関西大学のルーキーQB須田啓太、ランもパスも自信を持ってオフェンスに勢いを
アメリカンフットボールの関西学生リーグは11月13日、ヤンマースタジアム長居(大阪)でA、B両ブロックの2位同士が対戦する「3位決定戦」がある。勝った方が「甲子園ボウル」への道がつながる負けられない戦い。A2位の近畿大学とB2位の関西大学の顔合わせはともに司令塔の出来が鍵を握る。関大のルーキーQB(クオーターバック)須田啓太(関大一)は大一番で力を発揮できるか。
関西学院大相手に先発し健闘
関大は前節(10月31日)、関西学院大とのBブロック全勝対決に10-20で敗れて2位となった。これまで関大の攻撃は、QBに3年生の濱口真行(池田)と1年生の須田を使い分けて戦ってきたが、この試合では須田が初めて1試合を通して出場した。
関大の磯和雅敏監督によると、初戦の京都大戦、2節の同志社大戦は負けないフットボールを優先するために試合慣れしていてミスの少ない濱口をスタメンで起用し、戦ってきたという。
ただし、関学戦については負けないフットボールではなく、王者にチャレンジするフットボールとしての取り組みをして、パスもどんどん投げて攻めるプランを組んでいた。そのため、パス能力に長(た)ける須田を1試合通しで使うことを決めていたという。前半は10-10の同点だったが、後半に関学の対応が上回り手詰まりになって無得点に抑え込まれた。ただし、磯和監督は須田の出来としては「100点満点ではないが、よくやっていた」と評価した。
須田の魅力は、磯和監督も認める肩の強さだ。コントロールパスで60ydを軽く投げる遠投能力に加えて、40ydをベストタイム4秒7で走る走力を兼ね備えている。プレーぶりも落ち着いており、ゲームを壊さずに作り上げる、高い総合力がある。
磯和監督に誘われ関大一高へ
もともと小学生の頃は野球少年で、ピッチャーとショートをプレーしていた。野球がなんとなく物足りず、もっと面白いスポーツをしたいと思っていた頃、通っていた小学校で先生が保護者向けに配る手紙の中に、チェスナットリーグの兵庫ストークスのチラシが入っていて、興味を持ってはじめることにした。それまではアメフトのことは何も知らず、「ラグビーと何が違うのかわからなかった」と笑いながら振り返る。小学5年生のときだった。
本格的にQBになったのは、小学6年生から。同学年のQBには、池田ワイルドボアーズで活躍していた藤津凛人(大阪産大附高-日本大1年)らがいて、「ドラフト1巡の選手。圏外の僕からしたら雲の上の存在でした」と当時の思いを話す。中学で徐々に力をつけて活躍するようになると、関大一高の教師でもある磯和監督が、熱心に勧誘してくれた。
関大一高に進学すると、2つ上の学年で、2年生の時にクリスマスボウル(全国高校選手権決勝)出場経験もある篠原呂偉人(ろいど、大阪府立大)がいて、QBのありかたや勝ち方に対する考えなど、「今でも大切にしている」ことを教えられた。篠原が卒業して先発を任されるようになると、須田のプレースタイルにあわせて、のびのびとプレーできる環境をつくってくれた。「磯和先生には恩があるので、大学も関大に進むことは決めていました」と須田は話す。
先輩QB濱口真行から学ぶ
関大では、2学年上の濱口との2人体制ながらすぐに出場機会を得た。濱口は優しくなんでも丁寧に教えてくれるそうで、わかりにくいことも聞きやすい空気を作ってくれる「めちゃくちゃ良い先輩」だそうだ。「濱口さんがいなかったらここまでこられていません。尊敬できる先輩です」と須田はいう。
関学戦では高校3年以来「ほぼ1年ぶり」となる先発出場で、ゲームの入りの感覚を取り戻すのにすこし時間がかかったという。前半は自分のできることに集中してやれて、タッチダウン(TD)パスも決めたが、後半に入ると関学守備が対応してきて、ブリッツのタイミングを変えてくるなどしたため、投げたいタイミングで思うようにパスを通せなかった。悔しさの残る敗戦だった。
須田は、自分の強みはラン、パスとも自信を持ってやれることだという。「課題を持ち帰ってしっかりと細かいところを詰めて、チャンスがもらえるなら期待に応えられるように頑張りたい」。1年生らしいまっすぐな言葉で話してくれた。