フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

田中梓沙と西山真瑚の「あずしん」カップル、「全日本で表彰台」カナダ拠点に成長誓う

アイスダンスで全日本表彰台を目指す田中梓沙(左)、西山真瑚組(撮影・浅野有美)

フィギュアスケートのアイスダンスで、5月にカップル結成を発表した早稲田大学4年の西山真瑚(しんご、目黒日大高)と、京都光華高校3年の田中梓沙(京都アクアリーナ)。世界トップクラスのカップルが集う、カナダ・モントリオールを拠点に練習を積んでいる「あずしん」に今シーズンの目標について聞いた。

田中「自分もこの競技で上を目指したい」

2022-23年シーズン、西山はシングルで大会に出場し、全日本選手権に進出した。2023-24年シーズンからはアイスダンスに専念するため、パートナーを探していたところ、カップルの相手を探すための海外サイトで田中の名前を見つけ、連絡をとったことが結成のきっかけになった。5月初旬に2人でカナダに渡り、アイス・アカデミー・オブ・モントリオール(I.AM)で練習をスタートさせた。

田中は2021年全日本ジュニア選手権5位などシングルで活躍していた。当時所属していた木下アカデミーに、アイスダンス元日本代表のキャシー・リード・コーチや世界ジュニア選手権出場のカップルがいたことから、アイスダンスに興味を持ち始めた。

「3年ほど前からアイスダンスもすごく楽しそうだなと思っていました。シングルだとジャンプに集中してしまい、スケーティングや表現力がおろそかになってしまうと感じていて、ダンスだったらもっと自分が見せたいものを皆さんに届けられるんじゃないかなって。キャシー先生に少しずつ習っているうちに、自分もこの競技で上を目指したいと思うようになりました」

憧れは、2014年世界選手権優勝のイタリアのアンナ・カッペリーニで、彼女の作り出す世界観がすごく好きだという。

西山から連絡を受けたときは驚いたが、一緒に世界を目指したいと思い、カップルを組むことを決断した。

樋口豊コーチが勧めた世界トップが集う拠点

拠点は世界トップクラスのカップルが集うリンク。西山は以前拠点にしていたカナダのクリケット・クラブに戻る構想もあったが、樋口豊コーチの勧めでモントリオールを選んだ。

「樋口コーチから、『シニアで世界のトップを目指すなら、世界のトップの選手と一緒に練習して、目から学ぶものや一緒に滑って肌から感じるものを体験した方がいい。いろんな方面からアプローチをしてくれる環境が今のあなたには必要』と言われました」。樋口コーチと親交があったロマン・アグノエル・コーチに受け入れてもらえることになった。

「毎日チャレンジングだけど楽しい」と話す西山(右、本人提供)

練習は週5日で1日3~4時間。オリンピックや世界選手権に出場したカップルが切磋琢磨(せっさたくま)している。

「あるセッションで、自分たち以外は全員北京オリンピックに出ている選手だったことがありました。毎回セッションの冒頭15分はグループストローキングがあり、全員で同じステップをするのですが、みんなうまいし、スピードがすごいし、後ろの方で頑張ってついていってます。そんな素晴らしい環境で滑らせてもらっています」と西山。「スケートのコーチも6人いて、スケート以外もバレエ、ヒップホップ、社交ダンスなど、専門分野が分かれていて、毎日いろんな先生に習っています」と続ける。

ロマン・コーチの一番弟子が、西山がクリケット・クラブで指導を受けていたアンドリュー・ハラム・コーチだといい、「教えてもらう系統や雰囲気は、今までとガラッと変わるものではなく、自分の中ではすっと入ってきます。一方、教え方のスタイルは別で、エッジや体の使い方はまったく新しいもの。毎日チャレンジングだけど、すごく新鮮で楽しいです」と充実した様子だ。

日本勢では、北京オリンピック日本代表の小松原美里、尊組(倉敷FSC)がいて、週に数回会うくらいだが、いつも優しく接してくれて心強い存在だという。

西山「シングルの靴は東京に置いてきた」

これまでシングルと両立してきた西山だが、アイスダンスで世界の舞台を目指す覚悟を決め、シングルの靴は東京に置いてきた。「クリケット・クラブでは、朝はダンス、昼はシングルの練習をしていたので、ダンス一本でやるのは初めてなんです」と明かす。田中も同様だ。「深いエッジワークができるように頑張りたい」と、アイスダンスの技術を体に覚え込ませている。

カップルを組んで数カ月がたち、お互いの印象をこう語る。

「間近で滑っている真瑚くんを見ていると、すごくスケートが好きなんだなというのが伝わってきます」と田中。西山は「梓沙ちゃんはアイスダンスが初めてで、まだまだできないことも多いですが、一生懸命努力をしてくれて、できるようになったときは素晴らしいものを見せてくれます。もともとすごく努力する選手だと、うわさで聞いてはいたんですが、一緒に練習して改めて感じました」

6月にはリズムダンスとフリーの振り付けを終え、8月にカナダで行われる大会に向けてプログラムを滑り込んでいる。今シーズンのリズムダンスの課題は「Music and Feeling of the Eighties」。1980年代の有名な音楽を選んだという。フリーはバレエ音楽「ジゼル」で、いずれもロマン・コーチが振り付けを担当した。

今シーズンの目標について田中は、「全日本で表彰台に乗りたいです」ときっぱり。西山も、「全日本で極力高い位置に行くというのはもちろんですが、とはいえ、自分たちは新しいカップルなので、たくさんのお客さんの前で、田中、西山組が日本のアイスタンス界にはいるんだよ、と認知してもらうのが、まず今年達成したい目標です」と力強い。

10月に西日本選手権と同じ会場で行われるアイスダンス予選会が日本での初戦となる。

世界トップレベルの環境で成長を誓う田中(右から2人目)と西山(右端、本人提供)

さらに大きい目標は、オリンピックや世界選手権に出場し、日本勢歴代最高順位を出すことだ。西山は、「今は慌てずに一つひとつ階段を上っていきたい。きっと自分たちなら、大きい目標を達成できると思うので、まずは目の前にある課題を一つひとつ達成していく、乗り越えていくことが必要だなと思っています」。田中も「いつか世界で活躍できる選手になることが目標です」と目を輝かせる。

村元哉中、高橋大輔組が引退し、小松原美里、尊組に続くカップルの成長が期待されている。世界トップレベルの環境で「あずしん」はどんな成長曲線を描くのか、楽しみに待ちたい。

 

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