。しかも、17時に公園をあとにしても、19時には東京駅に戻ることができるアクセスの良さが何ともうれしい。
週末に気持ちと体のリフレッシュとして訪れるのはもちろん、競技合宿や研修など様々なアクティビティを行える魅力的な軽井沢風越公園。1泊でも日帰りでも軽井沢の旅行プランのひとつに加えてみては?
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