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駒澤大学・中島右京 けがで離脱の大黒柱を埋めたオポジット 好調維持し、勝負の秋へ

1部残留を決め、喜びを分かち合う中島(11番、撮影・駒大スポーツ新聞編集部)

関東大学男子1部リーグに所属する駒澤大学は、春季リーグ戦で強豪校との対戦が続く中、エースでキャプテンの菅沼海成(4年、福井工大福井)がけがで離脱した。菅沼から攻撃の要であるポジション・オポジットを引き継ぎ、期待に応えたのが中島右京(3年、都城工業)だった。

春季リーグの「明暗を分けた」筑波大学戦

「絶対的なエースがいない状況で、自分が決めないといけない」という強い思いを抱いていた中島は菅沼の離脱後、鈴木淳平監督からオポジットに抜擢(ばってき)された。駒澤大は主力に3年生が多く、中島が重役を担うようになってからも、同期を中心に、常にコミュニケーションが取れる環境だった。中島は当時について「オポジットに入ることを重く考えたり、プレッシャーになったりすることはなかった。全員で鼓舞しあいながらできたと思う」と振り返る。

しかし、強豪が集う1部で勝ち星を挙げることは、簡単なことではなかった。初戦の筑波大学戦でフルセットの末に敗れると、チームは調子を上げきることができず5連敗を喫した。「筑波大戦が明暗を分けた」と中島は言う。「リーグ戦が始まる前から、チーム全体で筑波大に勝とうという雰囲気があった。結果的にフルセットで負けてしまったが、勝っていたらその後の試合がどうなっていたか分からない」と振り返り、この試合がリーグ戦の中で一番悔しい試合だったことも明かした。

初戦を落とした代償は大きかった。「気持ちの切り替えができなかった。ミーティングではキャプテンを中心に『次は勝ちに行こう』と声をかけてくれたが、切り替えようと思ってもうまくいかないことが多かった」。悪いムードを断ち切れないまま12チーム中11位でリーグ戦を終え、1部2部入れ替え戦に進むこととなった。

力強いサーブを打ち込む中島(撮影・駒大スポーツ新聞編集部)

主将不在のまま戦った入れ替え戦

大東文化大学との入れ替え戦。チームスタッフや控え選手としてコートに入っていた4年生の数が、いつもより少なかった。就職活動などの影響だという。ここまで会場から後輩を鼓舞し続けた菅沼も、入れ替え戦のコートに姿を見せることはできなかった。

中島は入れ替え戦前の状態について「レギュラーは3年生が中心で4年生が入っていないことが多く、チームの状況自体は変わらなかった。ただ、チーム内の調整で助けてもらっている分、その時に4年生がいなかったことは致命的だった」と振り返る。一方で「負けたらどうしようという不安はなかった」と強気な一面ものぞかせた。

その言葉通り、中島は試合の序盤から好調ぶりを発揮した。序盤から積極的な攻撃を重ね、2セットを先取した。第3セットは相手にリードされる中、中島は途中交代。チームは粘りのプレーで点差を詰め、デュースに持ち込んだが、最後は相手にセットポイントを奪われ、ストレート勝ちを逃した。ただ、第4セットは「次のセットも奪われてヒヤヒヤする試合をしたくなかった」というチーム全体の気持ちがプレーにも表れた。中島は再びコートに戻り、キレのあるスパイクで相手を25-18と圧倒。セットカウント3-1で1部残留を決めた。「最後は力の差が出たのだと思う」と言うように、リーグ戦で培った力は確かにあった。

下級生の頃から試合に出場し、活躍した(22番、撮影・井上翔太)

天皇杯の東京都予選優勝にも貢献

入れ替え戦から約3週間後。東日本インカレが行われた。金沢工業大学との初戦を危なげなく制し、2回戦に進出。相手は春季リーグで敗れた日本体育大学だった。中島は序盤からスパイクを決め、第1セットを25-22で先取。第2セットは22-25で落としたが、「試合をやっていく中で自分たちのプレーが出て、そこからリズムに乗れた」という手応えがあった。

その後はつかんだ流れを離すことなく、第3、第4セットを連取。セットカウント3-1で春季リーグの雪辱を果たした。中島は「勝てると思っていなかったので、勝った瞬間はうれしかった」と笑顔を見せた。準々決勝は東海大学戦。春季リーグでは勝利を収めた相手だったが、結果は0-3のストレート負け。駒澤大は5位で東日本インカレを終えた。中島は東海大戦の敗因を「リーグの時に勝利したので、そこで『次も勝てるだろう』という余裕が出てしまっていた」と分析。「足をすくわれた」と悔しそうに語った。

7月には天皇杯の東京都予選に出場し、決勝戦へと駒を進めた。相手は春季リーグ6位の中央大学。この日も中島は好調だった。「最近の試合の中で一番かみ合っている感じがした。全部いい方向にいった感じ」と言う通り、序盤から攻守で躍動。相手を翻弄(ほんろう)し、ストレート勝ちを収めた。東京都予選の優勝とともに、10月に行われる関東ブロック大会への進出を決めた。中島はこれまで中央大に勝った経験がなかったといい、「めちゃくちゃうれしかった」とストレートに喜びを表した。

中央大との天皇杯東京都予選決勝。強烈なスパイクを何本も決めた(撮影・駒大スポーツ新聞編集部)

ポテンシャルの高さを発揮し、シーズン後半へ

春季リーグの期間中、チームの結果が伴わない時も、中島は個人記録を伸ばしていった。複数項目でランキング入りを果たしたが、本人は「狙っていたわけではない」という。「自分の普段通りのプレーをしていたら、勝手にランキングに入っていた」と笑みを浮かべる姿からは、そのポテンシャルの高さがうかがえる。サーブとブロックには、まだまだ課題が残っているといい「特にサーブは今年に入ってから調子が悪い。サーブも極めてランキングを狙える選手になりたい」と今後に向けた抱負を語った。

チームの目標は1部リーグ制覇だ。春に惜敗した筑波大には「今度こそ勝ちたい」と特別な思いを持っている。また今冬には、前回大会で快進撃を見せ、ベスト8入りを果たした全日本インカレも控えている。けがの影響で実戦から遠ざかっていた菅沼もコートに姿を現すなど、少しずつ復調の兆しを見せている。中島は「出来るだけ上、優勝を目指して頑張りたい」と決意を語った。

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