和田正人さんの伊勢路の記憶 「一番の失敗レース」 その後の糧に
俳優の和田正人さん(44)は、日大の選手として全日本大学駅伝(朝日新聞社など主催)を走った経験がある。11月5日の第55回大会を前に、大会の思い出や今大会で注目している選手などについて聞いた。
――初めて伊勢路を走ったのは2年生のときでした。
「任されたのは2区でした。1区の選手が出遅れたのですが、僕がさらにブレーキになっちゃったんです。区間17位でした。単独走に近い形だったのですが、うまく対応できませんでした」
「それまでは先輩にくっついて練習していたんです。これからは前を引っ張っていくような、自分でレースをつくる練習をやらないといけないなと思いました。大学時代で一番の失敗レースでしたが、あれがきっかけで選手としての基盤ができたような気がします。2年生のときの全日本が自分を大きく成長させてくれました」
――3年のときも全日本で走りました。
「あの年はアンカーを任された出雲で区間5位になったり、1万メートルで28分台の自己ベストを出したり。ようやく自分が大学陸上界の上位レベルまで来られたと感じていました」
「ところが、『よし、これからだ』というところで、練習で追い込み過ぎてしまいました。全日本では疲労がピークに達していました。6区を走って区間4位。前年よりは全然いい成績なんですけど、自分の中ではまったく納得できる走りではなかったですね」
――学生駅伝の魅力をどこに感じていますか。
「駅伝では、順位を上げるためにレースの流れを変える力や、プレッシャーの中でどう戦うかという精神的な部分もすごく重要になってきます。選手の心理状態に注目していきたいです」
――今大会で気になる選手はいますか。
「東農大の1年生、前田和摩選手はすごいですね。全日本の関東地区選考会では日本選手トップの成績でした。そのとき調子が良かっただけの可能性もありましたが、その後の箱根駅伝の予選会でも日本選手トップだった。集団から抜け出して後半追い上げるという展開は1年生の成せる技じゃないですよね。序盤はチームのことを考え集団で走り、その後、いけると思って集団から飛び出した。『レースIQ』が本当に高いと感じました。終盤になっても、力強い腕の振りを見たら感動したというか、久々に本物が出てきたなと思いましたね」
「その前田選手と、順大のルーキー・吉岡大翔選手が一緒の区間で走るのを見てみたいですね。吉岡選手は出雲駅伝の1区では区間11位と悔しい結果になりましたが、全日本では失敗しないと思いますよ。2人の同学年対決があるとしたら1区か2区でしょうか。すごく楽しみにしています」
――このたび、大会を中継するテレビ朝日系列の応援ナビゲーターに就任されました。
「とにかく全日本大学駅伝の魅力、おもしろさをみなさんに伝えたい。1万メートルのタイムとか、専門的なことはわからなくても大丈夫です。注目しているチームや選手を追っかけるだけでもいい。学生たちが日々努力して挑んでいる、人生をかけて走っているというこの熱いものをなんとか伝えたいし、感じ取っていただきたいです」
(聞き手・辻隆徳)=朝日新聞デジタル2023年10月30日掲載