陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

明治大学、箱根駅伝は出遅れ厳禁!小澤大輝主将「後輩たちにシード権を残したい」

シード権奪還を目指す明治大学(すべて撮影・浅野有美)

2022年の箱根駅伝は往路17位、復路3位で総合14位だった明治大学。2年連続でシード権を逃しており、今大会のシード権奪還は最重要課題だ。64回目の出場となる実力校で、充実した戦力の上級生、成長が楽しみな下級生もいる。18日に開かれたオンライン会見では山本佑樹監督やエントリー選手たちが大会に向けて意気込みを語った。

選手とのコミュニケーション強化

往路の出遅れは厳禁。課題は明白だ。

前回大会17位に沈んだ往路について、「私の采配がうまく機能しなかった」と山本監督は言う。前回2区を走った鈴木聖人(当時4年、現・旭化成)を例に挙げ、「本能的に走るタイプだが前半抑えて入るように指示してしまった。抑えすぎて逆に乗り切れなかった。彼の良さを引き出す指示を出していたら違ったかなと。選手一人ひとりの個性を見ながらコーチングしないといけないなと思った」と悔やむ。

その反省から、今季は選手とコミュニケーションをよくとるようになった。「前に選手がいたら早く追いついた方がよい選手もいれば、じっくりじっくり詰めていった方がいい選手もいる」。選手と話し合いを重ね、個性と適性とを見極めながら様々なシチュエーションを想定してきた。

小澤は練習に対する姿勢から見直し、チームに働きかけてきた

エース富田峻平は1~3区希望「流れをつくりたい」

「往路の順位がかなり大きく左右する。往路が終わった段階でシード圏内にいることがポイント」と山本監督は力を込める。

往路の重要区間となる1~3区には小澤大輝(4年、韮山)、加藤大誠(4年、鹿児島実)、櫛田佳希(4年、学法石川)、富田峻平(4年、八千代松陰)、児玉真輝(3年、鎌倉学園)ら主力からの起用が濃厚だ。

前回大会で7区区間2位と躍進した富田は今季、関東インカレ5000m7位、10000m5位と結果を残した。予選会も日本人3位に入り、明治大の全体2位通過に貢献し、エースへと成長した。箱根は1~3区を希望し、「明治が近年課題としている区間。自分がしっかり走って流れをつくりたい」と頼もしい。山本監督も「レースで積極的に自分から仕掛けることができるようになった」とメンタル面の成長を感じている。

主将としてチームを引っ張ってきた小澤も同じ区間を希望し、「今年度は自分がしっかり流れをつくって後輩たちにシード権を残したい」と意気込む。

箱根駅伝予選会で好走した富田

加藤大誠、2区への思い「誰にも負けない」

エースが集う2区に並々ならぬ思いを抱いているのが加藤だ。1、2年時に2区を任され、前回大会は9区で区間11位。今季は予選会105位と失速、全日本大学駅伝では出走メンバーから外れ、「トップレベルの悔しさ」を味わい涙を流した。そこから「誰よりも早く箱根駅伝へ準備ができる」と気持ちを切り替えた。「1年間ずっと2区で結果を残すためだけに過ごしてきた。2区に対する熱い思いと努力は誰にも負けない」と力強く語った。

2区への強い思いを語った加藤

横浜市戸塚区出身の児玉も2区を希望する。今季は関東インカレ10000m4位、予選会も日本人4位と健闘。「地元の2区でチームの流れをつくりたい」と闘志を燃やしている。4区を希望するのは櫛田。10000mのタイムは28分19秒77でチームトップだ。「2年時に走っているのでコースを熟知している。コースの適性にも合っている」と、区間賞も視野に入れる。

「地元の2区でチームの流れをつくりたい」と児玉

ルーキー吉川響は「新・山の神」目指す

5区にはルーキーの吉川響(1年、世羅)が名乗りを上げた。森下翔太(1年、世羅)とともに高校3年時の全国高校駅伝優勝メンバー。「勝つコツを知っているという意味で重要な選手」と山本監督。夏から上級生と同じメニューをこなせるようになり、箱根の長距離に対しても不安はないという。吉川も「5区1択」ときっぱり。「誰から見てもきついコースだが、その中ですごい走りをして、『山の神』になりたいという思いもあるが、なによりも自分の強みとして上り坂への対応力がある」と意欲満々だ。

「1~3区は相当ハイレベルな展開になる。ベストな3人を並べたい」と山本監督。「常に10番以内をキープしたい。3区が終わった時点でも往路が終わっても10番以内にいること。仮に11番以降でも10番と数秒の差でいられるのかが肝になる」と展望を語った。

会見では各選手が希望の区間を発表した

最初で最後の箱根にかける漆畑瑠人

復路はここ数年のような安定感を発揮できれば上位争いに絡める。

山下りの6区候補には漆畑瑠人(4年、鹿児島城西)や堀颯介(1年、仙台育英)の名前が挙がる。山本監督は、「漆畑は6区の適性がある。昨年までずっと6区のサブで、(前回6区の)杉本龍陽(4年、札幌日大)が(エントリーから)外れたことで起用する可能性が高い。堀を6区で使うことがあれば、7区に漆畑を使える」と明かす。

その7区については、「特徴でいうと(22年大会の)富田、(20年大会の)阿部(弘樹、当時4年、現・住友電工)のような自分のリズムでびたっと押していける選手が候補。5、6区の流れをうまくくんで自分でレースを組み立てる強気な性格もないといけない」とし、スピードのある漆畑に加え、細かいアップダウンが得意な杉彩文海(3年、鳥栖工)も検討する。

これまでエントリーされながら学生3大駅伝で出走がない漆畑。「4年生として重要な区間を走ってチームのシード権獲得に貢献したい」と、最初で最後の箱根駅伝にかける思いは強い。

主力の上級生がチームを引っ張る

準備万端の下條乃將、本番でプラスアルファの力を

復路終盤の9、10区を希望したのが下條乃將(4年、東京実)だ。前回5区で区間18位に終わりショックを受けた。しばらく気持ちが乗らなかったが、実業団で競技を続けることをモチベーションに練習に取り組んできた。「距離の長い区間を一人で淡々としっかり押すことができるように準備してきた」と自信をのぞかせる。「本番でプラスアルファを出せるタイプ」と山本監督も評価。チーム3位の62位に入った予選会の走りを箱根でも期待する。

11月の全日本大学駅伝は9位でシード権を逃したが、それも前向きに捉えている。20年大会は全日本15位のシード落ちから気持ちを切り替えて箱根総合6位と躍進した実績がある。

「最後は笑って終わって、今後、後輩たちの走りを気持ちよく見られるように頑張りたい」と小澤。伝統の紫紺の襷(たすき)をつなぎ、シード権奪還へ。戦う準備はできている。

in Additionあわせて読みたい