サッカー

明治大学・中村草太 「怖いFW」目指す新エース、闘争心に火が付いた監督からの一言

明治大学の新エースFW中村草太(すべて撮影・明大スポーツ新聞部)

明治大学体育会サッカー部に新たなストライカーが誕生した。FW中村草太(3年、前橋育英)は今年度、関東大学1部リーグ戦の第14節終了時点で全試合に出場し、11ゴール6アシストの大活躍。背後への抜け出しや決定力、高い攻撃センスを武器に得点とアシストランキングでともに単独首位を走っている。8月からドイツ1部・ヴェルダー・ブレーメンに加入した佐藤恵允(4年、実践学園)が抜けた穴を感じさせない。活躍の裏には、大学での急成長があった。

1年目は「自分に対して欲がなかった」

前橋育英高校から明治大に進学した直後、クラブユース得点王の田中禅(3年、サガン鳥栖U-18)や日本高校選抜の内田陽介(3年、青森山田)など同年代でトップレベルの同期に先駆けてリーグの開幕戦に途中出場した。新入生としては理想と呼べるスタートを切ったものの「1年生のときは自分に対して欲がなく、こだわりや追求心が足りていなかった。奇跡的に明治大学に入り、開幕戦に出られたことにあぐらをかいていた」。

中村は日本屈指の強度を誇る明治大の練習に全力で取り組んではいたが、トップチームのベンチに座っている現状に居心地の良さを感じ、さらに上を目指す姿勢が足りていなかったと振り返る。1年目は9月に行われたリーグ戦の後期開幕戦で右サイドとして初スタメンを飾り、その後何度か試合に出場したものの、確固たる地位を築くにはいたらず。リーグの終盤戦や全日本大学選手権ではベンチに入ることなく、不完全燃焼のまま大学1年目を終えた。

今季のリーグ戦第12節ではハットトリックを達成した

「一歩上に行けた」と実感した法政大学戦のゴール

「弱いものいじめ」。これは中村が2年生になり、フィジカルや技術は着実に進歩していたものの、依然としてトップチームに定着できていなかった時期に、栗田大輔監督からかけられ続けた言葉だ。セカンドチームや格下チームとの練習試合では得点を量産していたが、関東1部の強豪相手には同じ力を出すことができない。求められる位置に達していない現状を端的に表現した監督の言葉は、中村の心に突き刺さった。

「今までの人生で一番悔しくて、眠れなかった。2年生の序盤はセカンドチームにいたが、『見返してやる』という気持ちで反骨心を持って過ごしていた」。恩師からの一言は中村の闘争心に火をつけ、上を目指す起爆剤となった。

出番のなかった4月から一転、5、6月のリーグ戦には全試合で出場し、迎えた「アミノバイタル®」カップ関東大学トーナメントは「自分の中ですごく大きな意味を持った大会だった」。

負けたら終わりのトーナメント。背番号「9」を背負い、主戦場の左サイドで出場した初戦の山梨学院大学戦で2ゴールを挙げ、勝利に貢献した。ただ本人は「ここで満足して1年生のときと同じ轍(てつ)を踏みたくない、もう1個上に行きたいと自分に変化が生まれた」。大舞台での得点を自信にしながらも、過信せずさらに上を目指す。その姿勢が奏功したのが準決勝だった。関東1部の強豪・法政大学から得点を奪い、延長戦で勝利。「法政大相手にゴールを決められたときに、自分が一歩上に行けたことを実感できた」。大会は惜しくも準優勝で終えたが、自身の殻を破ることに成功。2年目のリーグ戦は15試合に出場し、3ゴール1アシスト。チームの優勝に貢献し、誰もが認める「明治の9番」へとなった。

2年目以降は全日本大学選抜に選出されるようになった

佐藤恵允は追い越すべき目標

3年生となった今年4月には、U-22日本代表候補トレーニングキャンプのメンバーに選ばれた。計4日間の合宿では「合宿で結果を残した恵允さんと自分の差を思い知らされた。今年のリーグ戦では自分の方が結果を出しているが、代表での活動やJリーグのチームと戦う際に自分は活躍できず、恵允さんは結果を残している。恵允さんのいる、もう1個上の上のステージに行きたいという気持ちが芽生えた」。一足先に世界へと羽ばたいた佐藤は、もはや憧れるだけの存在ではなく、追いつき、追い越すべき目標へと変わっている。

佐藤の退部後、リーグ戦の第14節では10番を背負い1得点2アシストの活躍だった

ストライカーとしてさらにステップアップをするため、中村が目指し続けている姿は「うまい選手」ではなく「怖い選手」だ。「今まではきれいなプレーを選択していたことが原因で、点を取れていなかった。最近は積極的に仕掛け、前向きのプレーが増えている。もともと得意だったアシストよりもゴールの数が多くなり、少しずつ自分の理想像に近づいているのかなと思います」。定評があったパスセンスや展開力に加えて、FWとして時に泥臭く、強引に戦う精神を身につけたことで、得点もアシストもできる万能型ストライカーとなった。

「もう1個上のステージに一気に行けるわけではない。とにかく明治での日々を大事にして、目の前の1試合を全力で戦っていきたい」。今年度の大会は残すところ、リーグ戦と全日本大学選手権の2大会のみ。今季の明治大にタイトルをもたらすことができたとき、中村は今以上に大きく成長しているはずだ。

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