ラグビー

太陽生命ウィメンズシリーズは成長の舞台 世界で躍進目指す女子ラグビー

選手としても指導者としても太陽生命ウィメンズセブンズシリーズに参加し続けている流通経済大女子ラグビー部の井上愛美HC

7人制女子ラグビーの日本最高峰のサーキット大会である「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」。毎年4大会が開催されており、今年は4月23日(土)、24日(日)の熊谷大会に始まり、静岡エコパ大会、鈴鹿大会、そして6月18日(土)、19日(日)、青森県弘前市運動公園陸上競技場で最終戦となる弘前大会を迎える。弘前で行われるのは初だ。

選手として太陽生命ウィメンズセブンズシリーズに出場経験があり、現在は指導者として大会に参加し続けているのが、流通経済大女子ラグビー部「RKUグレース(以下GRACE)」の井上愛美(ちかみ)ヘッドコーチ(HC)だ。大会の意義や魅力、さらには女子ラグビーの課題などを聞いた。

井上HC、選手・指導者として大会に参加

井上HCは明治大学ラグビー部出身の父の影響で小学校2年からラグビーを始めた。7人制、15人制女子ラグビーで日本代表として活躍後、指導者の道に進んだ。2019年度、茨城県で開催された国体の女子(7人制ラグビー)で、単独チームとして優勝に導いただけでなく、第6回全国女子選手権初優勝にも大きく貢献。その年の「ジャパンラグビーコーチングアワード」の優秀賞に女性指導者として初めて選出された。

GRACEは井上HCが流通経済大2年の時に自ら創部したチームだ。7人制だけでなく15人制も同時に強化している。選手は流通経済大に通う生徒が寮生活をして競技に打ち込んでいるが、筑波大学など他大学が3人、流通経済大卒業生も3人在籍しており、今年は28人で活動している。

選手たちを指導する井上HC(左 )

レベルアップの一翼を担ってきた大会

太陽生命ウィメンズセブンズシリーズは2014年から始まり、GRACEも参戦し続けている。国際大会であるワールドラグビーのセブンズシリーズを模したものだが、世界を見渡しても女子のサーキット大会が国内で行われているのは珍しく、井上HCも「ニュージーランドの選手も本当に素晴らしい環境だと言っていますね」と話す。

サクラセブンズ(7人制ラグビー女子日本代表)は今年9月に南アフリカで開催される7人制ラグビーのワールドカップにも出場する。井上HCは「日本の女子セブンズのレベルアップの一翼を担ってきたのは間違いなく太陽生命ウィメンズセブンズシリーズです。この大会で、互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、選手が伸びている感覚があります」と手応えを口にした。

今大会の意義について井上HCは「国内にいて、トップレベルの外国人選手と対戦できるところ。そして、シリーズ大会というところにある」と感じている。過去、2017年の総合6位が最高のGRACEは、2019年の東京大会で初のベスト4入りし、昨年の静岡大会でも4位に入賞した。ただ昨年はコロナの影響もあって最終戦は辞退し「不完全燃焼だった」と悔しいシーズンとなった。

そのため、GRACEは今年の「太陽生命ウィメンズシリーズ」では「ベスト4」を目標に掲げて臨んでいた。しかし、熊谷大会は7位、静岡エコパ大会、鈴鹿大会はいずれも10位とやや低迷してしまったが、下を向いてばかりではない。

「第1戦の熊谷大会は前半も接戦に持ち込めないことが多かった。でも次の静岡エコパ大会では、課題が修正できて、前半は接戦に持ち込めたりするなどステップアップができた。あくまでも、大会の目標を決めるのは選手たちですが、弘前大会では課題を修正して過去最高成績(4位)以上を目指してくれると思っています」

大会を通して「選手が伸びている感覚があります」と井上HCは話す

高校生、大学生が社会人と同じ舞台で戦う面白さ

15人制ラグビー女子日本代表は5月、オーストラリア代表を撃破した。その快挙に貢献したSO大塚朱紗、NO8川村雅未といった流通経済大卒業生でトップクラスの選手もGRACEには在籍している。10月に15人制でもワールドカップがあるため、現在は15人制に専念している。井上HCは「正直、今年はエースとかスターはいないチームなので、だからこそチームで戦う、一人ひとりが本当にハードワークし続けるというスタイルで頑張っています」と話す。

弘前大会では青森商業高校出身の瀧谷のどか(流通経済大3年)の活躍に大いに期待しているという。「瀧谷選手の両親も応援に来てくれると聞いています。15人制ではFWでプレーしているので7人制では力強いプレーを見せてくれるはずです。また4月に入ったばかりの1年生がシリーズ後半にすごく伸びているので、最後の大会で上位に入りたいです」

7人制ラグビーを中心に行っているクラブや大学チームもある中、GRACEでは15人制も同時にプレーするのが特徴だ。「基本的に、GRACEでは太陽生命ウィメンズセブンズシリーズに向けて4月から6月がセブンズシーズンで、夏以降は15人制という形でやっています」。同時にプレーすることで両方に共通するスキルやフィットネス、判断力が身につくという反面、大学生チームは、どうしても4月に選手が入れ替わるため、ややハンデとなってしまうという。

ただ女子ラグビーは男子と違い、太陽生命ウィメンズシリーズでは「ときには高校生、大学生が社会人と同じカテゴリーで戦っていることが面白さの一つ」と井上HCは感じている。また2020年までGRACEに在籍し、7人制ワールドカップ出場経験のある鈴木彩夏(YOKOHAMA TKM)と対戦したり、コーチやレフリーをしている教え子と再会したりするのも太陽生命ウィメンズシリーズの楽しみの一つとなっているという。

女子ラグビー発展への思いを語った

女子ラグビー・チームの魅力をもっと発信

そんな井上HCが女子ラグビーの育成面について感じている大きな課題は、小学校から中学校に上がる段階で、多くの女子がラグビーを止めてしまうことだという。

「これは全体的なことなのかもしれませんが、中学校のカテゴリーの環境が整ってないという問題があります。最近では女子選手も大学でプレーをする選択肢が増えていますし、私たちのような大学チームだったりとか、社会人チームだったりがもっと魅力的になることで続けたいと思えるようになると感じています。だから、女子ラグビー自体もそうですし、チームとしての魅力をもっと発信していけたらなと考えています」

そのため、井上HCはGRACEに、近隣の中学生が参加できるような活動ができないか模索しているという。

2014年から選手として、2018年から指導者として太陽生命ウィメンズシリーズを戦っている井上HCは「本気で勝ちに行っているから楽しいですし、大会としての意義がある。そういった姿を見て感動し、憧れられることで、普及も強化も進んでいく。またサクラセブンズやその候補選手が各チームに散らばって、それぞれが戦い合えば、さらに日本の女子ラグビー全体のレベルが上がるし、見る側もさらに面白い大会になってくるはず」と語る。

熊谷大会でボールを保持しプレーするGRACEの選手

大会をもっと盛り上げていきたい

現状、GRACEは今年の総合優勝は難しくなった。それでも当然、井上HCは「いつかは太陽生命ウィメンズセブンズでタイトルをとりたい」と先を見据える。

「国際大会で結果が残せなかったとしても、継続してバックアップしていただいている太陽生命ウィメンズセブンズシリーズの存在には本当に感謝しかありません。だからこそ、もっとGRACEとしても盛り上げていきたいし、もっとこの大会で育った選手がサクラセブンズになって、強い姿を見せないといけないですね」という言葉で締めくくった。

太陽生命ウィメンズシリーズがあるからこそ、GRACEを中心とした大学生の女子セブンズの選手たちは切磋琢磨して成長することができる。井上HCはいつかGRACEで育った選手がサクラセブンズとなり、世界の舞台で躍動してくれることを強く願っている。

太陽生命保険株式会社

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