サッカー

特集:うちの大学、ここに注目 2023

明治大・岡哲平 かつての仲間・木村誠二は今や超えるべき存在、古巣復帰へ「五冠」を

今季の目標に「五冠」を掲げた岡

「五冠を取って、天皇杯でJリーグを倒す」。そう今季の目標を語ったのは、明治大学のDF岡哲平(4年、FC東京U-18)だ。昨年は2年ぶりに関東大学1部リーグ戦を制したチームの中で、最長の出場時間を記録した。リーグ戦のベストイレブンや全日本大学選抜にも選ばれ、名実ともに大学ナンバーワンセンターバックへと上り詰めた。そんな岡のラストイヤーは、かつての戦友を超え、世界へと羽ばたくための第一歩となる。

利き足の右だけでなく、左のキックも一級品

小学生のときにFC東京のスクールへ入って以来、FC東京の下部組織でプレーしてきた。高校3年ではチームを高円宮杯U-18プレミアリーグへの昇格に導くと、FC東京U-23でJ3リーグ18試合に出場。一足先にJリーグデビューを果たしてから、紫紺の一員となった。

明治大では、1年目こそ分厚い選手層の前にリーグ戦で2試合のみの出場に終わったが、2年目からはJ3でも通用した質の高さを見せつけた。リーグ戦第3節の筑波大学戦でスタメンの座を射止めると、そこから9試合連続でピッチに立った。特に第11節の早稲田大学戦では、当時大学ナンバーワンFWとも評されていた2学年上のストライカー・加藤拓己(現・清水エスパルス)を封じた。「ゴリ」の愛称を持つ重量級FWを相手に、フィジカルでも互角に渡り合った。第13節以降はケガで離脱したが、その存在を大学サッカー界に示す1年となった。

全日本大学選抜での岡

3年目となった昨年は、すごみを増した。開幕から左のセンターバックとして、リーグ戦22試合の全てに出場。栗田大輔監督も「自分が見ていた中で一番無失点が多い年だった」と振り返るように、11試合でクリーンシート(無失点)を達成。圧倒的な守備陣の中核を担った。全日本大学選抜やリーグ戦のベストイレブンにも選ばれ、高校時代までは縁がなかった世代別代表の候補にも入った。

岡の最大の武器は両足からのキックだ。「小学校の頃にFC東京のスクールのコーチから『両足で蹴れた方がいい』って言われていて、もはや右よりうまくなった」と語る通り、利き足の右だけでなく左足のキックも一級品。高い水準の守備能力を備えながら、両足からの長短のパスで攻撃のスイッチを入れることができる。

海外基準のトレーニングで、フィジカルもアップ

もはや大学では敵なしとも言えるレベルまで達した岡だが、まだまだ成長を止めるつもりはない。「やっぱり海外に行って活躍したい。代表でもクラブでも。代表で活躍してワールドカップに出る」。Jリーグ入りは通過点であり、目標としているのは世界のトップレベル。そのステップとしてまず見据えているのが、来夏に行われるパリオリンピックだ。「もちろんそこは行きたい」。明治大でともにプレーする佐藤恵允(けいん、4年、実践学園)がパリオリンピックを念頭に置いたU-22日本代表に継続的に召集されていることもあり、大きな刺激を受けている。

昨年のリーグ戦表彰式でトロフィーを掲げ、ジャンプ

そんな岡にとって、意識せざるを得ない存在がいる。かつての戦友・木村誠二(現・FC東京)だ。中学時代から6年間、ともに青赤のユニフォームに袖を通し、同じセンターバックとして隣で戦った。ただ木村は、各年代別代表に選ばれて高校卒業後にトップチームへ昇格。SC相模原やモンテディオ山形へのレンタル移籍で結果を残し、今季はFC東京へと復帰している。U-22日本代表にも招集されている木村は、大学へと進んだ岡にとって、常に先を行くライバルだ。

「ポジションも一緒だし、負けてられない。来年FC東京に行けば同じチームになって、誠二より俺が出てれば(U-22代表へも)選ばざるを得ないでしょ。わかりやすく比較できる」。プロ入り後はベンチを温める期間もあった木村に対し、岡は下級生の頃から実践経験を積んでいる。細かくパスをつなぐアルベル監督のスタイルも、キックが持ち味の岡にとってアドバンテージとなる。来季FC東京へと復帰できれば、超えるべき存在となったかつての戦友とのポジション争いが見られるかもしれない。

ライバルを超え、世界へと羽ばたくために大きな力となっているのが、明治大の鬼木祐輔フィジカルコーチだ。「海外基準のトレーニングをしてくれている。海外の選手のここがすごいとかを知ってる」と岡。鬼木コーチは、長友佑都(現・FC東京)の専属スタッフとして海外を経験。世界のトップレベルで戦ってきたノウハウを岡にも伝授している。「体の当て方と動かし方、効率の良い力の使い方、スピードや意識とか、いろいろなことを伝えてくれる」。すでに186cm83kgと体格には恵まれている。ただプロ入り後に渡り合わなくてはいけない屈強な外国人選手たちを抑え込むためには、フィジカル面でのさらなる成長が不可欠だ。

チームの結果がセンターバックとしての評価に直結する

五冠は世界に羽ばたくための第一歩

古巣・FC東京への帰還、そしてU-22日本代表入りに向けて、大学ラストイヤーで求められることは、圧倒的な結果を残すことだ。「まずは明治で結果を残し続けなきゃいけない」。攻撃的な選手のように、ゴールやアシストなどの数字で結果が残りにくいセンターバックは、チームの結果が自身の評価に直結する。

岡の入学以降、明治大は2度のリーグ戦制覇を果たしているが、カップ戦では苦戦が続いている。「去年は悪いところから修正していく力がなかった。自分がリーダーシップを取らなきゃいけない。今年はいい意味でノリが良くて勢いに乗れるからこそ、悪い方に向かわないように、波を作らないことがカギになる」。岡や佐藤など攻守に強烈な「個」がそろう今年の明治大。栗田監督が掲げる「圧倒的な個が絡み合うサッカー」を体現することができれば、4年前の再現も不可能ではないだろう。

「五輪に出て、Jリーグで活躍して、海外に行って代表に入る」。世界のトップレベルを見据える岡にとって、関東大学リーグ戦、アミノバイタル杯、総理大臣杯、インカレ、天皇杯東京都予選の「五冠」獲得は、その第一歩となる。

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