アメフト

甲南大学WR福田竜飛 出ずっぱりをチャンスととらえ、リーディングレシーバーも狙う

甲南大WR福田竜飛のプレーには「何が何でも」の思いがにじむ(すべて撮影・北川直樹)

関西学生アメリカンフットボールリーグ1部 第5節

10月28日@神戸・王子スタジアム
甲南大学(4敗1分け) 17-17 近畿大学(4敗1分け)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は10月28、29日に第5節の4試合があった。甲南大学レッドギャングは同じ4敗の近畿大学と初勝利をかけて戦った。10-0で迎えた第4クオーター(Q)にリードを守れず、17-17の引き分けで終わった。この試合のメンバーが39人と1部最少の選手数で戦う甲南大には、第5節を終えてキャッチ回数がリーグトップのWRがいる。DBを兼任する福田竜飛(りゅうひ、3年、箕面自由学園)だ。

リードして焦った近大戦

近大戦の終了直後、福田は「リードするのに慣れてないんで、10-0になって焦ったところがありました。勝てる、勝てると思ってたけど、浮ついてましたね。(初勝利が)逃げていきました」。試合を優位に進めながらの引き分けを悔しがった。

試合は残り5分を切ってから大きく動いた。まず近大が1TDを返して10-7。さらに近大は甲南大が狙ったFG(フィールドゴール)のキックをブロック。そのボールを拾い上げたDL中山功乙(1年、近大附)が60ydのリターンTD。10-14と逆転した。

残りは2分7秒。甲南も初勝利への執念を見せる。フィールド中央付近での第2ダウン残り10yd、QB竹原隆晟(4年、宝塚東)が左へ逃げながらWR森川立望(2年、関西大倉)へパス。これを捕った森川がエンドゾーンへ駆け込み、TD。17-14と再び試合をひっくり返した。

沸きに沸く王子スタジアム。残りは1分38秒。近大はあきらめない。FG隊形からのトリックプレーも決めて前進したが、逆転TDには至らず、RBを兼ねるキッカー島田隼輔(3年、近大附)が同点の32ydFGを蹴り込んで熱戦が終わった。

短いパスを捕ってからの走りにかけている

第4節を終えた時点で24回と、福田は回数で争うレシービング部門でリーグトップに立っていた。そして近大戦でも4回のキャッチで42ydのゲイン。合計28回とし、2位の京都大学・上田大希(3年、須磨学園)と近大・梅本知宜(4年、大阪学芸)に9回の差をつけている。WRだけでなくDBでも出場し、キッキングゲームも出ている。それでも福田のプレーからは常に「何が何でも」という思いが伝わってくる。

「レシーバーとしてはボールへの執念と球際の強さには自信があります。O(オフェンス)D(ディフェンス)K(キッキング)全部出るのはもう、この人数でやるって決めてるんで。少人数でやってるのを言い訳にせずに、全部出てる分、どこでもビッグプレーを狙える。もっと流れを変えられる選手になりたい」と、福田はアツく語った。

ディフェンスでは必死にボールキャリアを追う

両肩をけがした経験から、トレーニングに注力

大阪府箕面市で生まれ育った。小学校のとき、千里ファイティングビーでフットボールを始めた。中学時代もこのチームでプレーを続け、2学年上のWRだった山下宗馬さん(そうま、日大~パナソニック)に大きな影響を受けた。足が速くて、キャッチもすごく、たびたびビッグプレーを起こした。それだけでなく、普段も周りの人を引き寄せるような力を持っていた。その人間性に引き寄せられるように、山下さんの後を追って箕面自由学園高校に進学した。

1年生のときからWRで試合に出た。クリスマスボウル進出をかけた関西地区決勝でスペシャルプレーの際に反則してしまったのを、福田はよく覚えている。3年生の秋は大阪大会でけがをして、高校最後のシーズンは不完全燃焼に終わった。甲南大への進学を決めたのは、「最初に声をかけてくださって、自分が必要とされているのを感じた」からだという。いまも山下さんは目標とする選手であり、高校の1学年上だった関西学院大学のWR鈴木崇与(たかとも)も「ライバル」と意識する存在だ。

民放のアメフト番組で自分がTDしたプレーが採り上げられ、「めっちゃうれしかった」

両肩の手術を経て、大学1年の終盤から試合に出場。チームは1部復帰を果たした。昨年は「1部でも勝負できる」という自信を持っていたが、「関学戦はビックリしました。これまでとはスピード感が違った」と福田。昨秋は14回のキャッチで152ydゲインし、TDは一つだった。この秋はリーグ戦2試合を残して昨年の2倍のキャッチ数。「チームが勝負どころで自分を信じてプレーコールを出してくれる。そのボールを捕るのは絶対に譲れない部分と思ってます」。チームからの信頼に応え、勝ちに導きたい。だからこそ彼のプレーからは「何が何でも」の思いが伝わってくるのだ。

両肩を負傷した経験から、トレーニングには力を入れている。トレーニング関係の動画を見て、いいと思うものは採り入れてきた。いまはチームでのウェートが終わったあと、同学年のRB下田宗太(滝川二)とともにプロアスリート栗原嵩さんの推奨するトレーニングを見よう見まねでやっている。「栗原さんがアメフトのときにつけてたのも81番だったし、会ってみたいです」

次も初勝利へ向かって走る

フィールドと観客席が一体となるビッグプレーを

フットボールの面白さについてどう感じているか尋ねると、福田は苦笑いで言った。「まさに今日の試合ですよね。最後の1プレーまで分からない。ビッグプレーが起こるたび、フィールドと観客席が一体になる。FGをブロックされたのは悔しかったけど、会場が盛り上がってるのを見て燃えました」。次は甲南の81番のビッグプレーでスタンドを沸かせたい。

昨秋のシーズンが終わり、当時の3年生の数人が退部した。いまの4年生は選手6人、スタッフ1人だけ。「人数が少ないながら、チームのことを考えて行動してくれる」と福田は信頼を寄せる。一方で福田ら3年生は選手15人、スタッフ13人と多い。「あと2試合とも勝てれば、来年はもっと勝てるという雰囲気がある。勝ってリーディングもとります」。福田が笑顔で宣言した。

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