ラグビー

特集:第30回ユニバーシアード

日体大1年生の永田花菜 ユニバーシアードで6トライ、初優勝を支えた

イタリアから帰国し、金メダルを手に笑顔の永田(撮影・斉藤健仁)

イタリアのナポリで開催されている第30回ユニバーシアード夏季競技大会のラグビー(7月5~7日、7人制)で、日本は男女ともに金メダルを獲得する快挙を達成した。

試合ごとにまとまり、前回の9位から躍進

2年前のロシア・カザン大会では、男子は6位、女子は9位と低迷したが、今大会は男女ともに大きく躍進した。とくに女子は予選プール戦でフランス、カナダ、イタリアに3連勝。そのままの勢いで準決勝ではロシアを31-12、決勝はフランスを33-7と圧倒して初優勝を飾った。

1年生が日本チームを引っ張った。日本体育大学の永田花菜(はな、福岡高)はSOやCTBとしてプレーし、チームトップタイの6トライ。さらにゴールキックも任されていた。身長168cmと日本の女子ラグビー選手としては大柄ながら、50mを7秒0で走るスピードを武器に、決勝でも2トライを挙げた。

稲田仁ヘッドコーチ(HC)は「チームは試合を重なるごとにまとまり、一人ひとりが個性を出してくれました。永田は積極的にボールを持って、強みのランを存分に出しました。ここからもっと成長してほしい」と語った。

「東京五輪に出るには、ここで活躍するしかない」との決意

日本チームの大学1年生は永田を含めて2人だけで、チーム最年少だった。永田は並々ならぬ覚悟でナポリへ渡っていた。「国際大会の経験が少ないので、2020年の東京オリンピックに出場するには、この大会で活躍するしかない。絶対にチームを引っ張ってやろうと思ってました」。試合中はに意識したのは「甘さが出ないように、丁寧かつ強く」ということ。強い思いと強気なプレーが優勝という結果につながった。

昨年度、永田は高校3年生ながらアジアシリーズの女子7人制日本代表に選ばれ、3大会に出場した。その後も代表合宿に参加していたが、4月に香港で開かれたワールドシリーズ(世界の強豪が参加するサーキット大会)への昇格大会や、同じく4月に福岡・北九州市であったワールドシリーズといった重要な国際試合のメンバーに選ばれることはなかった。一つ年下の選手が抜擢(ばってき)されたこともあり、「悔しかった」と振り返る。

中学まではサッカーとの“二刀流”

永田は5歳から「かしいヤングラガーズ」でラグビーを始めた。土日のラグビーと並行し、小学4年生から中学3年生まで、平日は地元の「ワンソウル」というクラブでサッカーにも取り組んだ。キックの精度の高さは、いまでは永田の武器の一つになっている。高校からラグビーに専念し、花園にも出場経験のある強豪の福岡高へ。部分的に男子と一緒に練習もして、力を蓄えた。

高校1年生のころまでは、漠然と「筑波大に行きたい」と思っていた。結局は「東京オリンピックに出たい」「ラグビーにすべてをかけたい」と、日本有数の女子ラグビーの強豪である日体大に進学を決めた。1年生ながら先輩たちと太陽生命ウィメンズシリーズに出場し、ユニバーシアードのキャプテンも務めた1学年先輩の平野優芽(東亜学園)らレベルの高い選手たちと練習することで、刺激にあふれた日々を過ごしてきた。

お気に入りの作家は伊坂幸太郎

15人制ではSOやFBでプレーし、女子のニュージーランド代表にあこがれてきた。プレーのお手本としているのは、男子の15人制日本代表でSOの田村優。リラックス方法は読書だ。伊坂幸太郎の作品がお気に入り。今回の遠征でも、時間があれば読んでいたという。

「いままで国際大会の経験が少なかったので、経験できてよかったです。自分に足りない部分は、やっぱりフィジカルです。外国人選手に比べると劣ってるって感じました」。永田は冷静にユニバーシアードを振り返った。この1年で7kgほど体重を増やして57kgとなったが、もっとトレーニングで筋力を増やして60kg以上になって、世界でも当たり負けない体をつくることを目標に掲げる。

チームメイトと記念撮影に応じる永田(左端、撮影・斉藤健仁)

7月10日、日本ラグビー協会から東京オリンピックに向けた女子7人制日本代表の第1次オリンピックスコッド17名とそれに準じる女子日本代表トレーニングスコッド10人が発表された。今回のユニバーシアードの活躍も加味され、永田の名は、トレーニングスコッドににあった。稲田HCによると今後30人ほどを競わせて、12月に発表される第2次オリンピックスコッドを選ぶという。

オリンピック本番は12人しか出場できず、現在のスコッドにはリオデジャネイロ大会に出場した経験豊富な選手や、ワールドシリーズ常連の選手もおり、永田が中軸として東京オリンピックに出るには、もう一回り、二回りも成長しなければならない。

ただ、ユニバーシアードの活躍で、一つ歩を進めたと言っていいだろう。「絶対に東京オリンピックに出たい」という強い気持ちで、今後も永田はラグビーに向き合い続ける。

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