日体大3年石井桜果、故郷静岡の「アザレア・セブン」で飛躍期す
女性と子どもに特化した総合型スポーツクラブが静岡で産声をあげた。その名も「アザレア・スポーツクラブ」。代表理事には昨年度までラグビーのヤマハ発動機ジュビロを指揮していた清宮克幸氏が就任。エコパスタジアムを拠点に、「静岡から女子スポーツを盛り上げていきたい」「2019年ラグビーワールドカップのレガシーを残したい」との思いを形にしていく。
まずは女子7人制ラグビー部門が立ち上がり、トライアウトで高校生3人を含む12選手が合格。3月22日から「アザレア・セブン」が始動した。15人制日本代表経験者の野毛伸子やサッカーからの転向組の羽入桃花(常葉大4年)らが、エコパスタジアム補助競技場で週5回のペースで練習を重ねている。
ヘッドコーチには静岡出身で、ワールドカップにも3度出場した元日本代表キャップ81のWTB小野澤宏時(ひろとき)氏(41)が就任。小野澤ヘッドコーチはいまも現役でプレーしていることから、「見せながら指導するコーチングがあってもいいかな」と、練習ではプレーを実演してみせ、一緒に汗を流していた。
「成熟したトップリーグの強豪チームみたい。声を出して積極的に練習してます」。そう手応えを感じていた小野澤ヘッドコーチが「ラグビーもうまいし元気だし、静岡出身で、地元に根ざしたクラブでどんどん活躍してほしい」と期待をかける選手がいる。日体大3年の石井桜果(ももか、東海大翔洋)だ。練習でも経験者として積極的に声を出し、ほかの選手とコミュニケーションを取る姿が印象的だった。
石井は「静岡に女子スポーツを応援してくれるクラブができて心強いし、安心して帰ってこられました。ポジティブに考えたらアザレア・セブンに入った方がいいと思いました。練習施設、環境もいいし、恵まれすぎていますね」と声を弾ませた。
幼いころから小学校までは空手に取り組み、中学時代はバレー部だった石井は、女子ラグビー部のある東海大翔洋高校でラグビーに出会った。小中学校の先輩に「マネージャー志望でもいいから見に来て」と誘われ、タックルのない「タグラグビー」をやったことで、楕円球を持って自由に走る楽しさを知り、まもなくラグビーにはまった。
強豪の日体大で公式戦に出られず
石井は身長161cm。15人制ではFB、7人制ではWTBでプレーし、チームのトライゲッターとして高校3年間をラグビーに捧げた。体重は高1で47kgだったが、フィジカルトレーニングを重ねて56kgまで増やした。もともとは大学で観光学部に入るために東海大系列の高校に進学したが、「高校時代よりもっと、ラグビーに時間をかけてもいいかもしれない」と、大学でも続けると決めた。
大学は日体大に進学する。しかし、女子ラグビー界でトップクラスの力を誇り、7人制、15人制の日本代表選手が何人も在籍しているチームでは、そのレベルの高さにすぐに挫折し、公式戦の出場機会を得られなかった。「尊敬の念も込めて、やっぱり日本一のレベルはすごかったです」
今年から心機一転、地元のアザレア・セブンで新しいチームメイトと石井が目指すのは、入替戦に出場して勝ち、来年は女子7人制ラグビーの国内最高峰のセブンズ大会「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」で戦うことだ。
チームが強くなるため、黒子に徹する
石井が自分自身に掲げている言葉は「みんながハッピー」だ。「みんながハッピーになるために自分がどうしたらいいか考えれば、楽しくなります。将来、アザレア・セブンがチーム全体で強くなって優勝したいです。チームとして日本代表を出すことが目標にありますけど、私じゃなくてもいい。ほかの選手の歯車になったり、土台をつくったりしたいです」と、まずはチームが強くなるため、黒子に徹する覚悟でいる。
アザレア・セブンは年間を通して選手を募集しているという。石井の将来の大きな目標はラグビーを静岡に根付かせることだ。「アザレア・セブンに後輩がどんどん増えていって、静岡は『サッカー王国』だけでなく、『ラグビー王国』と言われるくらいになったらいいですね」
プレイヤーとしての石井の個人の課題はフィットネスだという。もう少し体力がついてきたら、「WTBだけでなくSOとしてもプレーしたい」と先を見すえる。アザレア・セブンとして初の公式戦は5月11、12日の「リージョナルウィメンズセブンズ2019」の関東大会。上位に入れば入替戦への出場が決まる。
石井は来年、アザレア・セブンが「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」に昇格するために、そして地元静岡のラグビーの人気に火を付けるために、トライを積み重ねていく。