ラグビー

堤ほの花、7人制女子ラグビーの発展へ「人としての価値を上げ、応援される選手に」 

日体大のチームに所属し、世界の舞台で戦う堤ほの花

女子ラグビーの育成と発展を目指し、2014年に創設された国内最高峰のシリーズ戦「太陽生命ウィメンズセブンズ」。ラグビーブームの後押しもあり、女子の競技人口も着実に増えている。今後さらなる盛り上がりが期待されている女子ラグビー界の未来を背負う、女子日本代表・堤ほの花が考える魅力的なチームとは。

7人制ラグビーの女子日本代表「サクラセブンズ」の堤は、常にトライを期待され、それに応えてきた。身長154cm。代表でも、所属チームの日本体育大学でもひときわ小柄な選手だが、試合のたびに見せる思い切りのいい走りが持ち味だ。決定力は抜群。仲間からの信頼は厚い。

いまは、2024年にフランスで開催される4年に1度の祭典の出場権を勝ち取ることが最大の目標だ。11月のアジア地区予選(大阪・ヨドコウ桜スタジアム)では強豪中国との熾烈(しれつ)な争いが予想される。9月のアジア大会決勝では、その中国に1点差で敗れた。「中国はすごくいいチームだった。ライバルとして食らいつき、追いつきたい。とにかく勝ちにこだわる」と気を引き締める。

過酷な練習でつかんだ「忍耐力」

堤が生まれ育ったのは、佐賀県西部の温泉地として知られる嬉野市。父は福岡大学ラグビー部出身で、地元のラグビースクールのコーチをやっていた。その父に連れられ、双子の弟と一緒に3歳からラグビースクールに通うようになったのは自然の流れだった。「その頃はスクールのお兄ちゃん、お姉ちゃんたちに遊んでもらっていた感じでした」。小学校に入るころから本格的に練習を始めた。

子供のころから足が速かった。中学のときは100m走などで活躍した。陸上の県大会でも上位の成績をおさめるほどの抜群の瞬発力を持っていた。高校は地元のラグビーの強豪・佐賀工業へ。「本当は他の高校にいくつもりだった。ラグビーをやっていた仲のいい同学年の女の子が、佐賀工でラグビーをやりたがっていたのですが、親が『女子一人、佐賀工でラグビーなんてダメ』と許してくれないというので、『なら私も一緒に』という感じで進路を決めたんです」

笑顔で佐賀工の練習を振り返る

入学してみると、練習は想像を絶する厳しさだった。「当たりの部分は男子が制御してくれたのですが、走る練習は男子と全部一緒。もう思い出したくないぐらいきつかった」

高校時代、試合は主に福岡の女子クラブチームに加わってやっていたが、合宿では男子に交じって一緒に戦った。体力的にも精神的にも過酷だったが、なんとか乗り越えた高校時代。「あの時代に戻りたいとは思わないですね。ただ、おかげで忍耐力はつきました」と苦笑いする。

太陽生命ウィメンズセブンズで衝撃的なデビュー

堤を大きく飛躍させたのは高校3年生のときに出場した、7人制ラグビー女子の国内最高峰の大会「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」だ。2014年から始まり、毎年、全国4会場を転戦する形で開催されてきたこの大会。獲得ポイントによって総合順位を決める海外でも例をみない個性的な大会だ。この舞台で多くの選手が力と技を高めた、日本の女子ラグビー発展に貢献してきた大会だ。

太陽生命ウィメンズセブンズシリーズにおける、堤のデビューは衝撃的だった。2015年。高校3年生のとき、ユース世代の選抜メンバーで組まれたチャレンジチームで出場した。大学生、社会人を相手に、俊足を生かし、走りに走った。準決勝では5トライを奪う活躍をした。

当時の映像では、最初のトライは自陣でパスを受けて1人、2人とステップでかわしてインゴールに。2本目は一度タックルを受けて倒されながらも味方につなぎ、さらにすぐに起き上がって、パスを受けてトライ。その後も長い距離を走りきるなどトライを連発。さすがに走りすぎたのか、最後のトライのあと、疲れきった表情で天を仰ぎ、苦笑いしていた。

練習中も頻繁にチームでコミュニケーションを取り合う

「みんながボールをぽんぽんと回してくれた。パスを受けたらトライとらなきゃ、という気持ちで走り、本当にのびのびと試合ができた。怖いもの知らずでした」と笑う。活躍が認められ、大会の最優秀選手賞(MVP)を獲得した。その後の大会でも、トライを積み重ねた。そして今年、大会通算100トライを達成。どの選手よりも早い大台到達だった。

同時に日体大も今年、躍進した。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ第1戦の埼玉・熊谷大会、第2戦の東京・秩父宮大会、第3戦の三重・鈴鹿大会で準優勝。最終戦の大阪・花園大会は3位で、総合2位。優勝した「ながとブルーエンジェルス」(山口)をはじめ、各チームが身体能力の高い外国選手を軸とする中、組織を重視した日体大の戦い方は異彩を放った。優勝こそできなかったが充実感を味わった。

「勝てなくて悔しかった部分もあったが、やりたいラグビーをやりきった結果で、すがすがしさもあった。来年は総合優勝をしたい」と目標を語る目は力強い。

ライバルを徹底的に分析し、考える

佐賀工では体と心の鍛錬をし、日体大では「考えること」が成長の糧となった。

対戦相手の攻撃パターン、防御のシステム、そして中心選手の特徴などを徹底的に調べ、対策を練り、実行する。「他チームが分析をどれだけやっているかはわかりませんが、日体大は徹底的にやります」

対戦しそうなチームの試合を動画で何度も見る。戦法について徹底的に意見を出し合う。「分析と対策、それが日体大のひとつの強みだと思います」。全員で考え抜く日体大のラグビーが大好きで、大学卒業後にディックソリューションエンジニアリングに就職したあとも日体大チームに在籍し、活動している。

女子ラグビーの知名度はまだまだ低い。堤は「まずは女子ラグビーを知ってもらうところから始めないと。よく女子のラグビーってあるの? なんて聞かれることがあります。少しずつでも広めていかないといけない。メディアに出たり、地域活動をしたりということも大切。人としての価値を上げ、応援される選手、チームにならないといけないと思います」という。

「女子ラグビーの魅力をもっとたくさんの人に知ってほしい」

堤は自身の将来について、「まだ決めていないですね。来秋、故郷の佐賀県で開催される国民スポーツ大会(国体から改称)までは選手として頑張ることは決めています。佐賀県にはお世話になり、その恩返しもありますので」。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでの活躍はもちろん、まずは一歩ずつ目標に向かう姿勢を語った。

小さな体にみなぎるエネルギー。7人制女子ラグビーの発展を目指し、これからも芝生の上を走り続ける。

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