ラグビー

関東学院大の川崎清純は五輪もW杯も狙う!!

川崎は2学年上の兄とともに関東学院大でプレーしている(撮影・斉藤健仁)

「できればオリンピックもワールドカップも出てみたいです!!」。7人制と15人制ラグビーの両方で世界へのチャレンジをもくろむ大学1年生がいる。関東学院大のWTB(ウィング)/FB(フルバック)川崎清純(盛岡工業高)だ。

長身家系で育って191cmに

2月17~20日に東京都内で開催されたU20世代の強化合宿にあたる「TID(Talent IDentification)キャンプ」初日、川崎の姿はグラウンドにあった。招集されたのは明治大、早稲田大、東海大、天理大など、関東対抗戦Aグループ、関東リーグ戦1部、関西Aリーグに所属する強豪大学の選手がほとんどだった。

そのメンバーの中でも、関東リーグ戦の2部でプレーする19歳の動きが、別格の輝きを放っていた。FWを含めても最長身の191cmで、どこにいても一目で川崎とわかる。しかもソックスには日本代表のサクラのエンブレムが光っていた。

長身191cmの川崎(中央)はどこにいてもすぐ分かる(撮影・斉藤健仁)

高校時代に花園に出た経験がなく、強豪大学でプレーしているわけでもない川崎の名は、まだ広く知られてはいない。しかし、昨年9月に1年生ながらセブンズ日本代表として試合に出た逸材だ。ラグビーを始めたばかりの高校1年からセブンズアカデミーに招集され、高3の初めには、フランスでの国際大会に15人制のU18日本代表として参加した。

「ひいおじいちゃんがロシア人なので、家族みんな背が高いんです」と言う川崎は、小さいころから陸上や野球に取り組んだ。とくに野球をしていた中学時代は、岩手では有名なピッチャーで、県大会で何度も優勝し、東北大会にも出場。そのため大谷翔平の母校である花巻東や盛岡大付などの強豪高校からも入学の誘いがあったという。

デカくて速い最強バックス

しかし中3のとき、右ひじの靱帯を損傷する大けがを負う。それが転機となった。体を動かすことが大好きだった川崎は「1年間もじっとしてるのは我慢できなかった」と、野球をあきらめた。兄の龍清(現在は関東学院大3年)が盛岡工業高校でラグビーをしていたことや、かつて新日鐵釜石でも活躍した、同校の小笠原常雄監督(当時)から熱心な誘いがあったことで、高校からラグビーへ転向すると決めた。

「ラグビーは、試合中は相手とけんかするみたいに熱くなりますけど、試合後は友だちみたいになるところがよかったです」と、すぐにラグビーの虜となった。高1当時は身長188cm、体重75kgというほっそりした体格だったため、まずは毎日、夕食に3合ほどごはんを食べつつ、筋力トレーニングに精を出した。

陸上競技の経験もあって、長身ながら50mは6.0秒と快足。ロングキックも武器になりそうだったため、BK(バックス)となった。ただ、コンタクトスポーツは初めてで、タックルもしたことがなかったため、小笠原監督は1年の秋には3カ月ほどLO(ロック)を経験させ、強いコンタクトの仕方や体の使い方を学ばせた。大学に入ってからもトレーニングを続け、身長191cm、体重103kgという堂々たる体を作り上げた。

陸上競技で鍛えた快足も川崎の武器の一つ(撮影・斉藤健仁)

高校日本代表に呼ばれたこともあったが、けがのために辞退した。それでも川崎のポテンシャルは高い評価を受け、強豪大学からも声がかかった。だが、「兄と一緒の方が親も安心するし、コーチ陣がしっかりしていたので」と関東学院大に進学した。ラグビー部の榎本淳平ヘッドコーチ、立川剛士BKコーチはともにトップリーグや日本代表でCTB(センター)やFBで活躍した名選手で、彼らの指導を受けることができるのは大きかった。

15人制でも日本代表目指す

そして昨年9月、大学1年ながらアジアシリーズの香港大会で、セブンズ日本代表としてデビューした。大学のチームでも1年からFBとして活躍し、関東リーグ戦2部で優勝。1部との入れ替え戦には負けたが、リーグのベストフィフティーンにも選出された。7人制でも15人制でも高校時代よりも高いレベルを経験。「フィジカルの違いを感じられました。またプレッシャーの中でどうプレーするかということや、スペースの使い方を学べました」と、充実したラグビー生活を送っている。

実は川崎は、U20の「TIDキャンプ」に1日しか参加できなかった。翌日からのU25男子セブンズ日本代表の強化合宿に参加するため、沖縄へ飛んだ。2月末から3月上旬は7人制ラグビーのワールドシリーズと同時に開催されている国際大会「ラスベガス・インターナショナル」に出場するため、アメリカのラスベガスに飛んだ。

ラグビーボールを軽々とわしづかみ(撮影・斉藤健仁)

大学生の世界大会であるユニバーシアードは7月上旬にイタリアで、U20の2部にあたる世界大会も7月中旬から下旬にかけてブラジルで開催される。川崎は7人制、15人制のどちらかにだけに絞ることはせず、「まずはセブンズでU25日本代表を目指して、15人制でも代表に呼ばれるよう頑張りたいです」と力強く語った。

野球を断念したことについては「まったく後悔していません」と言いきる。まだラグビー歴は4年だが、7人制も15人制もそれぞれの楽しさを感じており、オリンピックとワールドカップ両方の出場を念頭に、川崎はしばらくラグビー界の“二刀流”を貫いていく。

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