陸上・駅伝

特集:第100回箱根駅伝

中央学院大・吉田礼志が箱根駅伝予選会で日本人2位 昨年と6月の「悔しさ」乗り越え

箱根駅伝予選会で日本人2位となった中央学院大の吉田(撮影・井上翔太)

第100回 東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月14日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園(21.0975km)

1位 大東文化大学  10時間33分39秒
2位 明治大学    10時間34分38秒
3位 帝京大学    10時間35分08秒
4位 日本体育大学  10時間36分42秒
5位 日本大学    10時間36分54秒
6位 立教大学    10時間37分06秒
7位 神奈川大学   10時間37分20秒
8位 国士舘大学   10時間37分21秒
9位 中央学院大学  10時間37分27秒
10位 東海大学    10時間37分58秒
11位 東京農業大学  10時間39分05秒
12位 駿河台大学   10時間39分40秒
13位 山梨学院大学  10時間39分47秒
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14位 東京国際大学 10時間39分50秒
15位 麗澤大学   10時間43分15秒
16位 拓殖大学   10時間43分16秒
17位 上武大学   10時間44分41秒
18位 専修大学   10時間44分51秒
19位 日本薬科大学 10時間48分34秒
20位 筑波大学   10時間49分07秒

10月14日の箱根駅伝予選会で、昨年は12位だったために本戦出場を逃した中央学院大学が9位となり、2年ぶりに箱根路への切符をつかんだ。6月の全日本大学駅伝関東地区選考会で失格と判定されてしまったエースの吉田礼志(3年、拓大紅陵)が、日本選手2位の力走。悔しさを晴らした。

失格となった全日本大学駅伝の関東地区選考会

6月に行われた全日本の関東地区選考会は、各校8人が2人4組に分かれて10000mを走り、合計タイムで争われた。1人のミスも許されない中、最終4組目を任された吉田は「6000mぐらいから熱中症気味になってて、ラスト1000mぐらいは自分でも記憶がないんです」と振り返る。残り1周となったところで、ふらつきながらその場に倒れ込んでしまった。何とか起き上がってラスト1周に向かったが、その途中でインフィールドの判定を受けてしまい失格に。10大会連続でつないできた全日本への出場が途切れてしまった。

関東地区選考会が終わった直後、川崎勇二監督からは「箱根予選会で日本人トップを取って見返そう」と言われた。8月にはようやく当時のレースをYouTubeで見返すことができるようになり「自分が失敗してしまったレースを見るのは気持ちがいいものではないですが、悔しい思いを忘れず、自分でモチベーションを上げてきました」。FISUワールドユニバーシティゲームズで国内の学生代表としてハーフマラソンを走った後は、今回の予選会だけに照準を絞ってきた。

全日本への出場を逃してからは、この箱根予選会に照準を絞ってきた(撮影・井上翔太)

先頭集団を走ることで、みんなを勢いづける

川崎監督から「箱根本戦のことを考えると、外国人選手についていかないと戦えない。悔いが残らないように走ってほしい」と送り出されたレース。吉田は「自分が先頭集団を走ることで、後ろのみんなを勢いづけられると思っていました」。日本選手で唯一、留学生たちで形成された先頭集団についていった。9km手前、東京国際大学のケニア人留学生リチャード・エティーリ(1年、シル)の転倒にも落ち着いて対応し、自分のペースを刻んだ。

このまま目標としていた「日本人トップ」をつかむかと思われたが、15km地点で後方の集団から東京農業大学のスーパールーキー・前田和摩(1年、報徳学園)が抜け出し、追いかけてきた。吉田は「18kmぐらいのところで一般の方か、誰かは分からないんですけど『後ろの前田君と10秒差』と聞いて、だいぶ詰まっているなぁと感じていました」。

余力が残っていたのは、前田の方だった。「足音が聞こえてきた」という20km手前で並ばれ、そこから一気に前を行かれた。最後は前田と17秒差となる1時間1分59秒でフィニッシュ。「日本人2番という順位は悔しいです」。チームが9位だったことについては、「トップ通過でないと本戦では戦えない。今のままじゃ『参加しただけ』という形になってしまうので、またみんなで箱根駅伝に向けて切り替えていきたい」と笑顔はなかった。

日本人2位の結果にも吉田に笑顔は見られなかった(撮影・吉田耕一郎)

チームで昨年の箱根予選会を見て、臨んだ今回

チームの戦略としては「仮に吉田がいなくても、予選会を突破する」ことに主眼を置いていたという。主将の飯塚達也(4年、東播磨)は、「タイムを計算するときも、礼志を抜いた11人中10人のタイムで通ろうというレースプランでした。若干守りの戦略ですけど、そこにプラスして礼志のタイムが加わればいい」。今回のレースに当てはめてみると、吉田を除いた11人のうち上位10人の合計タイムは、10時間40分55秒で15位相当。予選会の突破はかなわず、改めて吉田礼志という存在の大きさと、予選会のレベルの高さをうかがい知れる。

「『あれもやばい、これもやばい』と最悪のことを想定しちゃっていました。でも『通らないかもしれない』という不安やプレッシャーを考えると、ホッとした結果でもあります。ここで満足するわけじゃないですけど、やっと一つ山場が終わったなという感じです。個人の走りとして最低限の仕事はできましたが、タイムとしては全然満足していない。箱根本戦のことを考えると、もっと走らないとダメ」。レースを終えて結果を知った飯塚は、肩の荷が下りた様子を見せつつ、現状への課題も口にした。

主将の飯塚はチーム5番目のタイムに「最低限」と振り返った(撮影・井上翔太)

昨年の箱根予選会はレース後に2人の選手が救急車で搬送され、10位のボーダーだった国士舘大学とは2分以上の差をつけられた。チームは今年の予選会に臨むにあたり、当時の映像を出走するメンバー全員で5回ほど見てきたという。吉田は「飽きるまで見ました」。昨年と6月、二つの悔しさを乗り越えたチームが、箱根路に戻ってくる。

希望区間を尋ねると、吉田は「2区です。1年生で走ったときは区間18位で悔しい思いをしたので、今回は最低でも区間5番以内、1時間6分台をめざす」と言えば、飯塚は「任されたところをオールマイティーにこなしたい」。3年生以下は翌年以降に再び襷(たすき)をつなげるため、最上級生は集大成となる舞台に向けて、残りの期間を悔いなく過ごす。

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