陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

立教大学、55年ぶりの箱根駅伝 上野裕一郎監督「肌で感じ、感動を味わってほしい」

シード権獲得をめざす立教大学の選手たち(撮影・杉園昌之)

大学創立150周年を迎える2024年の第100回大会箱根駅伝出場を目指していたが、1年前倒しでその切符をつかんだ。

立教大学を55年ぶりに本戦出場に導いた上野裕一郎監督は、正月の大舞台を前に胸を高鳴らせていた。学生時代は中央大で4年連続して箱根路を駆け抜け、3年時には3区で区間賞を獲得。沿道から大声援を受けた経験は、人生の財産となっている。教え子の選手たちにも特別な大会を堪能してほしいという。「いまでも箱根の歓声は忘れられない。選手たちには1月2日、3日のすごい雰囲気を肌で感じ、あの感動を味わってほしい。楽しんで走ってもらいたい」

もちろん、思い出づくりだけで終わらせるつもりはない。予選会で6位となり、一躍脚光を浴びた後、就任4年目の指揮官は選手たちとともに新たな目標を掲げた。

「目指すのはシード権の獲得です。他大学のように飛び抜けた選手はいないので、一人もブレーキをかけずに区間10位以内で走り切ること。全員が泥臭く、一丸となって戦っていきます」

「泥臭く、一丸となって戦っていきます」と意気込む上野裕一郎監督(撮影・杉園昌之)

「攻めていかないとタイムは出ない」成長続ける関口絢太

「R」の勢いは止まらない。10月の予選会以降も個々がレベルアップに励み、11月25日のMARCH対抗戦ではエントリーメンバーの16人中9人が10000mの自己ベストを更新した。中でも関口絢太(3年、國學院久我山)の成長ぶりは目を見張るばかりだ。

立教大記録となるチーム内トップの28分29秒24で走り、11月13日には5000mで13分55秒10と自己最高記録をマーク。予選会でチーム内5位となり、目標タイムにも届かなかった悔しさがバネにしたという。

いまは箱根に向けて、意気揚々としている。区間は3区を希望し、イメージを膨らませていた。

「3区を走っている上野監督は『前半が勝負だ』と話していました。序盤の下りからペースを上げて、積極的なレースを展開していきたい。目標は62分台(前年度の区間1桁順位目安)。攻めていかないと、タイムは出ないと思っています」

集団で走る立教大学の選手たち(撮影・杉園昌之)

「わくわく」ルーキー國安広人 「食らいつく」林虎大朗

予選会でチーム内トップの1時間3分13秒で走った國安広人(1年、須磨学園)も自らの課題と向き合い、スピードを磨き、持久力を強化してきた。11月に10000mで28分53秒80と自己記録を更新。本人はタイム以上に内容に手応えを得ている。

「前半の5000mは以前より速いタイムで入ったのですが、後半も粘ることができました。他大学の主力と比べると、まだまだですが、徐々に力がついてきたと思います。成長を実感しています。箱根の本戦では予選会以上の力を出したいです」

往路出走への期待は高まるが、國安はあくまで任された区間で全力を尽くすことを誓う。アップダウンへの苦手意識はなく、ルーキーらしく「わくわくした気持ちでいっぱいです」と本番を心待ちにしている。

一方、5000mでチームトップのタイムを持つ林虎大朗(2年、大牟田)は、1区への思いを隠そうとしない。すでにコースを頭に入れており、勝負のポイントとなる六郷橋の対策を口にした。

「最初の上り坂で仕掛けてくる選手もいますし、下り坂からスパートする人もいます。どちらにも対応できるように練習しています」

55年ぶりの箱根路で、納得できる走りをどこまでできるか注目される(撮影・佐伯航平)

大学2年目を迎えている今季は、上野監督から「エースの自覚を持って走るように」と言われ、責任感が芽生えてきた。持ち味のスピードを向上させた上でスタミナ強化にも着手。いまは20kmを超える箱根の距離にも不安はない。

「誰よりも努力してきた自負があります。どのような選手にも臆せず食らいついていけるのが僕の強み。粘り強さも長所の一つです。1区は他大学の主力選手たちが集まりますが、しぶとくついていきます。エースらしく、流れをつくるような走りを見せて、区間上位を狙いたい」

悔しさがこみ上げてくる」雪辱を期す中山凜斗

初めての箱根路に思いをはせる選手たちがいるなか、1人だけ雪辱を期す3年生がいた。中山凜斗(九州学院)は1年時に関東学生連合の一員として箱根駅伝の4区を走り、厳しい洗礼を浴びたという。区間順位は18位相当に終わり、思い返すだけで悔しさがこみ上げてくる。

「自分の走りがあまりにもふがいなくて、思い出したくもありません。映像を見返すこともないので。今回は区間1桁で走り、あの箱根の記憶を払拭(ふっしょく)したいんです。攻めながら冷静なレース運びをします。突っ込むだけではダメ。どのコースでも分析して臨みます」

経験のある4区を含め、往路の主要区間に配置されるはず。ハーフマラソンの自己ベストは1時間3分13秒で、國安と並んでチーム内のトップに立つ。故障の影響でMARCH対抗戦の出走は見送ったものの、箱根本戦に照準を合わせ、逆算してトレーニングを積んでいる。心配は無用のようだ。

「ピーキングは高校時代から得意。大学に入り、自分なりにより考えて調整できるようになりました」

2021年、関東学生連合チームの一員として出走した中山(右)(撮影・北川直樹)

箱根をかき回しそうな若くて生きのいいタレントがそろっている。4年生は全員エントリーメンバーから外れたものの、主将のミラー千本真章(4年、立教新座)は晴れやかな表情を見せていた。

「全員が納得していること。選ばれたメンバーが普段どおりに走れるようにサポートしていきます」

古豪復活のストーリーは、ここから始まる。

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