フィギュアスケート

特集:北京冬季オリンピック・パラリンピック

フリーで逆転してきた羽生結弦 18.82点差、4回転半にかける

男子フリーに向けて9日に練習した羽生結弦(撮影・角野貴之)

(8日、フィギュア男子 ショートプログラム)

羽生恩師の都築さん、ハーバード大の佐野さんが育んだ「信じる力」

 18・82点差。

 羽生結弦は冒頭の4回転サルコーが1回転になり、首位ネーサン・チェンに大差をつけられた。ソチ、平昌の両五輪はSPで首位に立って金メダルを獲得したが、今回は8位。上位の顔ぶれと安定感を見れば、3連覇は厳しくなった。

 ただ、羽生にはフリーで強さを見せてきた過去がある。2012年、初出場した世界選手権はSP7位から銅メダルを獲得。17年世界選手権では、首位と10・66点差のSP5位から逆転で頂点に立った。

 当時、心境をこう語っていた。「風だったり、川の中だったりにドプンと入っているような、何か自然の中に入り込んでいるような感覚があった。すごくいい状態で、演技内容を忘れるくらい集中した」

 フリーでは、平昌以降の4年間、向き合い続けてきた前人未到のクワッドアクセル(4回転半)に挑む。

 国際スケート連盟(ISU)の審判を長く務めた日本スケート連盟名誉審判の杉田秀男さんは「成功なら15~16点はとれる。4回転半の成功はプログラムを盛り上げ、全体の点数の底上げにつながる可能性がある」と指摘する。

 少年時代の羽生を指導した都築章一郎さんはこんな助言を送る。「自分が信じたままに動くこと。迷わずに。信念を持ってやりきってほしい」

 演技後の羽生は冷静だった。「氷との相性はすごくいい。しっかり練習して、(4回転半を)決めきりたい。切り替えて、頑張ろうと思います」

 無心になったときの羽生は強い。フリー「天と地と」で、超大技を成功させる。逆境に立つ王者は、そのことだけに集中し、あとは天命を待つ。

(岩佐友)

=朝日新聞デジタル2022年02月08日掲載

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