立命館大・竹内翔汰 主将として進化する自分にチームも重ね「ドラフト1位でプロへ」
創部101年目の今年、片山正之・新監督を迎え、新たなスタートを切った立命館大学。「圧倒的王者」というスローガンのもと、日本一を目指すチームの主将には竹内翔汰(4年、創志学園)が選ばれた。「下馬評をひっくり返すくらいの実力はついた。あとはそれを見せるだけ」。かなえるべき夢の先へ、日々進化を止めない姿でチームを引っ張っていく。
現実を突きつけられ、一度は諦めたプロの夢
身長173cmと体は決して大きくない。そこから広角へと放たれる弾道はアーチストそのものである。昨年度はベストナインや関西オールスター5リーグ対抗戦の最優秀選手に選ばれ、その名を関西にとどろかせた。そして、主将として迎える大学ラストイヤー。竹内は不動の主軸として、今年も天才的なバッティングセンスを見せつけていく。
竹内が野球を始めたのは四つ上の兄の影響だ。通常は6歳からしか入れないチームに特別に5歳で入団し、本格的に練習に取り組むようになった。当時から、打球を飛ばすことに関して光るものがあり、小学生の頃から2打席連続で場外ホームランを放つなど、天性の打撃センスを存分に発揮していた。小6時点で身長は140cmの前半。体の大きい選手に負けないため、「身長なんて関係ない」という思いでプレーしていたと語る。しかし、中学に入るとどうしても体格の差を痛感した。自分より圧倒的に体が大きかったり、飛ばしたりする選手を目の当たりにし「あ、こういう選手たちがプロに行くんやろな」と現実を突きつけられた。小学生時代から抱いていた「プロになる」という夢は遠い存在となってしまった。
コロナ禍で甲子園への道が断たれ、決意
現在の竹内は「ドラフト1位でプロの道へ」と、事あるごとに決意を口にする。一度は諦めてしまった「プロになる」という夢を再び強く意識し始めたのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、甲子園への道が断たれてしまった高校3年の頃だ。「甲子園でプレーするためにその高校を選んだと言っても過言ではないくらい、甲子園に懸ける思いというのは強かったです」
そう語るほどに待ち望んでいた「聖地」でのプレー。それをコロナ禍によって断たれてしまい、竹内は大きなショックを受けてしまった。何とかしてあの舞台に立ちたい。甲子園のような場所でプレーするためにはどうすればいいのか。悩む竹内を思い起こさせたのが、一度は諦めた「プロになる」という夢だった。高校時代はまったく考えていなかったというプロの世界。コロナ禍による夏の選手権大会中止という予想だにしない出来事が、竹内を突き動かした。
主将になったことで生まれた心境の変化
再び抱いた夢をつかむため、竹内は立命館大学への進学を決めた。「さらに成長するためには、自分で成長して、はい上がりたいと思っていました」。そこで「自主性」を重んじる野球部を選んだ。入学後はすぐに結果を残し、下級生の頃からチームの主力となった。しかし竹内自身は当時を「正直、下級生の頃はチームがどうこうとかは思っていなく、自分が成長するためにはこうするべきだという段階を踏んでいるだけでした。なので、あまり下級生の頃はチームを引っ張るとかは考えていなかったです。自分がプロになるためにはどうすればよいのかというのをずっと考えていました」と率直に語ってくれた。
その後も成長を実感しながら、着実に実績を積み重ねた。チームの主将となったことで、竹内には下級生だった頃とは異なる心境の変化があった。「やはりプロに行くためには、全国に出場しなければならないです。最短の近道だと思うので。そのために自分を中心にチームを動かす。僕がプロに行くため、そして全国に行くために、チームを成長させるという心境の変化です」。この言葉こそ、竹内が主将としてチームを引っ張っていく姿を端的に表している。
今日より、明日、まだまだ成長できる
大学ラストイヤーが始まった。竹内はオープン戦から結果を残した。関東の強豪大学と対戦し、ドラフト候補に名前が挙がるような相手ピッチャー陣から、3戦連続の特大ホームラン。「関東の名前の売れているようなピッチャーから、しっかり結果を残せたというのは自信にもなります」。ドラフト1位を目指す竹内の名は、徐々に全国へと広がり始めている。
迎えた春季リーグの初戦。チームは関西学院大学に延長サヨナラ負けを喫し、悔しい幕開けとなったが、竹内は2安打2打点と好調ぶりを見せた。今季の立命館大はフルスイングが魅力の岩間倫太朗(2年、立命館宇治)や、今季からショートを守り強肩が持ち味の川端一正(2年、初芝橋本)など、下級生の活躍が著しい。一方、リーグ戦経験の少ない選手が多く、それが弱点になってしまっているのが現状だ。
竹内はチームの戦いぶりについて「経験の少ない子がいるので、1試合1試合成長できるっていうのが、このチームの強みです」と語る。今日より、明日、まだまだ成長できる。今のチームは、竹内が日々進化している姿と重なる。圧倒的王者になるため、そして一度は諦めたプロになるという夢をかなえるため、竹内翔汰はこれからも成長を止めない。