ボクシング

特集:うちの大学、ここに注目 2023

駒澤大学・荒竹一真 史上初の優勝に貢献した「異才」、強さの証明へ世界選手権制覇を

高校時代から注目され、大学でも実力を発揮している荒竹(すべて撮影・駒大スポーツ新聞編集部)

駅伝や野球部などが注目されがちな駒澤大学だが、ボクシング部にも異才がいる。それが、荒竹一真(3年、鹿屋工業)だ。高校時代はインターハイ、国体、全国高校選抜大会で5度の優勝。大学入学後も日本代表に選ばれ、多くの国際大会を経験するなど、その強さを世に知らしめてきた。5月1日からウズベキスタンで開催される世界選手権にも日本代表として出場する。目標はまだ手にしていない世界王者のタイトル。そんな荒竹のこれまでと思い描く野望に注目したい。

初の国際舞台はコロナに阻まれた

入学早々、AIBAユース男女世界選手権大会のライトフライ級日本代表に選出された荒竹。しかし、自身初となる世界への挑戦は新型コロナウイルスによって阻まれた。派遣選手団スタッフのコロナ陽性が判明し、試合予定だった荒竹を含む日本選手は棄権を余儀なくされた。

大学デビュー戦となったのは、6月に行われた関東大学ボクシングリーグ戦。「小学生の頃から後楽園ホールに見に行った憧れの舞台」と聖地での初陣で、鮮烈なデビューを飾った。出場した3試合すべてで勝ち星を挙げるなど、ボクシング部史上初となる優勝に貢献。個人としては技能賞を獲得した。

リーグ戦を戦う荒竹

勢いそのままに、10月に開催されたAIBA男子世界選手権に向かった。初戦から優勝候補と対戦して勝利を挙げるなど、学生として最高順位の5位入賞。「勝てばメダルだったので、チャンスを逃したのは悔しいが、自分の力が世界にも通用することが分かった」と世界にも自身の強さを証明した。

日本代表としての快進撃は続いた。1月に開かれたASBCアジアU22ボクシング選手権大会では国際大会で初のメダルを獲得。初戦を快勝すると、準決勝の2戦目は強豪・キルギス代表との一戦だった。この試合には、ボクシングを始めるきっかけとなった父、俊也さんがウズベキスタンまで駆けつけた。「一緒に作戦が練られた」と父の力も功を奏し、5-0の完封勝利を収めた。

迎えた決勝、1ラウンド(R)のラスト1分のところで、バッティングのアクシデントに見舞われ、不完全燃焼のまま大会を終えた。それでも2度目の国際大会で決勝の舞台に立ち、順調にボクサーとしてのキャリアを積んだ。

2度目の国際舞台で銀メダルを獲得した

見失いかけた自身のボクシング

一方で、大きな挫折も味わった。昨年の関東大学リーグ戦。連覇を狙う駒澤大は、好調の滑り出しを見せた。荒竹も2戦目の拓殖大学戦、3戦目の日本大学戦に出場し、どちらも相手を圧倒した。

両チームとも全勝で迎え、勝った方が優勝を決定的にする大事な東洋大学戦。「まずは1勝を」と荒竹が先陣を切ったが、古藤昇大(現・東洋大2年)に2-3の判定負けを喫した。国内での敗戦は初めてだった。チームも4-5で敗れた。

荒竹はこの当時を「大学に入ってから一番調子が悪かった」と振り返り、自分自身のボクシングを見失いかけていた時期だとした。ただ、この敗戦が自身のボクシングを一から見つめ直すきっかけになったと話す。

「持ち味である自分から攻めるボクシング、勝ちに行くボクシング、周りから見ても勝ちに行っているボクシングを再度心がけた」。技術面もそうだが、メンタル面も含め一段と自身の成長に磨きをかけた。

父の俊也さんと二人三脚で世界一を

落ちた先には好調の波が来るとばかりに、荒竹はすぐに結果を残した。11月にU22アジア選手権以来となる国際大会、ASBCアジアエリート男女ボクシング選手権大会(ヨルダン)に出場した。

リーグ戦時は「最悪」とまで言ったコンディションは「大学になって一番良かった」と言うまでに状態を戻してきた。初戦はパワーが特徴的な相手だったが、苦にすることなく5-0の判定勝ち。続く準決勝は荒竹が銀メダルを獲得したU22アジア選手権で銅メダルを獲得した選手が相手。容易に倒すことはできない実力者だが、またも5-0の判定勝ちを収めた。

自分のボクシングを取り戻し、アジア選手権で銀メダル

男子日本代表が決勝に進むのは2019年以来。優勝をすれば1983年の那覇大会以来、39年ぶりの快挙だった。偉業を達成するべく、決勝のリングに上がった荒竹。1R、2Rとも、お互いに積極的な攻撃を見せた。最終Rも激しい攻防が続く中、相手の強烈なストレートを連続でかわし、優勝への勝機を探った。

だが、結果は0-3の判定負け。目の前にまで迫ったアジア王者の称号は手に入らなかった。「どっちが勝ってもおかしくなかった。勝てなかった原因は小さいことだが、それを埋めるのは難しい」と国内では敵なしの男も、国際大会での優勝がいかに難しいことかを口にした。

今大会は、父の俊也さんが国際大会では初めて、荒竹のセコンドに付いた。父と子で大舞台に挑戦したのは荒竹自身にとっても感慨深かったようで「やっと日本代表で一緒に戦えた」と振り返った。また「今度は優勝して、金メダルをかけてあげたい。これからも2人でやっていきたい」。俊也さんと二人三脚で世界一をつかみたいという思いは、一層強くなった。

セコンドに付く父の俊也さんと二人三脚で挑む

古藤昇大とのリベンジマッチ

荒竹が銀メダルを獲得した傍ら、日本では唯一の黒星を喫した古藤が全日本選手権を制覇していた。これにより2023年に開かれる世界選手権とアジア大会の日本代表を決めるBoxoff(代表決定戦)に出場することを決めた。荒竹にとっては雪辱の舞台だ。

今年2月25日のBoxoff初日。荒竹の顔色は違った。「日本代表として絶対に負けられないし、やっぱり荒竹は強いなと思わせたい」と意気込んで臨んだ。試合は開始直後から、お互いの意地をぶつけ合うような展開。荒竹は攻撃の手数やディフェンスの差で、1、2Rともに判定ではリードを奪った。勝負の3R目は徐々に足が止まっていく相手に、左ストレートが入りポイントを重ねる。結果は5-0の判定勝ちで圧勝した。リベンジにも成功し、5月に開催される「男子世界選手権2023」の日本代表に内定した。

古藤(左)に雪辱を果たし、世界選手権へ

世界選手権は「勢いのある、強いボクシングを注目して見て欲しい」と語り、2年前の世界選手権ではメダルを逃しただけに「あれから国際大会の経験も積んで、2年前とは違う強くなった自分を見せられると思う」と話した。

初戦は日本時間の5月8日午後10時頃に迎える。

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