亡き師の教えを体現した第4Q 涙の仙台大明成エースが語った恩
(24日、全国高校バスケットボール選手権 ウインターカップ男子1回戦 福岡第一76―65仙台大明成)
25点差で迎えた第4クオーター、仙台大明成が息を吹き返した。
メンバーの3年生全4人がコートに立つと、動きが変わる。主将の村忠俊(3年)が相手のこぼしたボールに飛び込めば、ゴール下のウィリアムスショーン莉音(マリオン)(同)は相手と競ってリバウンドを奪う。徹底してルーズボールを拾い、34点を返して11点差まで詰めた。
「リバウンド、ルーズボール、泥臭いところを大事にしなさい」
反撃を支えた姿勢は、6月に亡くなった恩師の教えそのものだった。
2015年大会でチームを3連覇に導き、NBAレーカーズで活躍する八村塁らを育てた佐藤久夫・前監督。「気持ちがふさがっていては、どんなに技術があっても勝てない」と選手に説いた。
この日は福岡第一の強烈なプレッシャーにシュートを遮られ、第2Qはわずか1得点。ハーフタイムで「このままじゃ終われないぞ」と声が飛びかった。教えを受けてきた3年生を中心に追い上げた。
最後は届かず、試合終了と同時に選手は涙に暮れた。
チーム最多得点のウィリアムスは試合後、「結果で恩返しできなかったけど、プレーで少しでもできていたらと思う」と声を震わせた。コートにいない時間も支えてくれた佐藤監督は、自分を変えてくれた恩人だった。
身長200センチの恵まれた体格を生かし、今年のチームの得点源となってきた。だが、インターハイに向けた予選を控えた春、腰を痛めて練習にも参加できない時期があった。
「自分が情けなくて、下を向いてしまう時だった」
そんな気持ちを察したかのように、体調不良でチームを離れる佐藤監督からの着信があった。
「お前が顔を下げていたら、絶対にチームは良くなっていかない」と、周囲を思う大切さをずっと教え続けてくれた。体調を崩しながらも、気にかけてくれた恩師の思いに応えようと、ウィリアムスは振る舞いを変えた。
「エースとして自分が声を出して、気持ちを前面に出して頑張ろうと思えた。自分を変えるきっかけだった」
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卒業後は国内の大学でバスケットを続ける。
「泥臭いところを頑張って、大学でも日本一を狙います。将来は塁さんのような日本を代表するプレーヤーになって、日本のバスケットをもっと発展させる一人になりたい」
選手たちが、恩師の思いを体現し続ける。
(平田瑛美)=朝日新聞デジタル2023年12月24日掲載