サッカー

大阪学院大・梅田陸空 総理大臣杯決勝で「甘さ」、悔しさバネに「J1で出続ける」

総理大臣杯で好セーブを連発した大阪学院大学の梅田(中央、すべて撮影・勝見壮史)

第46回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント決勝

9月4日@味の素フィールド西が丘(東京)
国士舘大学 2-1 大阪学院大学

サッカーの神様は残酷だ。

相手選手からそう思われるほどに、大阪学院大学のゴールキーパー(GK)梅田陸空(りく、4年、大阪学院大高)にとって落とし穴のような一瞬が待ち受けていた。

バウンドしたボールが脇をするり

4日、第46回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントの決勝が、東京・味の素フィールド西が丘であった。関西第2代表の大阪学院大は、関東第1代表の国士舘大学と対戦した。国士舘大に先制を許したが、その後追いつき、1-1で迎えた後半アディショナルタイムだった。

味方選手がクリアしたボールが、相手選手の足に当たり、高く舞い上がった。風はほとんどなく、相手のプレッシャーも緩かった。梅田はバウンドしてからキャッチしようとした。だが、ボールには不規則な回転がかかり、バウンドすると梅田の脇をすり抜けて、ゴール方向へ転がった。見逃さなかった国士舘大の選手がさらい、冷静にゴールへと流し込んだ。

残り時間はほとんど残っていなかった。試合は直後に終わった。喜びの雄たけびが上がる国士舘大スタンドの目の前で、梅田は芝生に顔をうずめていた。1人、また1人とチームメートが梅田の元に駆け寄り、国士舘大のGKで主将の飯田雅浩(4年、青森山田)も「ここまで引っ張ってきたから、最後しっかりやろう」とねぎらいの声をかけた。

試合後、梅田(オレンジのユニホーム)をねぎらう大阪学院大の選手たちと、隣で慰める国士舘大のGK飯田

チームメートは「空中戦の強さは日本一」

大阪学院大にとって、初の総理大臣杯決勝だった。ここまで勝ち上がった立役者は、間違いなく梅田だった。

準々決勝で総理大臣杯優勝3度の明治大学、準決勝で優勝6度の駒澤大学と、関東の強豪を次々に破って、決勝に進んだ。どちらの試合もPK戦までもつれこみ、そこで輝いたのが梅田だった。明治大戦、駒澤大戦ともに、2本ずつセーブした。明治大戦では、1-1で迎えた後半のペナルティーキック(PK)もセーブし、相手に流れを渡さなかった。1回戦の札幌大学戦でも試合中にPKをセーブ。決勝を迎えるまで、計6本のPKを止めていた。

ハイボールの処理も長所だ。身長186cmで、GKとして大柄とは言えないが、ジャンプ力と積極的に前に出る気持ちの強さが光る。総理大臣杯決勝は、先制点を許した場面でコーナーキックをファンブル。だが、それからは立て直して積極的にキャッチし、攻撃につなげた。チームメートの澤崎凌大(3年、徳島ヴォルティスユース)は「空中戦の強さは日本一。(梅田)陸空くんが飛び出したら、攻撃陣は走り出している」と信頼を寄せる。

身長186cmでGKとして大柄とは言えないが、ハイボールの処理が巧みだ

今年の関西選抜に選ばれるなど、年代屈指の実力者にもかかわらず、致命的なミスをしてしまった梅田。試合後は「自分の甘さが出た」と悔しさをにじませた。

「色んな感情を早送りで教えてくれるスポーツ」

ボールが高く上がった試合終了間際の場面、回転が不規則なことには気づいていた。「確実にキャッチし、カウンターにつなげたい」。そんな思いからボールを待った。また、PK戦でのチームの強さや走力から、延長戦、PK戦へともつれ込むことができれば、という思いも頭の片隅にあった。「そこも気の緩みがあった」。目の前のプレーに100%集中できていたか、という後悔が残る。

ただ「これでサッカー人生が終わりじゃない」とも言った。試合後の取材で今後の目標を問われた梅田は、「J1で出る」と言った後、「出続ける」と言い直した。目標は高く見据える。大阪学院大の實好礼忠(さねよし・のりただ)監督は、J1ガンバ大阪で13年間プレーした経験がある。「サッカーはミスが多く、色々な感情を早送りで教えてくれるスポーツ。(梅田のミスも)人間力アップのきっかけになる」と語った。

「試練は乗り越えられる人にしか与えられない」という言葉がある。この夏の経験が、梅田をさらに成長させる。

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