サッカー

J川崎内定の法政大・松井蓮之、ラストイヤーの誓い 飛躍を支えた恩師と共に頂点へ 

大学2年次まではBチームでプレーしていた松井。今やチームに欠かせない中心選手だ

高いボール奪取能力が武器の守備的MF・松井蓮之(4年)。矢板中央高校時代には全国高校選手権でベスト4進出を果たし注目を集めた彼は、練習参加を経て法政大学へ。3年次にトップチームでの出場機会をつかむと、すぐさま中心選手となった。そして今年3月には、J1王者・川崎フロンターレへの加入内定が発表された。最終学年、そしてプロ内定選手として迎えた今季も、法大サッカー部に欠かせない存在として活躍を続けている。

法政Bチームから王者・川崎へ、松井が描いた成長曲線

今や大学サッカー界を代表する選手となった松井だが、入学当初は大学サッカーのレベルの高さに圧倒されたという。「当時は自分の実力がなかった」。高校時代から武器としてきた守備も通用せず、大学2年次まで各大学のBチーム相当のチームが集うIリーグ(インディペンデンスリーグ)でプレーした。そしてその当時、Bチームの指揮を執っていたのが井上平コーチである。「すごく細かい部分まで分析して、指導してくれますし、今の自分があるのは平さんのおかげ。感謝しています」

新型コロナによる活動停止期間もポジティブに捉え、さらに進化した

緻密な分析をもとにした井上コーチの指導を受け、松井は着実に力を伸ばしていった。「Aチームで試合に出て活躍したいという向上心がずっとありました。焦ることなく、自分の武器を伸ばそうと。当時の取り組みが、今こうして形になっているのは嬉しいですし、もっと成長したいと思っています」

Iリーグで成長を続け、3年生となった松井にチャンスが訪れた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されていた関東大学リーグ戦が7月に開幕。松井は早稲田大学との開幕戦に、スタメンとして抜擢されたのだ。持ち味である守備力を生かしたプレーで、チームに安定感をもたらしフル出場を果たすと、その後もトップチームの一員として試合出場を重ねていく。

そんな中、新型コロナウイルスのクラスターが発生。サッカー部は約1カ月間の活動停止を余儀なくされた。日常であるサッカーができない。多くの選手が不安を感じていたが、松井にとってこの期間は、その後の飛躍のきっかけとなったという。「最初は関東リーグの試合に出ることで必死でした。『中断明けにはこういうプレーをしよう』と自分の中で整理ができたのは、そこから伸びていった要因なのかなと思います」。過去の試合映像や、数カ月後に加入を決めることとなる川崎フロンターレの映像などから、自身のプレーを顧みた。難しい状況でも歩みを止めることはなく、未来を見据えたその行動が、松井をさらに進化させた。

支えてくれた全ての人へ、最高の恩返しを

最終学年となった今季、「全試合出場」という目標を掲げシーズンをスタートさせた。リーグ戦だけでなく、天皇杯予選やカップ戦を順調に勝ち進む法大。嬉しい悲鳴ともいうべきか、過密日程を強いられる中、松井はここまで全試合に出場している。経験が少ない3年生が主軸となるディフェンスラインに幾度となく顔を出しビルドアップをサポート。さらにはパスで好機を作り出すなど、持ち前の守備だけではなく攻撃面でも存在感を放ち、チームに欠かせない存在となっている。

守備だけではなく攻撃面でも存在感を発揮する

そして奇しくも、今季中心となってトップチームの指揮を執っているのが、飛躍を支えた恩師・井上コーチだ。先日行われたアミノバイタルカップ決勝。PK戦の末に惜しくも敗れた激闘を振り返った際にも、「結果を出すことが恩返しになると思っているので、あのような結果になってしまい悔しいです。ただ、リーグ戦、総理大臣杯、インカレがまだ残っています。全員で法政の強さを証明したい。優勝してカズさん(長山一也監督)と平さんを胴上げしたいですね」と、悔しさを滲ませながらも前を向いた。

「法政に関わる全ての人を笑顔に」。恩返しの気持ちで駆け抜ける

ここ数年、あと一歩のところでタイトルを逃す展開が続いている法大。今季も天皇杯東京都予選とアミノバイタルカップの2度、決勝の舞台で苦杯を喫している。しかし、足を止めている時間はない。「二度とあのような悔しい思いはしない」とチームは再スタートを切った。「法政に関わる全ての人を笑顔に」。今季、試合会場に掲げられている横断幕だ。その言葉を背に、松井蓮之は法大ラストイヤーを駆け抜ける。

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