バレー

東海大が春季リーグV、山本龍主将「選んできた道が最善だった」と思えるようになれた

東海大が5シーズンぶりに春季リーグを制した(撮影・田中夕子)

2022年度 関東大学バレーボール男子1部リーグ

東海大学 5シーズンぶり8度目の優勝

11勝1敗、東海大学が5シーズンぶりに春季リーグを制した。「試合前の練習から声を出しすぎた」と笑いながら、かすれた声で山本龍主将(4年、洛南)が喜びをかみしめた。

「(大学)4年目でやっとタイトルがとれた。今までとは責任も違う中、主務の井上(春太、4年、東福岡)を中心に周りが支えてくれたので、試合で思い切りプレーできた。みんなの気持ちが1つになって、勝つことができました」

早稲田大戦にかけた4年生たちの思い

春季リーグは4月9日に開幕する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で4月16日に遅れ、現在も代替試合が続く変則スケジュールで行われている。そもそも昨年、一昨年は開催すら叶(かな)わず、3季ぶりの開催。有観客の試合には大勢の観客も訪れる中、リーグ戦を通して安定した強さを発揮したのが東海大だった。

初戦となった4月17日の筑波大学戦はフルセットで敗れたものの、その後は連勝。好調の要因は、セッターの山本主将を中心にバランス良く至るところから仕掛けられる攻撃力と、ブロックとレシーブが連携した守備力だ。今季の日本代表登録選手にも登録された身長204cmのミドルブロッカー佐藤駿一郎(4年、東北)の速攻を軸に、勝負所や苦しい状況からのハイセットはエースの樋内竜也(4年、崇徳)が打ち切る。

セッターの山本(1番)が多彩な攻撃を組み立てる(以下、撮影・すべて松永早弥香)

チームの土台を築き、支えたのは1年生の時から出場してきた4年生たち。これまで、目指した結果を残すことのできなかった悔しさや、重ねた経験、すべてをぶつけたのが互いに1敗同士で激突した5月29日の早稲田大学戦だった。

互いに負けられない一戦。あふれる気持ちが試合開始直後は裏目に出た。「絶対に勝つ、自分が決めるんだ、と気負いすぎてしまった」と振り返るように、樋内のスパイクが早稲田大のブロックにつかまり、連続失点からの苦しいスタートを強いられた。しかし、今までならば同様の状況に「負けるかもしれない」と弱気になることもあったが、4年生で迎えたタイトルのかかった早稲田大戦は違っていた、と樋内は言う。

「あれだけシャットされても、気持ちが引かなかった。止められてもまた次、絶対に決めてやると思えた。ハイセットを打つ時も、コートにいる自分以外のメンバー、ベンチも含めた全員が『行け!』と後押ししてくれる力を感じたので、最後まで気持ちで押し切ることができました」

リーグを通して、樋内(4番)はエースとしてチームをけん引した

ブロックにはブロックを、とばかりに東海大の“壁”となったのが佐藤駿だ。リーグ随一の組織力を誇る早稲田大のスパイクを、要所で仕留める。抜けたコースはリベロの高木啓士郎(3年、崇徳)が拾ってチャンスにつなげ、切り返しからの攻撃も山本が積極的にミドルの佐藤駿を使い、競り合いから抜け出す。相手からすれば「ここはエースが攻めてくるはずだ」と思うところで山本が裏をかき、ミドルの速攻を選択し高い打点から佐藤駿の攻撃が気持ちよく決まる。1年生の時から築き上げた山本とのコンビネーションに佐藤駿も自信をのぞかせた。

「大事なところでトスが集まってくるポジションなのに、去年の全カレでは最後の大事な場面で自分が決められなかった。あんな悔いは二度と残したくないし、4年になった今年の目標はすべてのタイトルをとること。絶対に決めてやる、と思ったし、自分の高さを生かしてくれる龍とのコンビは世界でも通用する自信がありました」

それぞれが自分を信じ、仲間を信じて劣勢でも攻め切る。その姿勢を誰より強く打ち出したのが山本だ。「絶対に負けない」「優勝をつかみ取る」とみなぎる気合を声に乗せ、サーブを打つ際も叫ぶ。「とにかく集中して熱くなっていたので(何と叫んだか)覚えていない」と笑うが、自身のサーブで崩し、ブレイクチャンスは着実にアタッカーに託して得点につなげる。熱く、冷静にチームをけん引する主将に、エースの樋内も「龍が練習の時から周りに対して声をかけてくれるので、安心してできたし試合中もずっと助けられた」と全幅の信頼を寄せる。

佐藤駿(2番)は204cmの高さを生かし、攻守ともに活躍した

洛南仲間の大塚や垂水の活躍を目の当たりにし

振り返れば、山本は高校時代に春高を制し、東海大へ入学して間もなくチャンスをつかんだ。だが高校時代とは求められるものも、取り組むバレーも異なり、壁に当たる自身とは対象的に、同じ洛南高校(京都)で戦った大塚達宣(早稲田大4年)や垂水優芽(筑波大4年)は1年生の時から活躍し、全日本インカレの決勝でも両者が対戦する姿を目の当たりにしてきた。思い通りにいかない悔しさは募り、悩める日々も続いたが、決して投げ出すことはなかった。

「1、2年の頃はきつかったです。3年になって、少し余裕は出てきましたが、それでも苦しかった。正直に言えば、やりたくない、と思う時もありましたが、でもやめたくなったら負けだと思った。歴代の東海大で1番をつけてきた先輩方の映像を見ても、顔つき、目つきが違う。自分もあんな表情で戦う、表現できる選手にならなきゃ、と思ってやってきました。いろんな経験をして自分も変化しながら、ここまでやってきたこと、自分が選んできた道が最善だった、と心から思えるようになりました」

山本(右)は東海大で1番を背負ってきた先輩たちの姿に学びながら、ここまできた

早稲田大との激闘を3-1で制し、東海大にとって最終戦となる6月5日の青山学院大学戦の前からすでに優勝は確定していた。だが、だからこそ最後をいかにいい形で勝つことができるか。「小澤(翔)先生からも『緩めず、もう一度気合を入れて臨もう』と言われて、試合前から相手を圧倒する気持ち、準備ができていた」と山本が言うように、試合開始直後から8-0と連続得点を重ねる、まさに有言実行と言うべき展開。3-0のストレート勝ちで最終戦を終え、5シーズンぶりの春季リーグ優勝に花を添えた。

目標は全カレ優勝

全選手にとって、これが東海大で初のタイトル獲得。試合後の集合写真では、皆が喜びの笑顔であふれていたが、満足する選手はいない。目指す目標は、さらに先にあるからだ。山本が言った。

「最終目標は全カレで優勝すること。春リーグでもたくさんの課題が見つかったので、タイトルがとれたことを少し自信にしながらも満足するのではなく、もっと突き詰めて、最後に本当の日本一になれるように頑張ります」

6月22日から始まる東日本インカレでも強さを見せつける

全日程は6月18日の順天堂大学vs.明治大学で終了する予定で、22日からは東日本インカレが始まる。春の王者となった東海大はさらなるタイトル獲得を目指し、春に敗れたチームは打倒東海で技と己を磨く。力と気迫がぶつかり合い、どんな熱戦が繰り広げられるのか。楽しみは尽きない。

in Additionあわせて読みたい