フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

「アイスダンスを日本でメジャーにしたい」フィギュアスケート・西山真瑚

アイスダンスを人気スポーツにしたいと願う西山真瑚(すべて撮影・4years.編集部)

フィギュアスケート、早稲田大学1年の西山真瑚(しんご、18)は大きな夢を持っています。シングル選手だった西山は、2019年2月、吉田唄菜(うたな、17)とカップルを結成し、アイスダンスを始めました。「うたしん」の愛称で知られ、1シーズン目でユースオリンピック団体金メダル、3月の世界ジュニア選手権で日本の歴代最高位となる12位と大躍進しました。

吉田、西山組は、オリンピック2大会連続金メダルの羽生結弦と同じカナダ・トロントのクリケット・クラブを拠点にしています。日本ではアイスダンスの練習環境を整えるのが難しく、海外拠点にせざるを得ない現状があります。アイスダンスの世界に入り、日本でアイスダンス人気を高め、日本のアイスダンスを取り巻く環境を良くしたいという思いを持つようになりました。今回、スポーツギフティングサービス「Unlim」を通し、その夢を実現したいと願っています。

◆画像バナーよりギフティングサービス「Unlim」を通して寄付ができます。

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―アイスダンスを始めたきっかけを教えてください。

西山 2018年の平昌オリンピックの直後、拠点にしていたクリケット・クラブで、アイスダンスのアンドリュー・ハラム・コーチに声をかけられました。「君がアイスダンスをやったら日本のアイスダンス界に貢献できると思う」と言ってくれました。同世代の男子選手が世界で活躍していたので、自分もその舞台に立ちたいと思い、アイスダンスに挑戦することを決めました。

―アイスダンスを始めて感じたことはありますか。

西山 魅力的な競技だと気づいて、もっと普及させたいと思うようになりました。日本ではまだマイナースポーツですが、将来的にはシングルのように人気スポーツにしていきたいです。そのために、まずは競技人口を増やさないといけません。女子は興味を持ってくれている選手はたくさんいますが、男子はまだまだ少ないのが現状です。男子にとってイメージ的にも始めにくいのかなと感じます。僕もカナダに行くまではそう感じていましたから。

―シングルとも両立していますね。

西山 アイスダンスで結果を出すだけでなく、シングルも頑張りたいと思っています。日本ではアイスダンスがマイナーだからなのか、シングル選手がアイスダンスの選手と接点を待つ機会がとても少ないと感じます。その点からも、僕自身が両競技を同時進行しシングル選手たちとつながりを持つことで、シングルの男子選手たちにアイスダンスに興味をもってもらい、「西山くんがアイスダンスをやっているからやってみようかな」と挑戦する男子が増えていったらいいなと考えています。

―両立して良かったことは何ですか。

西山 両方取り組むことで技術的にいい効果があるとわかりました。僕の地元である東京では、アイスダンスの練習時間はとても少なく、大会も少ないです。シングル競技を掛け持ちしていることで、実質氷上での練習時間を増やすことができますし、シングルの大会に出場することで試合感覚も養われると思います。またシングルの練習が基礎となり、スピンなどの技のバリエーションが増え、アイスダンスに生かすことができます。僕が練習拠点としているクリケット・クラブでは、羽生選手をはじめ世界のトップシングル選手が練習しています。彼らと一緒に練習する事でスピード感や試合に向けての気持ちの持ち方など学ぶことができています。

―逆にシングルに生かせることは何ですか。

西山 アイスダンスはターン一つでもカーブの深さをすごく意識します。どれだけ正確にクリアなターンができるか、そうしたエッジを意識する滑り、スケーティングや踊り音の捉え方一つひとつにこだわるところはシングルで生きてくると思います。エッジの使い方が良くなると滑りが良くなるので、流れのあるきれいなジャンプを跳べるようになると感じています。

アイスダンスへの熱い思いを語る西山真瑚
【動画】「アイスダンス選手を増やしたい」西山真瑚の願い

―カナダはアイスダンスが盛んですね。

西山 カナダでは子どもの頃からアイスダンスもシングルも両方やっている選手がたくさんいます。シニアにいけばどちらかに絞りますが、ジュニアでは両方の試合に出ている選手もいます。例えば、カナダのCorey CIRCELLI(コーリー・セセリ)選手は両方のジュニアグランプリシリーズに出場しました。カナダには両方に取り組める環境があるというのも大きいです。クリケット・クラブにはアイスダンス・セッションがあり、シングル選手がアイスダンスの練習を見たり、やってみたりと触れる機会も多いです。

―日本では両方するには練習環境が厳しいですね。

西山 そうですね。アイスダンスはリンクを広く使うのでシングルの選手と一緒に練習はできません。競技人口が少ないのでアイスダンスの練習枠が限られており、個人でリンクを貸切ると金銭的にも大変です。せっかくアイスダンスに興味を待ってもらっても練習時間が少ないと続けていくことが難しくなります。鶏が先か卵が先かではないですが、競技人口が増えない限りは練習環境が整わないですし、練習環境が整わない限りは人口も増えません。

―カップル競技はとくに活動費が大変です。

西山 フィギュアスケートという競技は世界を目指すとなるとお金がかかります。特に、アイスダンスは現状では練習環境の面から、日本での活動が難しく海外拠点にならざるを得ません。日本スケート連盟もアイスダンスに関しては、トライアウトをする際に海外で練習する事を推奨しています。海外拠点となると、競技にかかわるレッスン代、トレーニング代、振り付け代の他に、生活費、航空券代がより必要となります。試合になるとコーチ帯同の費用は選手が持ちます。1人あたり年間およそ1000万円はかかります。日本でできたらどんなにいいか、と思うこともあります。

―新型コロナウイルスの影響で緊急帰国されたと聞きました。

西山 今もコーチのいるカナダにも戻れずにいます。日本での練習環境の確保は金銭的にも物理的にもアイスダンスにとって難しいため、今年は連盟が環境づくりに積極的に動いてくださったことにとても感謝しています。一方で、せっかく今年度選考していただいた海外拠点選手対象の助成金は、コロナ禍で海外にまだ戻れていないためにどうなるかわからない状況です。練習拠点のカナダに戻れなくてもクラブ費・家賃など今後の練習環境を維持するための費用は発生していることも事実です。競技に対するトレーニング以外にも、国際情勢にも柔軟に対応していくタフさ、海外で練習し世界のトップを目指す厳しさと難しさを改めて感じたシーズンになりました。

カナダを拠点にしているが新型コロナの影響で日本で練習している

―Unlimを通した支援をどう生かしていきたいですか。

西山 日本でアイスダンスの普及のために活用したいと考えています。まずは自分のアイスダンス競技力を高め、世界の舞台で結果を残すことに活用したいと思います。そして、日本帰国時にダンスの貸し切り時間を取るときには、練習環境に恵まれないノービスやジュニアの後輩カップルも一緒に練習できるようにしていきたいです。

―アイスダンス日本代表でオリンピックに3度出場したクリス・リードさんが今年3月に心臓突然死のため亡くなりました。昨年引退し、今年から関空アイスアリーナで後進を育て始めたところでした。姉で元パートナーのキャシー・リードさんがアイスダンス選手の育成に力を入れていますね。

西山 お二人は日本のアイスダンスをずっと引っ張ってきてくれた先輩です。クリスさんは村元哉中選手と組み、四大陸選手権銅メダルという歴史も残しました。クリスさんの遺志を引き継いで、僕も日本のアイスダンス界をひっぱって、後の世代につないでいけたらと思います。

―今シーズンは明るい兆しもありますね。

西山 2010年バンクーバーオリンピック銅メダルの高橋大輔選手の転向で、アイスダンスに注目がいくようになると思います。男子シングルでも高橋選手たちが世界で活躍して、羽生選手や宇野選手がこれに続き、これだけの人気種目になりました。未来を切り拓いていくのは大変なことだと思いますが、徐々にアイスダンスの人気が高まってくればいいなと思います。カナダのように普段リンクに行けば、アイスダンスをやっているカップルが何組もいる。日本のリンクもそういうふうになればいいなと思います。

(4years.では随時、西山真瑚の活躍を紹介していきます)

◆下の画像バナーよりギフティングサービス「Unlim」を通して寄付ができます。

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