陸上・駅伝

特集:第91回日本学生陸上競技対校選手権大会

國學院大・中西大翔主将 日本インカレ5000mで2位、自信を胸に駅伝シーズンへ

中西は「2」のポーズを作り2位でゴールした(撮影・すべて藤井みさ)

第91回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子5000m決勝

9月11日@たけびしスタジアム京都
1位 近藤幸太郎(青山学院大4年)     13分50秒37
2位 中西大翔(國學院大4年)         13分53秒40
3位 ジェームス・ムトゥク(山梨学院大1年)13分58秒39
4位 吉居駿恭(中央大1年)          13分59秒21
5位 リーキー・カミナ(創価大2年)    13分59秒72
6位 花岡寿哉(東海大1年)        13分59秒73
7位 丹所健(東京国際大4年)       14分04秒05
8位 高槻芳照(東京農業大3年)      14分07秒52

日本インカレ最終日となった9月11日、10時39分から男子5000m決勝が行われた。炎天下の中で行われたレースを制したのは青山学院大学の近藤幸太郎(4年、豊川工)。2位には國學院大學主将の中西大翔(たいが、4年、金沢龍谷)が入った。

國學院大新主将・中西大翔 「変革」するチーム、自分らしく引っ張り結果で見せる

スタートから積極的に前方へ

雲一つない晴天となり、9時の競技開始時点で32度を記録していたこの日。強い日差しが照りつける中、レースが開始された。スタートするとすぐ創価大学のリーキー・カミナ(2年、チョメ)、山梨学院大学のボニフェス・ムルア(4年、キトゥムラ)とジェームス・ムトゥク(1年)が集団の先頭に出て、中西はそのすぐあとに続いた。後ろから第一工科大学のアニーダ・サレー(4年)が前に出て、留学生4人の真後ろに中西と近藤がつく形でレースが進んだ。

中西(27番)と近藤(31番)は留学生にぴったりとついた

最初の1000mは2分44秒、次は2分48秒、2分53秒と、暑さの影響を感じさせないペース。大きな集団のまま3000mまで進み、3000mを過ぎたところで東京農業大学の高槻芳照(3年、学法石川)が先頭に立ち、ペースアップした。集団は一気にばらけ、先頭はムトゥク、カミナ、近藤、中西、高槻の5人に絞られた。3000mから4000mのラップは2分46秒。4000mの手前で集団の先頭を走っていた近藤がさらにスパートをかけ、独走態勢に。中西はムトゥク、カミナとともに前を追い、ラスト1周はムトゥクとの一騎討ちに。ラストスパートでムトゥクを引き離すと、両手で「2」を作ってゴールした。

レースプラン通りも「もっと攻められる選手に」

「日本人トップを狙って走り出して、持ち味である積極的に前に出る走りでレースを進めれば、後ろは離れてくれるだろうというレースプランを描いていたので、その通りになりました。近藤くんには離されてしまったんですけど、しっかり2番でまとめられて良かったです」

暑さもあったが、留学生がいたのでハイペースになることも予想していた。どちらになっても積極的に前に出ようと決め、結果的には余裕を持ってレースを進められたという。

レース前に前田康弘監督からは「日本人トップを狙って、最低でも入賞することが大事」と言葉をもらった。中西は7月13日のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会5000mで、13分38秒45を出し自己ベストを更新。國學院記録も更新した。この時もハイペースの集団にしっかりとつき、最後までペースを落とさない積極的な走りが印象的だった。「その時のレースのようなイメージで走れれば、絶対好走できるから、と声をかけられました」

中西(左)は最後までスピードを落とすことなく走り切った

日本人トップを取れなかったことについて、克服すべき課題を問われると「4000m以降に攻める走りがまだまだ弱いです。守りに入ってしまいました。もっと攻められる選手になりたいです」と話す。自分に求められるレベルが上がっていることを自覚し、「もっと上で勝負しないといけない」という思いを改めて感じた。

主将として結果で示せた

國學院大はチームとして9月12日まで北海道で合宿を行っていた。中西と山本歩夢(2年、自由ケ丘)はこのレースに出場するため、合宿を途中で切り上げ、8日に寮に戻ってきた。他のメンバーが1日3回練習、ハードなポイント練習をこなす中、2人はレースに向けて調整の意味もあり、練習は1日2回。「さぼっていたわけではないのですが、少し罪悪感があった」と言う。「だからこそ自分がこのレースで結果を示して、チームメートに『合宿をもっと頑張らなきゃ』と思わせる走りができたかなと思います。全国の舞台(トラック)では初の表彰台だったので、キャプテンとして示すことができて良かったかなと思います」。主将として、一つひとつの試合で結果を出さなければというプレッシャーを感じながら臨んでいるとも話す。

中西の8月の月間走行距離は1070km。しっかりと距離を踏み、ここからスピードを磨いて駅伝シーズンに入っていく。今回もギリギリまで走り込んでいたため、スピードが戻らないという感覚はありつつも、「最低限いい練習ができていたのでうまく5000mのレースにつなげられた」と振り返る。

一つひとつの試合にプレッシャーを感じながら臨んでいる

駅伝シーズンのチームでの目標は、箱根駅伝での総合優勝を視野に入れ、確実に3位以内に入ること。春先から山本が2月の実業団ハーフマラソンで60分台、3月の学生ハーフマラソンでは平林清澄(2年、美方)と中西がワンツー、5月の関東インカレでは副将の伊地知賢造(3年、松山)が優勝するなど、前半シーズンも「今年の國學院は違う」と思わせる活躍が目立った。

3月の学生ハーフで話を聞いた時は、チームの中間層の底上げが課題だと話していた中西。そのことについてたずねると、「うまく引き出すことができています」と言う。チーム内で10000m28分台で走る選手も増えてきて、ここからもう一段階中間層も上がっていけるという雰囲気が漂っている。「練習から下級生も強いし、過去最高の選手層で駅伝シーズンに臨めるという感覚があります」と手応えを語る。

日本インカレの来週から合宿に臨み、いよいよ駅伝シーズンの初戦となる10月10日の出雲駅伝を迎える。「出雲も優勝を視野に入れて、確実に3番以上を取りたいです。そこに向けてしっかりやっていきます」。今回の結果を自信に変えて、中西はチームの先頭に立って最後の駅伝シーズンへと挑む。

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