ホッケー

中京大・宇野樹、型にはまらず自由に ホッケーの魅力発信、宇野昌磨のサポートも

多彩な活躍を見せる中京大の宇野樹(撮影・浅野有美)

実に多彩な才能の持ち主だ。あるときは中京大学の陸上ホッケー選手、あるときは兄でフィギュアスケートの世界王者・宇野昌磨(トヨタ自動車)のマネージャー、またあるときは愛犬との日常を紹介するYou Tuber。型にはまらない自由人。それが宇野樹(いつき、3年、名古屋国際中高)だ。

アスリート・モデル・通訳者 異彩を放つ

フィギュアスケートの道を極める4歳上の兄に対し、樹はホッケーで才能を開花させた。幼少期にアイスホッケーを始め、中学1年でホッケーに転向。中日本のジュニアユース日本代表に選ばれ、高校でも愛知県代表チームに入り1年からスタメン。3年はチームの主将も務めた。中京大でもホッケー部に所属し、関西リーグ1部昇格へ向けて汗を流す。

「普通のことをするのが好きではない」。その“型にはまらない生き方”の下地は小学生の頃に出来上がっていた。自ら中学受験を選択し、未経験ながらホッケー部に入るため名古屋国際中高に進学した。

競技に打ち込む一方で、広告のモデルをしたり、テレビ番組に出演したり。兄の海外試合に帯同し英語の通訳をこなすなど異彩を放っていた。

学業では英語、数学、国語が得意で、同級生に勉強を教えたり、受験シーズンは自身のインタビューの経験を生かして面接の受け答えや志望動機の書き方をアドバイスしたりしていた。「僕が中1くらいのときに昌磨の高校の宿題を手伝って解いたりしていたので、学力が上がったのかもしれません(笑)」

スポーツ万能で球技全般が得意(撮影・浅野有美)

中京大で充実したキャンパスライフ

大学の選び方も宇野らしい。ホッケーの日本代表を目指して強豪の立命館大学や天理大学などに進む道もあったが、選んだのは地元の中京大。その理由は「競技を極めるより大学生活も楽しみながらホッケーを続けたかった」から。高校2年で決断した。

中京大は部員13人で関西リーグ2部に所属している。練習は大学の講義があるときは週4回、それ以外は週6回。1部昇格を目標に練習に励む。昨シーズンはインカレに出場しベスト16と結果を残した。

中京大のプレースタイルについて、「年ごとに変わるのですが、1学年上は何人かうまい人がいて、その人たちを支えるプレースタイルでした。いまは1学年下と僕が仲が良くて連携面で自信があります」と話す。

フィールド以外でも仲間と過ごす時間を大事にしており、練習が午前で終わるときは部員たちとご飯を食べに行ったり、部員の家に集まってゲームをしたり。「大学生活はめっちゃ充実しています」とキャンパスライフを満喫している。

プレー中の宇野樹(写真は本人提供、撮影・MY HOCKEY)

世界王者を支える20歳の素顔

フィギュアスケートの道を邁進(まいしん)し世界王者になった昌磨と、ホッケー以外のフィールドにも活躍の場を広げ自由に生きる樹。それぞれの才能を持つ二人。共通点は「スポーツよりゲームが得意です」と笑う。

違う点で言えば、樹はずば抜けた反射神経や、すぐにまねできる才能がある。

自分が戦場にいるかのようなゲーム「ファースト・パーソン・シューター(FPS)」で反射神経を試したみたところ「AI(人工知能)レベルの判定だった」という。プレー中、瞬時の判断力が求められるホッケーでその反射神経が生かせる。一方で「昌磨は空間把握能力が高いと思います。距離を見てどのくらい力でどのくらいのところに跳ぶとか。いつも驚きますね」とリスペクトする。

ホッケーを始めて1年足らずでトップ選手に駆け上がることができたのは「すぐにまねできる才能」があったから。その技術の吸収力は兄もうらやむほどだという。「最初はルールを覚えるのに時間がかかったのですが、僕は見たことをまねするのが得意で。ホッケーを幼稚園からやっている同級生のプレーを見て学びました」と振り返る。

好奇心旺盛な性格も昔から。「あれもこれもやってみたくて、何をするにしても長続きしないタイプ。その点は、スケート1本で長続きしている兄と反対なんです。僕の中ではホッケーは長続きした方です。昌磨は努力ができる天才なんです。スケートは練習を一人で黙々とやり続ける。ひたむきに同じ競技をやり続けることができる。努力も才能なんだなと身近にいて思いました」

宇野樹(左)と兄の昌磨、愛犬とともに(写真は本人提供)

ホッケーを日本で広めたい

日本でホッケーは、名前は聞いたことがあるが詳しいルールは分からない「マイナー競技」の一つに挙げられるかもしれない。宇野はホッケーをもっと広めたいと考えている。そのためには日常的にホッケーに触れる環境があること、世界と戦える日本選手が出てくることが必要だと言う。

中学3年のとき、オーストラリアに留学していた宇野はホッケーが身近にある環境に驚いた。

「テレビを見るとホッケーの試合が流れていて、ホッケーグラウンドも自転車圏内に四、五つあってプロの試合をやっている。文化というか、いままでの日常で何を見てきたのかの違いがあると思います。日本でテレビを見るとサッカーや野球の試合が流れているように、それがオーストラリアだとホッケー。映像も試合がずっと流れているより、ハイライトがあると見やすいですね。ここが惜しかった、このプレーがうまかったとかあれば見る人も増えると思います」

そして競技力の底上げだ。「野球でいう大谷翔平選手レベルの日本選手が出てこないと、(ホッケーに興味を持ってもらうのは)厳しいなと思います」

同世代で注目している選手は中学時代に同じチームで切磋琢磨(せっさたくま)した立命館大学の高出大暉(3年、天理)だ。ユース・ジュニア日本代表候補の経験もある。「尊敬している選手。これから伸びていって日本代表になってほしい」とエールを送る。

「中京大を選んで正解だと思っている」とほほえむ(撮影・浅野有美)

トップ選手でなくとも宇野には発信力があり、ホッケーの魅力を伝えられる立場にいる。「ホッケーの仕事がきたらじゃんじゃん受けたいです」と意欲もある。

「ホッケーを見るのに関してはスピード感が魅力的だと思います。競技している側としては、他の競技とは違う難しさ。いきなり始めてできるタイプの競技ではないのでちょっとずつうまくなっていく。自分はそこに魅せられました」とアピールする。将来はホッケーの認知度向上に貢献したいと考えている。

「宇野樹」は何者になるのか?

宇野はYouTubeチャンネル「Uno1ワン チャンネル宇野樹」も運用している。愛犬のトイプードル4匹との暮らしを発信し、登録者数は約5.1万人。兄が愛犬と戯れる様子、大会やアイスショーの近況報告はフィギュアスケートファンに人気のコンテンツだ。動画の構成から撮影、編集も宇野が手がけている。

最近はマネージャーの「見習い」も始めた。8月に兄が出演するアイスショーに帯同し、知り合いのマネージャーから手ほどきを受けた。「昌磨が現役でいる間はサポートをするのもいいかなと思っています。通訳や身の回りのこと、犬のお世話。昌磨には競技に集中してほしいですし、犬にけっこう癒やされているので犬と遊ぶ時間を作ってほしいと思っています」

卒業後のキャリアについて「僕はもうちょっといろいろ考えようかな」(撮影・浅野有美)

ホッケー選手、兄のマネージャー、You Tuber……。多方面で活躍する20歳はこれからどんなキャリアを描くのだろう。

同学年は就職活動中。だが宇野は、「進める進路を増やすためにいろんなことをしている。僕はもうちょっといろいろ考えようかなと。僕が将来何になるか想像がつかないってみんなに言われます」とはにかんだ。

学生アスリートとして限られた時間を生かし、その豊かな才能を次はどこで輝かせるのか。周りに合わせる必要はない。型にはまらず自由に。宇野樹の可能性は無限大だ。

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