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東海大が東日本インカレVで2冠 臨時の主将・樋内竜也「ここからがスタート」

東海大は男女そろって春季リーグと東日本インカレを制し、2冠をつかんだ(撮影・すべて松永早弥香)

第41回 東日本バレーボール大学選手権大会 男子決勝

6月25日@墨田区総合体育館(東京)
東海大学 3(25-19.25-20.25-23)0 筑波大学
東海大学 12年ぶり10度目の優勝、春季リーグとで2冠

春に続いての2冠達成だ。3年ぶりに開催されたバレーボールの東日本インカレは、東海大学が12年ぶりとなる優勝を飾った。

東海大が春季リーグV、山本龍主将「選んできた道が最善だった」と思えるようになれた

主将は教育実習、代わる司令塔も大会3日前に合流

4日間で5試合を戦い、しかも準々決勝と準決勝が同日にダブルヘッダーで行うハードスケジュール。しかも春季リーグでチームをけん引した山本龍主将(4年、洛南)は教育実習でチームに帯同していないため、メンバーも異なる。加えて、山本に代わる司令塔の櫻田義春(4年、東海大札幌)も教育実習でチームに合流したのは大会3日前。春季リーグを制した自信と勢いがあるとはいえ、決して万全な状態ではなかった。

わずか3日という限られた期間で何ができるか。櫻田は「全体練習の後にアタッカー陣と1~1.5時間自主練習でコンビを合わせた」と言うが、それでも「初戦の亜細亜大戦は特に不安だった」と振り返る。

「トーナメント戦で、相手は勢いを持ってぶつかってくる。アタッカーにちゃんと打たせることができるか、相手に飲み込まれてしまわないか。初戦の難しさもあって、かなり緊張しました。実際、春に勝ったメンバーから龍が抜けただけなので、負けたら自分の責任。“どうしよう”と不安しかありませんでしたが、周りが声をかけてくれて、みんなに助けられました」

櫻田(右)は開幕まで3日間しかない中で、不安も感じていた

特に心強かった、と櫻田が称えたのが、山本に代わり東日本インカレでは主将を務めたエースの樋内竜也(4年、崇徳)だ。春季リーグでも勝負所での強さを発揮したように、トーナメント戦の東日本インカレでも打数が集まる中、2枚、3枚とブロックがつこうと弾き飛ばす。「自分だけでなく、対角に入る佐藤隆哉(3年、東北)が当たっていたので助けられた」と言うが、セッターの櫻田が「ミドルを積極的に使って、要所は樋内に託したいと思っていた」と振り返るように、欲しい1点を着実に取り切った。

春季リーグで唯一敗れた筑波大に同じ流れで3セット目へ

準々決勝の青山学院大学、準決勝の専修大学とのダブルヘッダーに、樋内は「さすがにしんどかった」と苦笑い。だが、筑波大学との決勝でも、試合序盤から高さを誇る筑波大のブロックに対しても、より高い打点から打てるようにと高さを出した櫻田の丁寧なセットから豪快に打ち抜く。佐藤、中道優斗(2年、東亜学園)のサーブも走り、相手のミスを誘い1、2セットを連取した東海大が、優勝まであと1セットと迫る。

樋内(右)は山本の思いも背負って戦った

だが、苦い記憶がある。閉幕したばかりの春季リーグは11勝1敗で優勝を飾ったが、唯一の1敗を喫した相手が筑波大だった。しかも2セットを先取した後、3セットを連取されての逆転負け。同じ轍(てつ)を踏まぬようにと気持ちを引き締める一方、少なからぬ不安もあったと櫻田が明かす。「春リーグは龍がいたにもかかわらず(筑波大に)負けた。ここで勝ち切れなかったら、という思いも正直よぎった。プレッシャーを感じていました」

第3セット、序盤に筑波大のミドルブロッカー西川馨太郎(4年、清風)がアクシデントで退場。しかし追い込まれてからの強さを見せつけるように、急きょ代わって入ることとなった平野壮一郎(1年、高崎)が雰囲気を変え、序盤は2-4と筑波大が先行する。一気に盛り上がる筑大波に対し、どう対抗するか。小澤翔監督は中道に代えて飯田孝雅(3年、市立船橋)を投入した。

飯田は春季リーグの悔しさも、この大会にぶつけた

春季リーグの序盤はスタメンで出場を続けた飯田だが、ケガで中盤以降は出られず、優勝の喜びを味わう一方、悔しさも抱いた。その思いをぶつけるかごとく、左腕から放つスパイクやサーブで徐々に流れを引き寄せ、中盤には東海大が逆転。終盤にミスが続いた筑波大を引き離し、24-21、マッチポイントの場面で櫻田は飯田にトスを上げた。結果的には筑波大のディフェンスに阻まれ決めることはできなかったが、その1本には櫻田の思いが込められていた。

「あの場面で、筑波は樋内をマークするだろうというのは分かっていました。点差もあったので、それならば、と裏をかく気持ちもありましたが、ここは飯田に決めさせたい、という思いも同じぐらいありました」

その後、23-24と1点差まで迫られたが、最後は筑波大のスパイクをブロックで封じ25-23。春のリベンジを果たすストレート勝ちで、東日本インカレの優勝を決めた。

優勝が決まった瞬間、東海大の選手たちは喜びを爆発させた

4冠に向け「練習から一生懸命やる姿を見せる」

あくまで臨時。キャプテンマークはユニホームの「4」の下にテーピングを貼った形ではあったが、山本不在の大会に臨み、戦う中でそれまで以上に大きな発見があった、と樋内が言う。

「春に勝ったことはチームにとっていいことなのは間違いないけれど、だからこそ生じる緩みもありました。龍がいない分、本当は自分がガツっと言わなきゃいけない、と思いながらも、去年はレギュラーとして試合に出ることができず、自分自身も頑張り切れなかった。その引け目じゃないですけど、『自分が言っていいのか?』と迷ってしまうことも多かったんです。こういう時にバシっと必要なことを言って、チームを引っ張る龍のすごさを改めて感じました」

春の王者として第1シードで出場した大会で堂々の優勝。小澤監督は優勝監督杯を、自身の現役時代の恩師であり、関東大学バレーボール連盟理事長を務める積山和明・前東海大監督(現部長)から受け取り、「感慨深かった」と笑みを浮かべた。就任以来初の東日本インカレ制覇を「素直に選手たちを評価したいし、男気を見せてくれた」と称える。特に樋内、櫻田に対しても「4年生が頑張らなければならない中、よく頑張ってくれた」と評価したが、まだまだ満足には程遠いと表情を引き締める。

「日々コツコツ取り組んできたことが力になった。でもまだまだ甘さもあるし、個人の力、組織力を高めなければ全日本インカレでは勝てない。ここからがスタートです」

小澤監督は優勝監督杯を積山理事長から渡され、選手たちや応援してくれたみんなに向けて掲げた

勝利の喜びもつかの間、暑い夏は、さらなるレベルアップにつなげるための鍛錬期であり、より一層強固なチームになるための厳しさが突き付けられる日々でもある。春季リーグ、東日本インカレを制し、悲願の4冠達成に向け、樋内が言った。

「練習から一生懸命やる姿を見せることしか自分にはできないし、それができれば自信を持って周りにも意見することができる。自分も、チームももっと引き締めて、最後も必ず勝ちたいです」

目指すべき目標へ向け、熱い夏を乗り越える。秋はまたどんな戦いが見られるか。注目だ。

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