陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

“ネオ”帝京大学、箱根駅伝6年連続シード獲得へ 中野孝行監督「いぶし銀の駅伝を」

6年連続シード獲得を目指す帝京大学(すべて撮影・浅野有美)

16年連続の箱根駅伝出場となる帝京大学。主力選手が卒業し、今大会のエントリーは4年生4人、3年5人、2年4人、1年3人とこれまでの帝京大とは様相が異なる構成となった。15日に開かれた会見では選手たちが6年連続シード権獲得、総合5位以内に向けて意気込みを語った。

若い力も出てきた」目標は5位以内

出雲駅伝11位、全日本大学駅伝は出場していなかった帝京大の注目度は、他のシード校に比べると、高くないかもしれない。前回の箱根駅伝で3区4位の遠藤大地を筆頭に2年連続で5区区間賞を獲得した細谷翔馬らが抜け、中野孝行監督の耳にも戦力ダウンを指摘する声が入ってくるという。ただ、6年連続のシード権獲得を目指す百戦錬磨の指揮官は、自信をのぞかせている。

「心配している人たちもいるかもしれませんが、心配ないです。前年度よりも総合力は上がっていますから。いぶし銀の駅伝を見せたいと思っています」

前回は総合9位で終えたが、今大会の目標は5位以内。全日本大学駅伝の関東地区選考会で姿を消したこともプラスに捉えている。箱根だけに照準を合わせて、ひと区間20kmを超える長い距離を走るための準備を重ねてきた。夏合宿から余裕を持って取り組めたという。

例年は11月の伊勢路で疲弊する選手もいたものの、今年度は違う。正月の大舞台を控えて、故障者は例年より少なく、選手たちのコンディションも上々。最後まで区間配置に頭を悩ませるほど選手層は充実している。16年連続で本戦出場に導き、箱根を知り尽くす戦略家は不敵な笑みを浮かべていた。

「10000mの平均タイムは19番目くらい。世間一般の人から見れば、シードも難しいと思うでしょう。でも、額面どおりにはいきません。何に特化して練習してきたかです。3区までは苦戦しても、前半である程度で耐えてくれれば、4区からは面白いレースをしちゃおうかなと思っています」

エースらしいエースはいないが、個人の底上げには手応えを得ている。箱根に向けた伊豆大島での強化合宿では、箱根総合4位となった2019年度と同レベルの練習を消化し、メンバーたちの成長をあらためて実感した。

「(上級生中心だった)以前の帝京とは違い、1年生、2年生の若い力も出てきた。同じような練習をしているけど、違うんです。“ネオ帝京”かな」(中野監督)

「世界一諦めの悪いチーム」で粘り強い走りで勝負する

小林大晟は2区に意欲「帝京記録に近づきたい」

1年生3人、2年生4人がエントリーされる中、最も勢いがあるのは2年生の小林大晟(鎮西学院)だ。今年10月、10000mで28分43分71秒と自己ベストを更新。夏合宿は故障でほとんど走れなかったが、秋以降は自らで徹底して追い込んできた。月間走行距離はチームで1番になることもあったほど。1年時は全日本大学駅伝のエース区間と言われる7区を走りながらも箱根前に調子を落とし、まさかのメンバー落ち。1年前の悔しさはいまも忘れていない。2年目に懸ける思いは強く、各大学のエースが集う「花の2区」で堂々と勝負を挑むつもりだ。

「他大学の主力と勝負できるように力をつけてきました。突っ込んで入っても、後半に粘り、しぶとく勝ち切るレースをします。帝京らしい走りを見せて、前回2区を走ったOBの中村風馬さん(現・富士通)の帝京記録(1時間7分10秒)に近づきたいと思っています。最低でも区間1桁を目指します」(小林

小林大晟は2年目の箱根駅伝に懸ける思いが強い

1区志願の小野隆一朗、区間3位以内狙う

主要区間のカギを握るのは、1区を志願する小野隆一朗(3年、北海道栄)か。

スタートの大きな出遅れは、命取りになる。前回は同区間で初めて箱根路を走り、8位と好走。往路の流れをつくり、チームを勢いに乗せた。自身2度目となる大舞台では、さらなる高みを目指す。

個人目標は区間3位以内。大手町から鶴見中継所までの21.3kmは、すでに頭の中に完璧にインプットしている。レース展開が前半からハイペースになっても、対応できるように練習は積んできた。上位集団に食らいついて行くのは大前提。勝負どころは、コース後半の17.6km付近だという。

「前回は六郷橋の上り坂できつくなってしまい、脚を使ってしまった。今回はその反省を生かし、最後まで粘れるように準備をしてきました。余裕を持って六郷橋を上り、坂を下ったあとにスパートで力を出したいです。良い位置で2区にタスキを渡し、総合5位以内に貢献したいと思っています」。言葉には自信がにじむ。

前回大会は1区を任された小野隆一朗

“外さない主将”北野開平がチームを鼓舞

メンバーの誰もが、自分たちの力を信じて疑わない。練習から要所で大きな声を張り上げ、チームをまとめ上げてきた主将の北野開平(4年、須磨学園)は堂々と胸を張る。「この1年間、5位以内の目標に掲げて練習してきました。いい状態で来ています」

キャプテンに就任した当初から故障に苦しみ、夏合宿の前半はほとんど走れずに声で鼓舞。8月中旬にケガから復帰し、脚でもチームを引っ張ってきた。出走したレースでは、気迫の走りを見せている。走れない時期からずっと見てきた樋口雄平主務(4年、帝京)は、北野の変化を敏感に感じ取っていた。

「主将になってから意識が変わったと思います。自身のレースは絶対に外さないんです。熱い気持ちと声でチームを引き締めています。責任感が本当に強い。ザ・キャプテンという感じですね」

積極的に選手たちに声をかけチームを鼓舞してきた北野開平主将

会見では柔和な表情を浮かべて、穏やかな口調で話していたが、ランニングシューズを履くと、きりっと顔が引き締まる。集大成の箱根路では、気持ちを前面に押し出した走りで区間5位以内で走ることを誓う。

「どのレースであっても、自分が結果を残さないと、チームの士気は上がりません。その気持ちを強く持っています。箱根ではどの区間でも他大学のキャプテン、主力には負けたくないです。僕らは『世界一諦めの悪いチームに』というスローガンに掲げていますから、最後まで諦めない走りを見せます」

“外さない主将”が、箱根でもチームに火をつけるはずだ。

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