フィギュアスケート

フィギュアのアイスダンス界に新星、羽生結弦に憧れる早稲田大・西山真瑚

2019年グランプリシリーズNHK杯エキシビションに出場した吉田唄菜、西山真瑚組(撮影・朝日新聞社)

フィギュアスケートのアイスダンス界に新星が現れた。16歳の吉田唄菜(うたな、N高)と18歳、西山真瑚(しんご、目黒日大高)のカップルだ。結成1シーズン目ながら、今年1月のユースオリンピック団体で金メダル、3月の世界ジュニア選手権で日本の歴代最高位となる12位に入った。西山は今春、憧れの羽生結弦と同じ早稲田大学に進学。4years.では昨シーズンの振り返りや今後の目標などを聞いた。

「フィギュア」の勘違いから始まった

西山は東京出身。スケートを始めたきっかけは小学1年の頃、家族で新宿区のシチズンプラザでスケート教室に参加したときだ。川越正大コーチから「フィギュアやらない?」と声をかけられた。その当時、フィギュアスケートを知らなかった西山は、模型のフィギュアと勘違い。すぐに「やりたい」と答えたが、後に「滑る」フィギュアだと気付いたという。そのフィギュアスケートが楽しくなり、毎日のように学校帰りにリンクに寄って練習した。

2016年全国中学校スケート大会で8位に入賞した西山。小さい頃から表現力が優れた選手だった(撮影・浅野有美)

憧れの羽生結弦がいるカナダへ

中学2年からはオリンピックに2大会出場経験を持つ樋口豊コーチの下でシングルスケーターとして練習に打ち込んだ。高校進学を前に20171月、カナダ・トロントのクリケット・クラブに拠点を移した。これまでサマーキャンプで練習したことがあるクラブだ。そこには顔なじみのコーチもいた。なによりも小学生の頃から憧れている羽生結弦がいた。

ホームステイをしながら海外生活が始まった。朝と昼で計3時間の氷上練習。羽生と同じ時間帯だった。当時は、ほかにも2018年平昌オリンピック男子銅メダリストのハビエル・フェルナンデス(スペイン)、同オリンピック団体金メダルのガブリエル・デールマン(カナダ)らが同じリンクにいた。

「トップの選手たちと一緒に練習することでスケーティングは成長したと思います。集中力の高め方、本番へのピークの持っていき方は凄いです。学びたいと思うんですが、なかなか難しいです」

アイスダンスへの打診、悩み続けた

練習環境は充実していたが、成績は伸び悩んだ。一方でノービス時代から競い合ってきた同年代の選手たちは既に活躍していた。島田高志郎(現・早稲田大学1年)、三宅星南(せな)、木科雄登(ともに現・関西大学1年)。ジュニアグランプリ(GP)シリーズや世界ジュニア選手権に出場していた。

そこに転機が訪れた。羽生が平昌オリンピックで2大会連続の金メダルを獲得した直後、クリケット・クラブのアイスダンスコーチ、アンドリュー・ハラムが「君がアイスダンスをやったら日本のアイスダンス界に貢献できると思う」と声をかけてくれた。「自分も世界の舞台に立ちたい」。西山はアイスダンスへの挑戦を始めた。カナダのアイスダンス選手にダンスのホールドの基礎を教えてもらいながら練習した。

だがアイスダンスへの転向は半年以上悩んだ。シングルスケーターとして結果を残したかったからだ。一人暮らしも始め、新シーズンを迎えたものの、気持ちだけが焦り、腰のけがも重なって大会に出場すらできなかった。

羽生結弦ら世界のトップが集うクリケット・クラブで練習する(写真提供・西山真瑚)

為末大の『諦める力』に出会い、意識が変わった

不本意なシーズンを送る中で、たまたま立ち寄った書店で陸上男子400mハードル日本記録保持者、為末大さんの著書『諦める力』を手に取った。それが意識を変えるきっかけになった。

「(シングルから)アイスダンスに転向することがマイナスなイメージがあったが、諦めるというのは電車を乗り換えるようなイメージになった。僕の最終的な目標地点はオリンピック。そこに行き着くまでの手段を変えるという考えに変わった」

日本スケート連盟に相談し、アイスダンスのトライアウトに参加。そこでアイスダンス経験が長く、相性がよかった吉田唄菜とカップルを組むことを決めた。2018年の秋のことだった。

 結成約1年でユースオリンピック団体金、世界ジュニア出場

2019年に入り、吉田もカナダに拠点を移し、本格的に練習をスタートさせた。西山はシングルとアイスダンスの両輪で取り組むことにした。

アイスダンスは靴もシングルとは違う上、細やかなエッジワークや相手との同調性が求められる。相手を持ち上げるリフトもある。だが、西山は「シビアなんですが、意外と自分は好きだった」と言う。踊るのが得意だったこともアイスダンスに向いていた。

新シーズンが始まると、その結成間もないカップルは大躍進を遂げた。ジュニアGPシリーズに出場し、全日本ジュニア選手権で優勝。ファンからは「うたしん」の愛称で親しまれた。

そして2020年1月、スイス・ローザンヌで行われたユースオリンピックで、異なる国・地域の選手でチームを組む団体でアイスダンス1位となり、チームで金メダル獲得した。

「ユース五輪は4年に1度。年齢も合っていないと出場できない。そこに偶然出場できた。団体が始まる前の日までまったく予想もしていなかった。びっくりでした」

さらに3月の世界ジュニア選手権で12位と大健闘した。偉大な先輩、羽生からも「頑張ってんじゃん」と褒めてもらえた。

スイスであったユースオリンピックNOC混合団体で金メダルを獲得した吉田唄菜(左)、西山真瑚(右)組(写真提供・西山真瑚)

五輪と指導者の夢を持ち、早稲田大学へ

西山は今春、羽生と同じ早稲田大学人間科学部eスクールに進学した。カナダを拠点にしながら競技と学業を両立できる大学を選んだ。レポート提出や小テストはすべてインターネットで行う。

西山にはオリンピック出場ともう一つの夢がある。それが指導者になることだ。そのために一番合っていたのが人間科学部だった。「コーチングや心理学を学びたい。クリケット・クラブはいい意味で選手と先生の距離が近い。先生が選手とコミュニケーションをとることが大事だと思った。僕もそういう先生になれるようにしっかり勉強して、いい選手を育てていけるようになりたい」

新型コロナウイルス感染拡大の影響でカナダも日本のリンクも閉鎖されているため、いまは日本の自宅で体幹を鍛えるトレーニングをして、シーズン開幕に備えている。

オリンピックと指導者の夢を持って大学生活をスタートさせた18歳。これからどんな将来が待っているのか楽しみだ。

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