野球

中央学院大の古田島成龍と山﨑凪、Wエースがわっしょい野球で初の大学日本一

明治神宮大会で初優勝した中央学院大の古田島成龍(左)と山崎凪のダブルエース(撮影・小川誠志)

秋の王者を決める第52回明治神宮野球大会大学の部は中央学院大学(関東5連盟第1代表・千葉県)が佛教大学(関西5連盟第1代表・京滋)、國學院大學(東都)、慶應義塾大学(東京六)を連破し初の大学日本一に輝いた。優勝に大きく貢献した古田島成龍(こたじま・せいりゅう、4年、取手松陽)、山﨑凪(なぎ、4年、千葉英和)はともに社会人の強豪へ進み、2年後のプロ入りを目指す。ダブルエースに改めて思いを聞いた。

強豪校をなぎ倒しての頂点

勝っていても負けていても明るい雰囲気で野球に取り組む、そのスタイルを主将・武田登生(とおい、4年、中央学院)は「わっしょい野球」と表現する。秋のリーグ戦、中央学院大は開幕から1勝3敗と苦戦したが、そこから6連勝でリーグ優勝を決め、その勢いのまま関東地区大学選手権3連勝、明治神宮大会3連勝と、計12連勝で初の大学日本一に上りつめた。

「わっしょい野球」と呼ぶ武田主将は神宮大会決勝で逆転二塁打(撮影・以下は朝日新聞社)

横浜スタジアムでの関東地区大学選手権では白鷗大学、東海大学、神奈川大学を下した。締めくくりの神宮大会決勝は東京六大学勢初の四冠を狙っていた慶大に4点リードされながら逆転勝ちした。関東、関西の伝統校、強豪校をなぎ倒し、文句のつけようのない日本一だった。関東大学選手権、明治神宮大会では打ち勝つ試合が目立ったが、リーグ戦では10試合中7試合が2点差以内の接戦だった。3カード目の国際武道大1回戦(○2-1)、4カード目の敬愛大1回戦(○3-2)は延長10回タイブレークを制しての勝利だ。もしそこで古田島、山﨑が崩れていたら、大学日本一の行方も大きく変わっていただろう。

お祭りの旗振り役は古田島

「わっしょい野球」の旗振り役を務めたのが副将の古田島だ。先発に、ロングリリーフにと大車輪の働きで投手陣を引っ張った。最速151kmの速球と多彩な変化球が武器。気迫を前面に出したピッチングで相手打者に立ち向かい、ピンチを乗り切ったときには力いっぱいのガッツポーズでチームを盛り上げる。投げないときはベンチの最前列で大きな声を出しチームメートを鼓舞した。

古田島は雨中の準々決勝を一人で投げきった

「エースというのは、投げてるときも投げないときも、チームの勝利に貢献できる存在だと思うんです。それが自分にとってのエースの理想像。まぁ、盛り上げたいとか、みんなを楽しませたいという性格もあるんですけどね」と古田島は笑顔で言う。

試合終盤を締めた守護神の山﨑

試合終盤にピンチを迎えると、守護神・山﨑の出番だ。最速149kmの速球と必殺フォークとのコンビネーションで三振を奪う。相手打者の内角を突く勝負度胸も山﨑の強みだ。山﨑の出番がくると、中央学院大の投手陣は全員がブルペン前に集まり、「山﨑、頼むぞ!」と笑顔で守護神をマウンドへ送り出す。これも古田島が投手陣に呼びかけてやり始めた。

「あれはうれしいですね。マウンドへ上がる前に勇気づけられて、絶対抑えるぞと気合が入るんです。でも、準決勝の國學院戦のときは、古田島が九回、急にストライクが入らなくなって交代になったから、みんな集まってくれなくて。自分、1人でマウンドへ行ったから寂しかったです(笑)」と山﨑は明治神宮大会準決勝、最終回の裏話を教えてくれた。古田島が招いた無死満塁のピンチを、山﨑は右飛、三振、三振で切り抜け決勝進出を果たす。試合後、古田島は山﨑の前で深々と頭を下げた。

準決勝、2番手の古田島(右)は完璧な内容だったが、九回突然の乱調。山﨑に助けられ試合後、感謝していた

刺激し合って成長してきた

2人は下級生のころからドラフト候補として注目を浴び、比較されてきた。それぞれに、自分の方が相手より勝っていること、相手にあって自分にないものを聞いてみた。

「真っすぐのキレは自分の方が勝っていると思う。凪の強みはフォークという決め球を持っていること。自分は変化球の球種が多いけれど、『決め球は何?』と言われると、その日によって変わるタイプなので」(古田島)

「自分はピンチのときでも腹が据わっていて堂々と投げられるので、短いイニング、1点差で勝っていて八、九回いけって言われたら、自分の方が向いています。逆に大事な試合に先発して試合を作る、長いイニングを投げるというのは古田島の方が適正がある」(山﨑)

山﨑が試合終盤にマウンドに上がるとチームに安心感を与えた

ライバル意識をバチバチにぶつけ合ってきたわけではないようだが、刺激し合ってここまで成長してきた。

プロ志望届出したが指名なし

秋、2人ともプロ志望届を出したが、リーグ戦優勝直後の10月11日、ドラフト会議で2人の名前が呼ばれることはなかった。

「仲のいいチームメートが、花束と手紙をくれたんです。本当は『おめでとう』の内容で書いていたのを、急いで激励の内容に書き直してくれたみたいで。それを読んで、自分はボロ泣きで、みんなも一緒に泣いてくれて……。プロ入りは自分だけの夢じゃないんだなと改めて感じて、2年後絶対にプロへ行くんだという気持ちを強くしました」(古田島)

決勝の九回。投ゴロ併殺で優勝と思った古田島(右)はベンチを飛び出したが、一塁セーフで慌てて戻る場面も

「ドラフトのあと、地元の友達が駅前で待っててくれたんです(中央学院大の野球部には合宿所がないため、2人とも自宅から大学、グラウンドに通っている)。指名がなくて心配してくれてたみたいなんですけど、僕は『ダメだったよー』って明るい感じで帰ってきたので、拍子抜けだったみたいです(笑)。友達やチームメートに支えられてたおかげで、ここまでやってこられんだなぁっていうのは、実感しましたね」(山﨑)

悔しさはもちろんある。それでも、周りの人たちに支えられて今の自分があることを2人とも実感したという。ドラフトの夜はそれぞれのスタイルで気持ちを切り替えた。

卒業後、山﨑はJR東日本(東京)へ、古田島は日本通運(埼玉)へ進む。ともに社会人の強豪チームで腕を磨き、2年後のプロ入りを目指す。「1年目から勝負をかける」。その気持ちは一緒だ。次の舞台では、敵味方に分かれて火花を散らす姿も見られるかもしれない。

初の大学日本一、飛び上がって喜ぶ山﨑に駆け寄る中央学院大の選手

中央学院大、大学日本一までの道のり

<千葉県大学野球秋季リーグ>
●2-3東京情報大
○7-4東京情報大
●1-2千葉経済大
●1-2千葉経済大
○2-1国際武道大(延長十回タイブレーク)
○3-2国際武道大
○3-2敬愛大(延長十回タイブレーク)
○12-0敬愛大
○10-3城西国際大
○3-1城西国際大
<関東大学選手権>
○3-1白鷗大
○9-5東海大
○5-1神奈川大
<明治神宮大会>
○7-1佛教大(八回裏2死、降雨コールド)
○6-2國學院大
○9-8慶應義塾大

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