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特集:第1回バスケ新人インカレ

浜松学院大、創部6年目でつかんだ全国4位 明確になった関東勢との距離と目指す先

浜松学院大は、創部以来一度も勝てなかった中京大を破る(撮影・青木美帆)

7月16日に閉幕した第1回全日本大学バスケットボール新人戦(新人インカレ)の閉会式後に行われた表彰チームのフォトセッション。筑波大学、専修大学、日本大学の選手たちが慣れた様子でカメラに納まる中、浜松学院大学の面々はどことなくぎこちなさげに見えた。

当然と言えば当然かもしれない。浜松学院大は創部6年目の新興チームで、全国大会に出るのは今回が2度目。大学以前に全国大会で活躍した選手がほぼおらず、去年初出場したインカレでロスター入りした選手はセン・マム・リバス(2年、桜丘)だけ。そんなチームが、2度目の全国大会で4位入賞というのは快挙と言っていい。大口真洋監督は「まだまだ力はないし、ラッキーな面もありました」と冷静に評価しつつも「その運を自分たちでモノにすることはできた感じがします」と選手たちの奮闘をたたえた。

オールラウンダーがいなくても

大会のハイライトはトーナメント2回戦。同じ東海ブロック所属で、創部以来一度も勝ったことがない中京大学を67-58で破った。浜松学院大には、強豪であればいて当たり前な「オールラウンダー」がいない。坂井晴哉(1年、九州学院)はスピード。西尾碧斗(2年、岐阜農林)はゴールアタック。猪狩智哉(2年、福島南)はアウトサイドシュート。リバスはゴール下……。それぞれの選手の持ち味を大口監督が整理し、組み合わせ、小気味いいバスケットでジャイアントキリングを達成した。

優秀選手賞を受賞した浜松学院大主将の猪狩(撮影・青木美帆)

「創部当時は、中京と当たるとダブルスコアでボコボコにされていましたし、この大会の予選の決勝でも30点近く負けてます。そこからはい上がってひっくり返せたことにチームとしての成長を感じています」と大口監督。試合のクライマックスに足をつり、喜びの瞬間を床に寝転び足を伸ばしながら迎えた坂井は「予選の悔しさを胸に全員でがんばってきたので自信になりました」と話した。

日大戦でドリブルする浜松学院大の坂井(撮影・青木美帆)

関東勢に大敗、リベンジ期す

リバスを負傷で欠いた準決勝の筑波大戦は55-107、3位決定戦の日大戦は54-87と大敗した。選手たちにショックの色が見られたかと大口監督に尋ねると「そう思います」と言ったが、「ただ」と続けた。

「まともに全国大会を戦うのが初めての子たちばかりなので。関東のレベルがどれくらいかなど、何も知らない状態で来ているので、これを味わえたことで、自分たちがどこを目指さなきゃいけないのかを明確にできたと思います」

今大会のアシスト王に輝いた坂井は、高校時代は全国常連校のベンチウォーマー。浜松学院大の活気あふれる雰囲気にひかれ、「ここがいい」と自ら門をたたいた。177cmのサイズで190cmの泉登翔(2年、福岡大大濠)や188cmの山田哲汰(1年、白樺学園)とマッチアップした日大戦後は「本当に何もできなくて、自分のふがいなさに落ち込んでいます」と意気消沈していたが、「次やるときには絶対に勝ちたいと思います」とリベンジに燃えていた。

アシスト王に輝き、記念撮影に臨む浜松学院大の坂井(右、撮影・竹田和博)

リバスに次ぐスコアラーとして活躍し、得点ランキングで6位に入った西尾は「ベスト4という結果で終われたのはすごくいいことですし、この大会で初めて関東の大学と連戦して、フィジカルの差やシュート率が全然違うことがわかって収穫になりました」と大会を総括した。

高校時代は全国出場経験がないどころか、182cmの身長でセンターとしてプレー。大学入学後にフォワードに転向し、今大会で光った積極的なゴールアタックの意識を養った。日大戦後のミーティングで大口監督から「フルメンバーになってもこのままやらなきゃいけないよ」と励まされたという西尾は「今年は絶対にインカレのメンバーに入って、関東のチームを倒せるようにがんばりたい」と笑みを見せた。

中京大戦でプレーする浜松学院大の西尾(撮影・青木美帆)

理想は「個に依存しない戦い方」

大口監督は、大学がある静岡県浜松市をホームタウンとする浜松・東三河フェニックス(現在の三遠ネオフェニックス)の元フランチャイズプレーヤー。初代監督に就任した当初は、バスケットを通じて学生を育てることを第一とし、勝ち負けにこだわるつもりはなかったと話すが、「やっているうちにやっぱり勝ちたくなって」と笑った。近隣の好プレーヤーは関東の大学に進み、環境面でも恵まれているとは言えない。しかし、個の力によらず、システマティックな戦い方で勝利を重ねるチームの理想像を思い描いている。

浜松学院大の大口監督(右、撮影・青木美帆)

今年のメンバーは、初のインカレ出場を決めた今春の卒業生たちと比べるとタレントは劣るが、献身的にプレーできる選手が多く、大崩れしないチーム力が魅力だという。「去年3位だったリーグ戦で優勝を目指してやりたいし、今年もインカレに出場したい。そしてやっぱり、関東のチームと戦って、『もっとできるんだ』っていうところを味わいたいです」。大口監督はそう話し、日大戦後に誰よりも悔しそうにしていた坂井も言った。

「初めての挑戦で大変なこともあったけれど、こういう経験をするから上に行けるんだと思う。ムダにせず、今回経験した壁を乗り越えていきたいです」

中京大に勝利し、笑顔を見せる浜松学院大の選手たち(撮影・青木美帆)

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