高代延博の目 あれをやってはいけない ミス?知らん顔ぐらいでいい
16日に東京ドームで行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準々決勝は、序盤の攻撃で日本にミスが出ました。
二回1死一塁、源田壮亮(西武)の2球目でスタートを切った一走の岡本和真(巨人)が、盗塁失敗。岡本和のサイン間違いだと思いますよ。
栗山英樹監督が「ナゼ?」という感じで、一塁方向を見ていましたから。
あれをやってはいけない。
選手たちは気付いているでしょうし、ベースコーチやベンチがミスをした選手を凝視すれば、相手にも動揺が伝わる。
知らん顔をしてバッテリーの方を見るぐらいでないと。短期決戦は心理戦もありますから。嫌な流れになりましたね。
しかし、このムードを一変させたのが、大谷翔平(エンゼルス)でした。
三回1死一塁から、守備陣形の隙を突くセーフティーバント。これが相手の失策も誘って好機を広げ、この回の4得点につながりました。
第2回大会の1次ラウンドの韓国戦を思い出しました。
あの時も同じ東京ドームで、イチロー(マリナーズ)のセーフティーバントが大量得点のきっかけになった。
先発の金広鉉を慌てさせる絶妙なバントでしたよ。
野球小僧というか何と言うか。
打席に入る前に相手のシフトを見るのは当然ですが、好選手はしっかりとそれができる。今、何をすべきかを瞬時に感じられる。
大谷は11日のチェコ戦で三盗も決めました。遠くへ飛ばすだけではなく、小技や走者でも攻撃に絡んでくるのがすごい。
気にしていたのが、遊撃手の源田壮亮(西武)。10日の韓国戦で右手の小指を骨折したあと、16日のイタリア戦で初先発しました。
送球は親指から3本でボールを握られれば問題はない。バットは小指を浮かせて持っていました。思ったより動けているという印象でした。
二回は投手の投球モーションが大きいと見るや、甲斐拓也(ソフトバンク)の初球に盗塁を決めました。
恐らくは足の速い打者限定の「走れるなら走れ」のサインでしょう。好判断でした。
七回もスクイズを試みてファウルになりましたが、直後に適時打。この試合に関しては負傷の影響を感じさせませんでした。
準決勝の相手はプエルトリコを破ったメキシコに決まりました。
コーチで出場した第3回大会は、準決勝でプエルトリコに敗れました。
あの大リーガーそろいの強豪に勝ったのですから、侮れません。
苦戦を強いられると思いますが、世界一まであと二つです。
(09、13年WBC日本代表コーチ、大阪経済大監督)=朝日新聞デジタル2023年03月18日掲載