「比べられてつらかった」 札幌山の手・谷口憂花が素直になれた車中
(27日、全国高校バスケットボール選手権 ウインターカップ女子準決勝 岐阜女○76―46●札幌山の手)
前年準優勝の札幌山の手が、準決勝で敗れた。留学生のいないチームでの4強入りは、2年連続で札幌山の手のみ。最高身長は176センチながら、内外を駆け回って展開する攻撃で勝ち上がってきた。ただ、強固なディフェンスを誇る岐阜女に対しては、シュートの決定率に欠け、涙をのんだ。
チームは積極的に3点シュートをねらう外からの攻撃が得意だ。その中で、粘り強くゴール下からも得点を稼いできたのが、7番の谷口憂花(ういか)(3年)だった。前年決勝では先発出場し、絶対的エースだった森岡ほのか(現・日立ハイテク)に次ぐ、21得点をたたき出した。
谷口の振るまいは、森岡と重なるものがある。試合でも取材対応でもたびたび笑顔を見せ、ゲームを振り返る問答にはよどみなく言葉をつむぐ。
苦戦しながら突破した2回戦の後、そんな谷口の口調が重くなったことがあった。
「前の3年生は目標としてきた先輩方なんですけど……。比べられちゃうのは、仕方ない」
「比べられて、すごくつらい思いもたくさんしてきた1年だった」
力のある選手が集まった一学年上が卒業し、上島正光監督は「センター不在の代」と得点力不足を表現した。チーム内外からの期待含みの比較に、谷口は自身を責めたことも。最後は「自分がやらなきゃいけない」と自らを鼓舞した。
いつも1人で解決できたわけではない。笑顔を保てなくなりそうなとき、見抜いて動いてくれたのは両親だった。
学校からの帰り道、利用駅まで迎えに来てくれる父と母は、気晴らしにいろんなところによく連れ出してくれた。
どんなところに行ったかは、よく覚えていない。谷口にとっては、車中での時間が大切だった。
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車に乗ると、無理に元気に振る舞おうとして、なんでもないことを話し続けてしまう。
そんなときは決まって、母に見抜かれた。
「なんかあった?」
涙ながらに、抱えた苦しさをはき出す。そんな時間だった。
「1番練習しているんだし、できるんだから。自信を持ってやりな」
両親にそう言われると、顔を上げることができた。
準決勝のあと、そんな両親に伝えたいことを問うと、「決勝につれて行けなくて、ごめんね」と口にした。ただ、誇れる3位だ。会場にかけつけた両親に、表彰台に上がる姿を届けた。
(平田瑛美)=朝日新聞デジタル2023年12月27日掲載