陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

大東文化大が全日本大学駅伝で18年ぶりシード権 真名子監督「100点をあげたい」

18年ぶりにシード権を獲得した大東文化大学。アンカーの菊地俊介はガッツポーズでゴールした(撮影・内田光)

第55回全日本大学駅伝

11月5日@愛知・熱田神宮西門前〜三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
1位 駒澤大学   5時間09分00秒
2位 青山学院大学 5時間12分34秒
3位 國學院大學  5時間12分39秒
4位 中央大学   5時間12分49秒
5位 城西大学   5時間17分23秒
6位 創価大学   5時間18分21秒
7位 大東文化大学 5時間19分21秒
8位 東京国際大学 5時間20分05秒
ーーーーーーーーーー
9位 東海大学   5時間21分54秒
10位 早稲田大学  5時間22分36秒

11月5日に行われた第55回全日本大学駅伝で、大東文化大学が5時間19分21秒で7位に入り、18年ぶりのシード権を獲得した。就任2年目の真名子圭監督は、「学生には100点をあげたいです」と讃(たた)えた。大学は今年創立100周年を迎え、箱根駅伝も第100回の記念大会。アニバーサリーイヤーに復活を目指す古豪が、この勢いのまま箱根路へと突き進む。

選考会での誓い「もうここには戻らない」

「今年の全日本ではシード権獲得だけを狙います」

6月に開催された全日本大学駅伝関東地区選考会で、2大会連続44回目となる本戦出場を決めた真名子監督は力強く宣言した。「何番でもいいからシードを取る。年度の始めから『もうここには戻らない』と学生にも伝えてきました」

10月中旬の箱根駅伝予選会で2年連続トップ通過し、迎えた全日本。真名子監督は選手たちに、6位から8位が見える空間で走るように指導。選手たちは想定通りのレースを展開した。

第1中継所で襷をつなぐ1区の佐竹勇樹(左)と2区の西川千青(右、撮影・内田光)

エース区間で西川千青が踏ん張る

前回大会の1区は、ピーター・ワンジル(3年、仙台育英)が区間新記録の区間賞で制した。今大会は4年生の佐竹勇樹(4年、比叡山)が当日変更で起用された。

4km過ぎで青山学院大学の若林宏樹(3年、洛南)が集団を抜け出したが、残り1kmで佐竹は他の選手と一緒にスパート。トップの駒澤大学と7秒差の5位で第1中継所に駆け込んだ。

スタートダッシュに成功した大東大は、各チームのエースが競う2区で西川千青(3年、九州国際大付)が踏ん張った。

西川は、7月に10000mで23年ぶりの大東大新記録となる28分25秒33をマークするなど今シーズンに入って急成長。箱根駅伝予選会でもチームトップの1時間2分19秒(全体15位、日本人5位)でゴールし、真名子監督は殊勲者として西川の名前を挙げた。全日本でも主力としての役割を果たし、トップと1分28秒差の9位で、3区の久保田徹(4年、聖望学園)につないだ。

久保田は箱根駅伝予選会で西川に続き、1時間2分23秒(全体16位、日本人6位)と好走していた。レースでは後半で少し失速したものの、流れを途切れさせず、10位で4区の入濵輝大(2年、瓊浦)に襷(たすき)を渡した。

3区の久保田徹(左)から襷を受け取った4区の入濵輝大(撮影・浅野有美)

「正直一番不安だった」と真名子監督が明かしたのが入だった。箱根駅伝予選会前から足のつけ根を痛めていたという。全日本前は少し休ませていたが、「本番はお前がいなきゃ、シードを取れないから走ってくれ」と伝えた。その思いに応えるかのように、入は区間8位の力走で順位を1つ上げた。

鍵を握った中盤、シード圏内に浮上

鍵を握ったのは5、6区の中盤区間だった。

5区の西代雄豪(3年、桶川)は、箱根駅伝予選会の時は直前に体調を崩し万全な状態ではなかった。その分、全日本に向けては上り調子だった。区間6位の好走でシード圏内の8位に押し上げた。

6区には当日変更で主力のピーター・ワンジル(3年、仙台育英)を配置した。箱根駅伝予選会は右大腿(だいたい)部を痛めて途中棄権。全日本での出走が懸念されたが、異常はなかったという。レースは1km地点から設定したペース通りに走った。前半で早稲田大学・菅野雄太(3年、西武文理)と創価大学・山下蓮(2年、鎮西学院)を引き離し、さらに後半で東京国際大学・生田琉海(4年、徳島科学技術)をかわし、区間2位の6位で第6中継所に入った。

終盤2区間も安定していた。気温20度超えの暑さでも崩れず、7区の大谷章紘(3年、水城)、8区の菊地駿介(4年、仙台育英)が区間8位、区間9位とそれぞれ健闘。総合7位でフィニッシュした菊地は、両手でガッツポーズしながら、チームメートと喜びを爆発させた。

区間順位は2区を除けばすべて1桁順位で襷をつなぎ、2005年大会以来18年ぶりのシード権を獲得した。「全区間しっかり頑張ってくれた。シードを取ろうと言って、成し遂げてくれた。学生には100点をあげたいです」。真名子監督は満面の笑みだった。

7区・大谷章紘(右)から8区・菊地駿介への襷リレー(撮影・佐伯航平)

学生の頑張りで目標達成“早送り”

前回大会14位から今大会7位とジャンプアップした大東大。箱根駅伝予選会から全日本までは3週間しかなく調整が難しいが、チームは昨年の反省を生かし、夏合宿の練習メニューや大会への意識を変えた。

「昨年は全日本までもたなかった。土台がなかった。今年はしっかり全日本までもつように夏まで作り上げてきたのが良かった」と、真名子監督は振り返る。

練習の質も量も上げ、シード獲得を意識して常に“一歩先”を求めた。「『今日の練習がよかった』ではなく、『もっとこうしておけばもっといい練習になった』というようにやってきた。シードを取りたいという欲を、どこの大学よりも持っていた」。季節外れの暑さを想定した練習も奏功した。

年度の始めに掲げた目標を達成し、有言実行。母校の再建を託され、監督就任2年目で全日本のシード獲得という“ハイスピード”に、「ここまで早いとは思っていなかったです。学生の頑張りで“早送り”してくれた。すごくありがたいです」と目を細めた。

次のステップは箱根路でのシード獲得だ。前半の2、3区で戦える選手がそろえばシード権が射程内に入ると指揮官は見る。

大東大は第44回大会から出場し、過去4度の優勝を誇る。大学は2023年9月20日に創立100周年を迎えたばかりで、箱根駅伝の100回大会も重なる。プレッシャーも大きくなるが期待は十分だ。

アニバーサリーイヤーに古豪復活への勢いは止まらない。

in Additionあわせて読みたい