フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

関大・三宅星南「音楽に乗せて物語を表現できるスポーツ」で感動を与えられる選手に

12月22日開幕の全日本選手権では「自分が変われる」きっかけになるような演技を目指している(撮影・角野貴之)

最終目標は冬季オリンピック出場であり、「大好きなスケートをできる限り続けたい」。そのために今シーズンはスケートに専念できる環境を整え、練習のリズムを作ってきた。北京オリンピックの最終選考会である全日本選手権(12月23日開幕)を前にして、「点数や順位など周りのことは考えず、力を出し切ったら自分が変われると思う」。そう語る三宅星南(せな、関西大2年、岡山理科大学附属)の表情は凛々(りり)しく、力強さが感じられた。

 

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岡山で同じ歳の島田高志郎や木科雄登から刺激を受け

最初は姉が岡山県倉敷市にあるリンクのスケート教室に通っていた。「お留守番をさせるよりは」という親の思いから一緒について行くようになり、5歳の頃から姉と共にスケート教室に入っていた。何事も姉と一緒に行動しており、気づいた時にはクラブの貸し切り練習にも参加するようになっていた。当時、倉敷クラブには田中刑事(国際学園)も在籍しており、貸し切りで一緒に練習することになった時には、間近で見ても「すごい選手だな」と肌で感じていた。

倉敷市のリンクではクラブの先生が熱心に教えてくれ、楽しく練習に取り組んでいた。ほどなくして姉がステップアップのために岡山市のリンクに通うことになり、一緒に拠点のリンクを移ることになった。

岡山市のリンクでは長澤琴枝コーチに師事し、それからはぐんぐんと頭角を現していく。ノービスの時は上手になりたい一心で練習に取り組んでいたが、ダブルアクセルの習得に時間を要し、ノービスBでは悔しい思いも経験した。しかし、ノービスAでは全日本ノービス選手権で優勝するなど、将来を期待されるまでになった。

同じ歳の島田高志郎(早稲田大2年/木下グループ、就実学園)は同じ長澤コーチに師事しており、アクセル以外のトリプルジャンプを習得するのが早く、「間近で見ていていい刺激になった」と当時を振り返った。同じリンクには同じ歳の木科(きしな)雄登(関西大2年、金光学園)もおり、身近なところにライバルはいたが、純粋にスケートは楽しめていたという。

長光歌子コーチに学び、世界を経験

ジュニアに移行した後、成長期に入って身長が伸び、ジャンプが安定しないシーズンが続いた。幸いけがはしなかったものの、2シーズンほど結果が出ずに苦しい思いをしていた。それならば練習拠点を変えて心機一転頑張ってみようと思い、それまで育ててくれた感謝の気持ちを長澤コーチに伝えた上で、憧れであった髙橋大輔を指導している長光歌子コーチの元へと移った。

環境も指導者もかわった2016-17シーズンは、三宅にとって飛躍のシーズンとなった(撮影・諫山卓弥)

シーズン途中でのコーチの変更ではあったが不安はなく、ただただ頑張りたい一心で練習に取り組んだ。その結果、全日本ジュニアで6位入賞、推薦で初出場したシニアの全日本選手権では9位に入り、新人賞(全日本選手権で初出場者の最高順位の選手に授与される)を受賞した。また翌年は目標であった世界ジュニアにも出場が決まった。そのシーズンは平昌オリンピックのシーズンであり、世界ジュニアの最終選考会であった全日本選手権でオリンピック代表選手と一緒に名前が呼ばれ、ようやく世界ジュニア代表になった実感が湧いた。しかし、世界ジュニアでは持っている力が出しきれずに18位となり、悔しい思いをした大会となった。

長光コーチに師事してから関西大学のリンクで練習していたこともあり、2020年より関西大学総合情報学部に進学。関大はキャンパスがいくつかあり、キャンパス内にリンクがあることも総合情報学部を選んだ理由であったが、学びたいものもあり、この学部に決めた。入学当初はコロナ禍でリモート授業が多かったが、動画制作の授業で初めて自分自身で動画を作成した時、難しさも感じたが、勉強したことを使って新しい情報発信ができるのかもしれないなとも感じた。

三宅はスポーツギフティングでの活動を通じて、自分のことをより多くの人に知ってもらえたらと考えている(代表撮影)

その中でスポーツギフティング「Unlim(アンリム)」を知人を介して紹介してもらい、自分を知ってもらうきっかけになるのではないかと感じ、参加することに決めた。支援してもらえるのであれば、消耗品である靴やエッジ(ブレード)などの道具の購入や、練習時間の確保のために使っていきたいと考えている。

全日本は攻める気持ちで

今シーズン、アイスショーに出演する機会が多く、人前で滑ることで得たものがたくさんあった。特に今年は、スケーティングの技術や表現といった、エレメンツ以外のところを強化して練習を重ねており、少しずつ評価に繋(つな)がっていると手応えを感じている。

フィギュアスケートは特殊な競技で、「音楽に乗せて物語を表現できるスポーツ」と三宅は捉えている。その演技の中で、ジャンプのミスなどがあると流れが途切れてしまうため、全日本選手権では流れを途切らせず、攻める気持ちでミスがないように全力を出し切りたいと意気込む。また、全日本選手権では家族や地元・岡山の矢掛町の人々など、自分を支えてくれたたくさんの人々への感謝の気持ちを込め、「恩返し」となるような演技を見せたい。

スケーティングの技術や表現の向上に取り組んできた成果を、全日本選手権で見せたい(撮影・浅野有美)

将来は「フィギュアスケートを通して感動を与えられる選手になりたい」と胸の内を明かしてくれた。例えフィギュアスケートのことをよく知らなくても、中から溢(あふ)れ出るものが見える、そう感じてもらえるような演技を目指しているのだという。176cmの高身長でダイナミックな演技が持ち味の三宅。その熱い気持ちを胸に、これからもたくさんの人を魅了する選手になってほしいと願っている。

 

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【動画】関大・三宅星南「芯をすごく強く持って」 フリーはバレエ音楽「白鳥の湖」

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