フィギュアスケート

関西大学・鈴木なつ、3年ぶりの全日本選手権 満席の会場で完璧な演技を

3年ぶりに全日本選手権に出場する関西大学の鈴木なつ(提供・関大スポーツ編集局)

毎年熱戦が繰り広げられる全日本フィギュアスケート選手権。熾烈(しれつ)な予選を勝ち抜いて出場権を手にしたのが関西大学2年の鈴木なつ(飛鳥未来きずな)だ。オリンピック2大会連続金メダルの羽生結弦さんと同じ仙台市立七北田中学校出身。高校時代は山梨県を拠点とし、大学進学を機に関西へ。着々と力をつけてつかみとった3年ぶりの大舞台で完璧な演技を目指す。

羽生結弦さんと同じ中学校出身

フィギュアスケートほど、大きな会場を独り占めできる競技はないのではないだろうか。会場にいる観客全員の視線が、30m×60mのリンクで滑る選手に注がれる。その舞台を見て、フィギュアスケートを始める人も多い。鈴木もその1人だ。

鈴木とフィギュアスケートの出会いは、幼稚園に通っていた頃にさかのぼる。自宅のテレビでフィギュアスケートを見る機会が多く、たくさんの観客の中で、大きなリンクを1人で滑っている姿がカッコよく見え、両親に、「フィギュアスケートをやりたい」とお願いした。

当時は茨城県に住んでおり、リンクまでも遠かったことから、スケートは家族で遊びに行く程度だった。小学生になる頃に父の転勤で仙台市に引っ越すことになり、そこでようやくスケートを習うチャンスに巡り合えた。

最初はスケート教室に通い、ある程度技術を身に付け、小学校3年生の時から選手として競技を始めることになった。特に苦労したという記憶もなく、級の取得も順調に進み、ノービス最後の年に野辺山合宿に参加し、全日本ノービス選手権にも出場できた。

オリンピック2大会連続金メダルの羽生結弦さんと同じ仙台市立七北田中学校に進学し、そのシーズンにジュニアに上がった。ジャンプを得意とし、プログラムでも難易度の高いジャンプを構成に入れていたが、演技構成点が思うように伸びず、それが原因で結果がついてこないことも多々あった。当時、振り付けをしてくれていた岩本英嗣コーチの元でスケーティングのレッスンを受けるため山梨県のリンクにも通っていたが、なかなか思うような結果が出ず苦しい思いをしていた。

羽生結弦さんと同じ仙台市立七北田中出身。2019年全国中学校大会で総合4位に入った(撮影・浅野有美)

山梨を拠点へ コロナ禍で迎えた初の全日本

スケートに専念する環境を整えるため通信制の高校を選択した。家で勉強をしないといけない分、スケジュール管理が大変ではあったが、通信制だからこそ、思い切って岩本コーチがいる山梨県に拠点を移してみようと思った。仙台で指導してくれたコーチと合同で合宿するなど、コーチ同士の交流があったこともあり、鈴木のスケートを頑張りたい気持ちを応援してくれ、快く送り出してくれた。

山梨県にはリンクが1つあるが、7月から翌3月の期間限定で営業をしているシーズンリンクだった。シーズン以外は長野県軽井沢町のリンクまで車で片道2時間半かけて通わなければならなかったが、母親も鈴木がやりたいことに取り組めるように毎日車で送迎をしてくれた。その甲斐(かい)もあってか、拠点を移したシーズンに全日本ジュニア選手権で7位となり、憧れの場所であった全日本選手権に推薦出場が決まった。

憧れの場所で滑れるという期待があったが、新型コロナウイルス感染症の対策のため、観客の人数が制限されている上に声援も禁止されていたため、思い描いていた舞台とは印象が違った。「いつか全ての制限がなくなり、満員の観客で滑ったらきっと気持ちいいのだろうな」という思いを胸に、再びこの舞台に帰ってくることを誓った。

関西大学に入り着々と力を伸ばしている鈴木(左、本人提供)

大学でスポーツ心理学など学ぶ

大学はスケートと学業の両立ができることを考え、構内にスケートリンクを所有する関西大学に進学した。

人間健康学部に所属し、スポーツ心理学など競技に生かせる授業を選択している。学部の特性上、スポーツに打ち込んでいる学生が多く、それも鈴木にとって刺激になっている。学部がある堺キャンパスと、スケートリンクがある高槻キャンパスは離れているが、希望すればいつでもリンクで練習できる環境ということもあり、学業との両立もうまくいっている。強いて言うならば、いつでも滑れる環境だからこそ調整が難しく、昨シーズンは苦労した。

本田武史コーチに師事し、プログラムは安藤美姫コーチに振り付けてもらうことになった。今まではプログラムを覚えることや踊ることに苦手意識があったが、年齢が近いこともあってか、色々話をしながら一緒にプログラムを作り上げており、苦手だった部分も克服しつつある。

2023年度大阪府民スポーツ大会で優勝した鈴木(右、本人提供)

質の高い演技で全日本への切符をつかむ

今シーズンのプログラムはショートプログラム(SP)、フリーともに最後の要素はステップとなっており、見せ場となるように練習を積んできた。また、フリーの「オペラ座の怪人」では、前半はファントムの力強さ、後半はクリスティーヌの洗練された動きを表現する演技の部分も見てほしいという。

昨シーズンの反省を踏まえ練習量も調整し、結果もついてくるようになった。

西日本選手権では、SPは全ての要素に加点が付く完璧な演技を見せ、フリーでも抜けてしまうジャンプはあったものの、成功した要素では加点が付く質の高い演技で総合4位となり、3年ぶりに全日本選手権への切符を手にした。

今年の全日本選手権は、初出場した2020年と同じ長野市のリンクだ。前回は観客の人数制限があったが、今回は満席の会場で滑ることになる。以前から「全日本の会場は特別感がある」と耳にしており、その会場で滑ることをとても楽しみにしている。

「2曲とも完璧な演技ができること」。これが今回の鈴木の目標だ。得意のジャンプを武器に、会場中の視線を浴びて演技をする鈴木の姿を見られるのが楽しみだ。

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