トライアスロン

立命館大・岩井悠二 スローガン「3R」を胸に、戦略と執念でかなえた4年越し日本一

インカレで団体優勝した立命館大の岩井悠二(中央)、小田陸人(右)、若竹葵礼(左)(すべて撮影・立命スポーツ編集局)

9月3日に香川県観音寺市で行われた日本学生トライアスロン選手権(インカレ)男子で、団体優勝を飾った立命館大学トライアスロン部。チームトップの4位でゴールしたのが岩井悠二(4年、浜松日体)だ。昨年度、主将としてチームを引っ張ってきた岩井は、今回のインカレでもチームを牽引(けんいん)し、大学ラストイヤーに入学時からの目標だったインカレ団体優勝を成し遂げた。

大学で仲間と出会い「このチームで日本一を目指したい」

水泳の盛んな街として知られる静岡県浜松市で生まれ育った岩井は、小学1年から水泳を習い始め、3年からは本格的に選手として競技に取り組んだ。転機となったのは6年の時。たまたまスイミングクラブのチームメートの父親にトライアスロン元日本代表の疋田浩気さんがいたことから、岩井は水泳と並行してトライアスロンにも取り組むことになった。

中学・高校では水泳部に所属しつつ、トライアスロンの練習にも励み、高校3年時の全国高校トライアスロン選手権では4位に入った。一方、水泳では実力があまり伸ばせず、大学ではトライアスロンに取り組みたいと考えるようになった。全国大会終了後の9月から志望校をトライアスロン部のある大学にしぼって受験勉強を始め、立命館に合格。トライアスロン一筋の大学生活が始まった。

高校までは水泳と並行してトライアスロンに取り組んだ

大学の環境は高校までとは全く異なっていた。

高校まで水泳と並行してトライアスロンの練習に励んでいた岩井は本格的なバイク(自転車)やランの練習をしていなかったが、大学ではそれらの練習をすることができた。また、高校まで岩井が所属していたトライアスロンのチームは競技のマイナーさもあったのか、少人数で入れ替わりが激しかったが、大学では固定された仲間と切磋琢磨(せっさたくま)することができた。

岩井の中に「このチームで日本一を目指したい」という強い思いが芽生えるようになった。

主将に就任「一人で突っ走り」チームはバラバラに

大学2年時に日本U19トライアスロン選手権で自身過去最高の3位となり、インカレでも個人で7位に入った岩井は、3年になると主将に就任し、日本一を目指すチームをまとめることになった。

しかし、「一人で突っ走りがち」だった岩井は、個々の選手の能力向上にフォーカスしすぎるあまり、モチベーションの部分まで深くアプローチすることができなかった。結果、チームはバラバラになってしまい、団体日本一を狙ったインカレでは前年の2位から順位を下げ、3位という結果に終わってしまった。

バイクの本格的な練習を始めたのは大学生になってから

今年度、岩井は主将を退いた。下級生を中心とした新チームは、昨年度の反省から「3R」というスローガンを掲げた。立命館の頭文字である「R」にかけ、Respect(尊敬)、Reaction(反応)、Reliability(信頼)の3つの頭文字からなっている。一人ひとりがしっかり反応して行動し、他人に尊敬と感謝の念を持つことで信頼が生まれることを意図したスローガンだ。

このスローガンを胸に練習に励むうち、部員たちが思いやりを持つようになり、分裂しがちだったチームに「全員で日本一をつかみ取ろう」という気持ちが芽生え始めた。

出場14人それぞれに役割 全員で勝ち取った団体優勝

立命館はインカレの予選となる6月の西日本インカレで、2位に7分34秒の差をつけて団体戦を圧勝。個人でも14人がインカレ本戦へと駒を進めるという圧倒的な成績を残した。

そして迎えた本番、立命館は14人の出場選手それぞれに役割を与えた。例えば、スイムで先行してバイクやランでもその位置を保つ選手、ランの好調な選手を得意のバイクで引っ張る選手、スイムで先行したのち状況に応じて第一集団のバイクのペースを下げる役割を担う選手までいた。まさに「チームとして戦う」という姿勢で臨んだのだ。

インカレでは立命館の強みであるランで順位を上げた

全員の頑張りで優勝をつかみ取るべく、立命館の敷いた万全の策はかなり思い通りにいった。岩井ら主力選手はスイムを第2集団で終え、バイクで先頭を追ってできるだけ前でランを始めるという戦略で臨んだ。立命館の強みであるラン勝負になれば勝てると岩井らは踏んでいた。

バイク終了時に11人が上位50人に入っていると分かった時、岩井は勝利を確信した。「それまでかけた時間や思いが通じた」と岩井は語る。まさに立命館の戦略と執念がかなえた日本一だった。

4年間掲げてきた「日本一」という目標を最後にかなえた岩井。入学時は団体入賞もおぼつかなかった立命館を日本一のチームまで育てることができた。岩井は後輩たちに「日本一までやっと来られた。できれば日本一を続けてほしいし、『日本一のチーム』という自覚をもって、これからも感謝の気持ちをもって取り組んでほしい」と期待の声を寄せた。

来年以降も日本一の座を守り、日本一にふさわしい応援されるチームになれるか。今後の立命館大学トライアスロン部にぜひ注目してほしい。

in Additionあわせて読みたい