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関西大学QB須田啓太「去年もそうやったなあ」 泣きながら見上げたスコアボード

関関戦に敗れて泣く関大QB須田(左)と歩きながら、先輩QBの濱口が声をかけた(撮影・篠原大輔)

関西学生アメリカンフットボールリーグ1部 第6節

11月13日@万博記念競技場(大阪)
関西学院大学(6勝) 17-10 関西大学(5勝1敗)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は11月13日、5戦全勝の関西学院大学と関西大学が対戦し、関学が17-10で勝って59度目のリーグ制覇を果たした。関学は27日に5勝1敗の立命館大学と対戦。勝つか引き分ければ単独優勝で全日本大学選手権準決勝へ進む。敗れて6勝1敗で2校が並んだ場合は、立命館が選手権へ。関大も含めて3校が並んだ場合は、抽選で選手権進出校を決める。今シーズン2度目の大一番を落とした関大QB須田啓太(2年、関大一)は試合後、万博記念競技場のスコアボードを見上げていた。

秋の関関戦、2年連続で後半に沈黙

関関戦の試合後のエール交換が終わったあと、須田は泣きながらスコアボードをじっと見ていた。先輩QBの濱口真行(4年、府立池田)に声をかけられ、2人とも泣きながら引きあげた。そのときの思いを問われ、須田は「後半に点が取れなかった。去年もそうやったなあ、と思いながら試合を振り返ってました」と話した。昨年10月31日の関関戦も同じ10-10のスコアで折り返し、関学が後半に10点を加えて、関大は10-20で負けていた。勝負の後半、関大オフェンスは2年連続で沈黙してしまった。

敗戦後のスコアボードを見つめる須田(撮影・篠原大輔)

前半を終えて関大オフェンスはラン65yd、パス123yd。「関学のDLとLBの反応が速くて、ランでリズムが作りにくい。後半はパスで打開していこう」。ハーフタイム中に、須田はこう思っていたという。序盤のけがで主将のRB柳井竜太朗(4年、関大一)が走れなくなったのも痛かった。

痛恨のインターセプトリターンTD

迎えた後半の2シリーズ目。関学のナイスパントで、自陣6ydと苦しいポジションからスタートとなった。最初はRB一針拓斗(4年、星陵)のスプリントドローで1ydゲイン。第2ダウン残り9ydのプレー。ボールは真ん中で右にレシーバー2人を出した。ショットガンスナップを受けた須田は、右からのDL山本大地(4年、大阪学芸)のラッシュを右にかわすと、前に出ながら、右の一番外から中央寄りの奥へ走り込んだWR溝口駿斗(2年、滝川)へ投げた。これに関学の最後尾を守るDB中野遼司(2年、関西学院)が反応してインターセプト。中野は左サイドライン際を駆け上がり、38ydのリターンTD(タッチダウン)にした。結局、これが決勝点になった。

このシーン、須田はこう振り返る。「QBからの景色では、DB(中野)が結構後ろにいるように見えて、(溝口)駿斗にライナーで投げて、DBの前で決めようという気持ちで投げました」。一方の中野。プレー直前に隣を守る先輩のDB山村翔馬(3年、足立学園)から、短い金言を受けていた。「(隊形からして)絶対パスや。そのへんに来るぞ」。須田が投げるまでジッと溝口を見ていたこともあり、中野のリアクションは鋭かった。溝口の前にスパーンと入り込んでパスを奪った。

「(溝口)駿斗は絶対やってくれる。僕がちゃんとしたら次のステージへ行ける」と須田(撮影・北川直樹)

須田は悔やむ。「いつも通りの弾道で投げてたら、駿斗はボールに寄ってくれたはずだけど、いつもとは違う考えで、いつもとは違うことをしてしまった。変に考えなかったら、インターセプトはなかった。責任をかなり感じています」

立ちはだかった元チームメイト

そして、気になっていた中学時代のチームメイトが須田の前に立ちはだかる。関学のDLトゥロターショーン礼(3年、関西学院)だ。身長188cm、体重100kgと大きいが、並外れたスピードもある。大学入学後はけがに泣き、これが最初のビッグゲーム。須田は関関戦を前に「別のチームになってから、ショーンはずっと脅威です」と話していた。

痛恨のインターセプトTDを喫した次のオフェンス。須田が溝口へパスを通して敵陣へ。ここで左のオプションプレーに出てピッチしようとしたが、トゥロターが必死で伸ばしてきた長い腕を避けようとしてピッチミス。トゥロターにボールを抑えられ、攻撃権を失った。第4クオーターに入って最初のオフェンスでも、第3ダウン残り9ydでのパスで右腕を振り下ろそうとしたところ、トゥロターが死角からボールめがけて腕を伸ばしてきてファンブル。またトゥロターにボールを奪われた。その後も関学ディフェンスの決死の守りに、エンドゾーンは遠かった。須田は11回のランで-5yd。29回投げて14回の成功で222yd進め、TDとインターセプトは一つずつ。雨の影響もあったが、須田がボールを3度失った。

トゥロター(手前の93番)に迫られ、須田はピッチをミスした(3枚とも撮影・北川直樹)

残された時間で、できるベストを

須田には高1のときから尊敬するQBがいる。大阪公立大3年の篠原呂偉人(ろいど)だ。関大一高の2学年先輩で、1年だけ同じチームだった。QBとしてどうあるべきか、教えてくれた人だ。篠原は浪人して大阪府立大に進み、今春から大阪市立大と統合して生まれた公立大のQBとして、関西学生2部の優勝争いを演じる立役者となっている。身長168cmと体格には恵まれず、抜群のスピードがあるわけでも、強肩でもない。しかし呂偉人はチームを勝たせるすべを知っている。

須田は関関戦前にこう言っていた。「呂偉人さんの安定感が僕にはない。どんだけ肩が強かろうが、速く走れようが、呂偉人さんを超えたと思ったことはない。安定した力を出し続けられるエースQBでありたい」。関学戦ではもちろん、勝った立命戦でも、もちろん対戦相手のレベルが違うとはいえ、呂偉人のようなクオーターバッキングはできなかった。

「雨はあんまり気にしてなかった」と須田(撮影・北川直樹)

昨年1点差で負けた立命の壁は乗り越えたが、関学には昨年と同じ負け方をしてしまった。須田はこう言って、万博記念競技場を後にした。「立命さん次第ですけど、可能性は0%じゃないんで、気持ちを作り直して、残された時間でできるベストを出し続けるしかない。可能性にすがるじゃないですけど、頑張り続けたいです」

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