帝京大駅伝競走部員がこぞって通う「鮨久仁」、定食の小鉢にも愛情がいっぱい
帝京大学駅伝競走部は学生の自主的な取り組みとして、自分たちがどんなものを食べているのかを部内で共有している。「体のことを考えた食事ができているのか、みんなに共有することでより意識できるんじゃないかなと思ってやっています」と主務の山崎隼輝(4年、相洋)は言う。写真を見ていて「お前も行ったの?」と話題になるのが、帝京大からすぐ近くにある「鮨久仁(すしくに)」だ。
ご近所さんたちがまったり過ごせる場所
「鮨久仁」はその名の通り、お寿司屋さん。帝京大の正門が面した野猿街道(東京都道20号)沿いにある店で、京王電鉄京王線「高幡不動駅」「聖蹟桜ヶ丘駅」からバスで10~15分ほど。ゆえに店を訪れる人は、地元住民や車での来訪者、そして帝京大の学生だ。
鮨久仁は50年ほど前に開業。当時は多摩川の上にかかる府中四谷橋の先に店を構えていたが、その府中四谷橋が1998年に開通したことに伴い、より多くの人がアクセスしやすい場所を求めて今の場所に移転した。三上仁八郎(にはちろう)さんと州子(くにこ)さんのふたりが営む店で、昼は12時~13時30分まで、夜は17時40分ころから店を開け、最後のお客さんが帰ったころに店を閉める。基本的に水曜日は休みだが、「でも水曜日に来る人がいてね、その人のために開けることもあるんですよ」と州子さん。
昼に訪れた際、地元の人たちが寿司を食べながら会話を楽しんでいるようだった。その会話に州子さんが加わることもあり、地元の人たちが心許せる場所という印象を受けた。また、タイミングが合えば愛犬「空豆ちゃん」に会えるかも。とっても穏やかで愛らしい看板犬だ。
定食は全て550円、小鉢が5品になる日も
昼も夜も同じメニューをそろえており、特に「海鮮ちらし寿司」「握り寿司7カン」(小鉢鉢と味噌汁付きで715円、価格は全て税込み)が人気だという。もうちょっと食べたいという人のために、12種類のネタをぎゅっと詰めた「王様海鮮丼」(小鉢と味噌汁付き、1350円)というメニューも用意している。
そんな中、帝京大駅伝競走部の学生たちがよく食べているのが550円の定食だ。「サバの味噌煮」「カレイの煮付け」「豚の生姜焼き」「トンカツ」の4種類で、どの定食にも小鉢と味噌汁が付いてくる。小鉢も味噌汁もその日によって種類が変わり、特に小鉢は数も変わる。「1品だけだとかわいそうじゃない? だから3品以上が基本かな」と州子さんは言うが、多い時には5品並ぶこともあるそうだ。
取材日の定食には小鉢としてクラムチャウダー、けんちん、白菜の漬けものが用意されていた。アサリがゴロゴロと入ったクラムチャウダーを食べていると、「ご飯と合わせて食べてもらうんだったらちょっと塩味を利かせた方がいいかなと思ったんだけど、どうかしら?」と州子さんが声をかけてくれた。もちろん、ご飯が進んでしまう。白菜の漬けものもちょっと添えられた柚子の香りが絶妙だ。味噌汁やサバの味噌煮に使っている味噌は、州子さんお手製の味噌をブレンドした特別仕様。「5年ものを使っているんだから」と笑顔で話してくださった味噌はほんのりと甘い。
帝京大駅伝競走部の学生が来た時は心持ちご飯を大盛りにし、時には小鉢を1品おまけすることもあるそうだ。「みんな礼儀正しい子たちですよ。足りないかなって思ったらちょっと1品足してあげることもあるんですけど、『いいんですか?』ってうれしそうにしながらお礼を言ってくれますし、お茶を入れたら『ありがとうございます』って返してくれます。見ていて気持ちがいいですよね」と州子さんもうれしそうに明かしてくれた。
駅伝では帝京推し「やっぱり気になっちゃう」
仁八郎さんもカウンター越しに学生と話をすることがあるが、「学生にあまり色々聞いちゃいけないかな」という配慮から話す内容は世間話程度にとどめているという。「最近の子たちってシャイな子も多いでしょうから、こちらから『この前、テレビで見たよ』とか『普段はどんなものを食べているの?』とか、そんな話しくらいですかね」と仁八郎さん。学生3大駅伝などで応援するのはもちろん帝京大だ。州子さんも「やっぱり気になっちゃう。『前に出た!』『抜かされちゃった……』ってハラハラしながら応援していますよ」と話す。
新型コロナウイルス感染症対策として、帝京大駅伝競走部の学生たちは「外食禁止」「公共機関の利用禁止」を徹底している。そのため昨年4月以降は学生たちの来店が途絶えてしまいさみしい気持ちがあるが、厳しい環境下で戦っている学生たちをふたりも応援している。店の裏がジョギングのコースになっているようで、草むしりをしている時などに「こんにちは」と帝京大駅伝競走部の学生が声をかけていくこともあるそうだ。「顔を上げたらもう後ろ姿だったりするからねぇ」と、州子さんも学生たちの元気な姿に励まされている。
「今年は色々と難しいだろうけど、来られるようになったらしっかり食べてもらって、また頑張ってもらいたいですね」。その時は仁八郎さんも州子さんも、心を込めた料理と一緒に笑顔で迎え入れるつもりだ。