明治大・藤原悠汰「チームのために」を貫き、インカレ後につかんだサガン鳥栖内定
第70回全日本大学選手権 準決勝
12月18日@NACK5スタジアム大宮
明治大 0-3 駒澤大
インカレ準決勝、今年度創部100周年を迎えた明治大学は決勝進出をかけ、駒澤大学と激突。0-3での敗戦で明治大の今シーズンは終わった。試合終了のホイッスルが鳴り響いた時、大会後にJ1・サガン鳥栖への来季加入が内定したFW藤原悠汰(4年、広島皆実)は天を仰いだ。
「止めるべきところで決められて、決めるべきところで決め切ることができなかった。負けた悔しさや決め切れなかったこと。サブやベンチ外で、試合に出られずに競技人生が終わってしまった4年生に対する申し訳なさなど、様々な思いがこみ上げてきた」
持ち前の得点力で「弱い世代」と言われてきたチームを引っ張ってきたエースだからこそ、その悔しさはひときわ大きかった。
どん底から始まり、3年目で勝利の立役者に
広島皆実高校(広島)から明治大入学後、1、2年生のうちは出場機会がなかった藤原。「下級生の頃は何もうまくいかなくて、上級生から『仕事もサッカーもできないし、何しに来たのか』と言われることもあって、本当にどん底だった」
苦しかった下積み時代を耐え抜き、その名が全国区となったのは、昨年度唯一の全国大会となった#atarimaeni CUP1回戦、福山大学戦でのことだった。1点ビハインドで迎えた後半からピッチに立つと、鮮やかなミドルシュートで同点に。延長前半には芸術的なフリーキックを沈め、チームの逆転勝利の立役者となるとともに、次期エースとしての期待が高まった。
しかし今年度の関東1部リーグ戦開幕節、スターティングメンバーに藤原の名前はなかった。今年度の序盤は長身FWの太田龍之介(2年、ファジアーノ岡山U-18)とFW佐藤恵允(2年、実践学園)ら2年生ツートップが台頭。藤原はベンチスタートに甘んじる試合も多かった。それでも「監督は明治のためにプレーする選手を使うし、プロになるという夢が先行すると、結果として試合に出られなくなると思う」とチームの勝利のためにプレーし続けた。その結果、第5節の慶應義塾大学戦、第6節の立正大学戦で決勝点を決めるなど、徐々にチームを勝利に導くストライカーとして存在感を増していった。
リーグ戦後期で勢いは更に加速。特に第14節国士舘大学戦では、2点ビハインドからチームを逆転勝利に導くハットトリックを達成するなど、リーグ戦であげた13ゴールのうち、12ゴールが勝ち点に直結した。だが、その唯一の例外となったのが、勝った方が優勝という状況で迎えたリーグ最終戦・流通経大学戦だった。前半42分に一瞬の動き出しから相手DFラインを破り先制点を奪取するも、後半に2失点。「13点目が勝ち点につながらなかったのが本当に残念」。目前でリーグ3連覇を逃し、藤原の顔は涙に濡れた。
インカレ準決勝敗退の悔しさも糧にして
タイトルとプロ入りへ、最後のチャンスとなったインカレ。「死に物狂いで勝ちにいかなければいけない」。2、3回戦は藤原の得点もあり、順当に突破。しかし準決勝、今季3敗を喫していた駒澤大に前半から押されてしまう。2点ビハインドで迎えた後半、明治大は太田を投入し、攻勢を強めた。藤原は「クロスのこぼれ球を自分が」と2列目から決定機を狙ったが、5本のシュートは相手ゴールを捉えられず。終盤には更に1点を追加され、0-3、リベンジは叶(かな)わなかった。
タイトルは逃したものの、藤原はストライカーとしての働きが認められ、インカレ後の12月にJ1への内定をつかみ取った。「自分が点を取っていく中でそれを認めてもらえるチームがあればいいなと思う」。チームを勝たせるFWとして結果を残し続け、ついにつかんだプロへの切符。「色々な人の支えがあってプロへのスタートラインに立てた。今度は自分が、見てくれる人に活力を与え、支えていく番だと思う」と言葉に力を込めた。
大学1、2年生の時は分厚い選手層に阻まれ、最上級生として迎えた今年度も下級生の突き上げを前に序盤はベンチスタートが続くなど、順風満帆ではなかった大学での4年間。それでもゴールで価値を証明してきたストライカーは、J1の舞台でもサガン鳥栖を勝利に導く。