陸上・駅伝

特集:うちの大学、ここに注目 2023

帝京大・楠岡由浩 「史上初5000m13分台ランナー」の加入、世界で戦える選手に

帝京大期待のルーキー・楠岡由浩(撮影・小林寛拓)

「将来的にまずはトラックで世界を目指したい」。そう話すのは、帝京大学史上最強ルーキーの呼び声が高い、楠岡由浩(1年、慶誠)だ。高校から本格的に陸上を始め、競技歴はまだ3年。だが、高校トップクラスのランナーへと成長した。高校3年生の時にインターハイに出場し、10月には5000m13分55秒を記録した。

「陸上人生のキーポイント」になった織田記念

楠岡は中学までサッカー部に所属していたが、借りだし部員として出場した駅伝大会で好走したことをきっかけに、高校から本格的に陸上を始めることになった。地元・熊本の慶誠高校に進学し、「比較的自由に練習できたこともあり、自分で考えることが多かった。1年生の頃はわからないことだらけで苦労したが、2年生になってからは、どうやったら速くなれるかわかった」と振り返る。

高校3年になると、4月にエディオンスタジアム広島で開かれた織田記念西日本ジュニア5000mで、14分09秒88の自己記録をマークして優勝。さらにこの記録は、楠岡の競技人生初となる大会新記録となった。「この大会が陸上人生のキーポイントになった」と楠岡は話す。西日本チャンピオンになったことで、全国でも戦えるという自信をつけた楠岡はこのとき、8月に徳島県で行われた全国高校総体5000mで入賞することを目標にした。

中学時代はサッカーをしていた(本人提供)

高校2年生の時、楠岡自身の出場はかなわなかったが、福井県で行われた全国高校総体に足を運んだ。実際に5000m決勝を観戦し、その時は「手の届かない舞台」という印象を受けた。

1年後、楠岡はその舞台に立つことになった。織田記念での好結果を受け、5000mに出場。予選を突破し、目標としていた入賞に手が届きかけていた。しかし、決勝は9位。目標としていた入賞ラインの8位までは約5秒届かなかった。「レース中に9位で走っていることはわかっていたので、最後まで諦めずに追いかけたが、届かなかった。実力不足です」と話した。

国体で吉岡大翔に敗れ「ライバル心」

高校総体が終わってから約2カ月後。栃木県で行われた国体に、熊本県代表として出場した。出場選手の中で資格記録は上から11番目だったが、タイム以上の走りを披露した。

レースはハイペースで進み、先頭集団からこぼれる選手も出てくる中、楠岡は落ち着いていた。残り2周を前にしたところで、長野県代表の吉岡大翔(現・順天堂大学1年)が仕掛け、楠岡も反応。この時点で優勝争いは3人に絞られた。最終的に楠岡は3位でゴールし、自己新記録の13分55秒84でレースを終えた。「高校総体が終わった後、良い練習ができていたので、試合に出れば13分台を出せる自信はあった。それ以上に3位に入ったことの方がうれしかった」と振り返った。

順天堂大のスーパールーキー・吉岡大翔 4位にも満足せず、負けから学び将来の勝ちへ
高校3年時に出場した国体で5000m13分台をマーク(本人提供)

高校入学当初は陸上に詳しくなかったが、唯一知っていたのが「帝京大学」だった。高校の先輩にあたる品川慧(3年)が進学したことがきっかけだ。実際に練習に参加したとき、雰囲気が良いことや設備が整っていること、中野孝行監督のもとで練習したら強くなれるという思いを抱いたことから決めた。

高校と大学の練習の違いを尋ねたところ「ペースは高校からほぼ変わらないが、走る距離が伸びた」と答えてくれた。5000mの持ちタイムはすでにチームトップだが、練習で行われるタイムトライアルでは、負けることもある。チーム内では主将で同部屋の西脇翔太(4年、名経大高蔵)を意識。他の大学では先述した国体5000mで優勝し、13分22秒99の高校日本記録を持つ吉岡大翔にライバル心を燃やしている。

「4年間で学生トップランナーへ成長したい」

楠岡は自身の強みを「集団の中で力を使わずに走り、ラストでペースを上げるレースができること」と分析する。すでに大学卒業後は実業団で競技を続けることを視野に入れ、「まずは大学4年間で学生トップランナーへ成長したい」と話してくれた。今はトラックで世界を目指しているが、ロードレースの箱根駅伝も意識している。「明確な希望区間は特にないが、5区と6区は走りたくないです。単独走の経験が少なく、まだ不安があるので、自分の特徴を生かせる1区や2区を走りたいと考えています」と少し笑みを浮かべながら話してくれた。

帝京大学史上初の5000m13分台ランナーの入学ということもあり、大きな期待を抱いている人も多いだろう。大学4年間でどのような成長曲線を描き、どんな選手になるのか、今から楽しみで仕方ない。

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