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特集:2023年 大学球界のドラフト候補たち

大阪産業大・松田啄磨 昨秋にプロの世界を意識し、春は7勝 いまは「毎試合が就活」

春に7勝を挙げ、一気に注目度が上がった大阪産業大のエース松田(すべて撮影・沢井史)

細身ながら腕を振り切り、最速149キロのストレートを投げ込む大阪産業大学の松田啄磨(4年、大冠)は、9月28日の甲南大学戦で4安打完封、この秋3勝目を挙げた。3年秋の阪神大学野球リーグ戦で初勝利を挙げ、今春のリーグ戦で7勝を積み上げた注目の長身右腕。秋も順調に白星を重ね、念願のプロ入りに向けてアピールを続けている。

【特集】2023年 大学球界のドラフト候補たち

六回までノーヒットピッチングを披露

甲南大戦は六回までノーヒットピッチングを続けた。「序盤からテンポが良くて、ストライク先行で投げられました。三振も取りたい場面で取れたことが良かったです。球は走っていましたし、ストレートを生かしながら変化球をうまく使えました」と振り返る。

七回に先頭打者の3番・安田康太郎(3年、東山)に左越え二塁打を浴びると、続く4番の藤本龍磨(2年、広陵)に中前安打を許し、無死一、三塁を招いた。だが、松田は冷静だった。「切り替えて『1人もかえさない』『0点で終える』という気持ちで投げました」。以降の打者を内野フライとゴロで打ち取り、ピンチを脱した。八回も2死走者なしから連打を許したが、後続を落ち着いて仕留めた。

「バッターに対して攻めていけました。リーグ戦の序盤は3ボールになることが多かったんです。(原因は)警戒しすぎていたところがあった。ダメでした。もっといけるという気持ちはあったが、うまくいかないことが多かったです」

甲南大学戦は六回までノーヒットに抑え「ストライク先行で投げられた」

春に7勝を挙げたことで、当然相手からは対策を練られる。だが、それは自身の中では織り込み済みだった。「春よりもレベルアップして、というのはずっと頭にありました。でも、どこかで『チームを勝たせないといけない』というプレッシャーもありました」

9月2日、開幕戦の大阪体育大学戦で先発したが、力みもあってリズムに乗れず7回4失点(自責3)で降板。チームは延長十回に7点を勝ち越されて敗れ、初戦を落としたことが、松田自身の心の中で尾を引いていた。

最近加わった武器、スライダーとスプリット

今春、真っすぐは自己最速の149キロをマークした。そこにカットボールや岸孝之投手(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)を参考にして習得したカーブを交えて勝負していた。さらに最近、スライダーとスプリットを武器にできるようになったという。

「もともと(スライダー、スプリットは)持っていた球種なんですけれど、使い物にならなかったんです。でも、『空振りを取れるボールが必要だ』と3年秋のリーグ戦で感じて、そこから練習しました。試行錯誤はありましたが、少しずついい形で投げられるようになりました。スライダーは春が終わってから投げられるようになって、スプリットはこの秋からやっと武器として使えるようになりました」

甲南大戦で奪った10個の三振は、すべて空振り。ストレートに加え、スプリットの切れ味も抜群だった。「自分のカウントに持っていけたら、何でも投げられるようになりました。学年が上がるにつれて、割り切ることができるようになりました。そこは成長したところだと思います」と胸を張った。

チームメートと整列すると、身長の高さが際立つ

大学で体重8kg増「投げる体力はついた」

大冠高校(大阪)時代は2年秋からエースとしてマウンドに立ったが、全国的にはそこまで知られた存在ではなかった。大産大へ進学したのも「まず大学で野球を続けられたらと思っていた。大学からプロというのは当初は夢みたいなものでした」。2年春のリーグ戦でデビューし、3年秋には5試合に登板した。

プロを意識し始めたのは、その3年の秋だった。「3年秋に『勝てるピッチャーになれた』という実感ができたので、プロに行きたいと思うようになりました」

高い志とともに、4年春には成績も一気に跳ね上がった。入学時に65kgだった体重は、大学でトレーニングに励み現在は73kgまでアップした。

3年秋に「勝てるピッチャーになれた」という感触をつかんだ

「投げる体力は大学でついたと思いますし、スタミナには自信があります。いずれは変化球のキレで勝負できるようなピッチャーになりたいです。この秋は、最後までできることをやるしかないと思っていますし、毎試合が『就活』という気持ちです。試合中は意識していませんが、良い結果を見てもらえたらと思っています」

甲南大戦は3球団のNPBスカウトが、松田のピッチングを視察していた。大学ラストシーズンは、楽しみながらも自分らしさを前面に出し、白星を積み重ねていくつもりだ。

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