アメフト

岡山大学WR武田史明 キャッチで盛り上がる瞬間をつくり出し、3部に上げて引退を

岡山大の9番をつけた武田史明は攻守両面で奮闘した(すべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの第36回瀬戸大橋ドリームボウルが5月3日、岡山市のシティライトスタジアムであり、中四国リーグ1部の広島大学が関西学生リーグ4部の岡山大学を31-7で下した。岡山大の唯一のタッチダウンとなるパスを捕ったのは、WR(ワイドレシーバー)とDB(ディフェンスバック)を兼任する武田史明(ふみあき、4年、兵庫県立伊川谷北)だった。

とっておきのプレーでTD

1982年に関西1部で戦ったこともある岡山大バジャーズだが、2023年シーズンは3部Aブロックで5戦全敗。入れ替え戦にも敗れて、今秋のリーグ戦は最も下の4部で戦う。相手の広島大ラクーンズは中四国1部で常に優勝争いに絡んでおり、劣勢が予想された。

試合前のセレモニーから岡山大キャプテンの内藤久稔(中央)と副キャプテンの武田

どちらも2年生以上のメンバーで、岡山大が15人、広島大が20人と少なく、1クオーター(Q)10分で争われた。広大は最初のオフェンスシリーズをタッチダウン(TD)につなげて7点を先取。3度目のシリーズでもTD。14-0で前半を終えた。後半最初のシリーズでもフィールドゴール(FG)による3点を追加。ここから岡山大が反撃に出た。

左投げのQB木村悟(3年、京都府立洛北)がWR勝尾哲音(あきと、3年、東京都市大附)へのパスを決めてゴール前35ydへ。第4ダウン残り9ydとなり、岡山大はパント隊形。ここからスペシャルプレーのランを繰り出して攻撃権を更新。ゴール前22ydから短いパスを決めて第2ダウン残り4ydだ。

バジャーズは、ここでとっておきのプレーを繰り出した。アンバランスのセットにして、OLの右タックル(T)の位置に武田がセット。早いテンポでプレーを始めたこともあり、広大は武田が有資格捕球者と気づいていない。まっすぐ縦に走ると、完全なフリーになれた。木村からのパスを捕ったのがゴール前2yd。タックルされながらエンドゾーンに倒れ込み、TDだ。ようやく訪れた初得点に、バジャーズの面々は喜びつくした。ただ、その後は地力の違いを見せつけられ、追加点を奪うことなく敗れた。

第3クオーター、パスを捕った武田がエンドゾーンに飛び込んでタッチダウン。遠くでOLの千葉鉄平が歓喜のジャンプ

関西での試合には貸し切りバスで

武田は試合後、TDのプレーについてこう話した。「あれだけは試合前から『どこかで決めるよ』と言われてたプレーでした。かなり練習してたので、本番で決まるかなと思ってドキドキしたんですけど。成功させられてよかったです」。ディフェンスでも相手に食らいつくようなタックルを繰り返した。「今日は結構動けたっすね」と武田が笑った。

武田は相手のエースRBを追いかけ、足首をつかんで倒した

神戸市内で生まれ育った。兵庫県立伊川谷北高校までは野球。高校では外野だったがレギュラーにはなれず、代打での出場が多かった。最後の夏は兵庫大会が中止になり、独自大会の1回戦で滝川二にコールド負け。岡山大に入ると、兄の友だちがアメフト部の4年生にいて、そのつながりで勧誘を受け、入った。「先輩たちが優しかったので、いつの間にか入ってた感じでした」

最初からWRとDBでプレーしてきて、2年生のころにアメフトの面白さが分かるようになった。岡山大は関西でのゲームに貸し切りバスで出かける。行きはみなスマホで対戦相手の映像を見たり、自分自身のイメージ映像を見たりしているが、帰りはみんな疲れ果てて寝ているそうだ。

昨秋のシーズンは4年生の選手がいなかった。すべての試合に負けて4部に転落した。今年の4年生は副キャプテンの武田とキャプテンの内藤久稔(島根県立松江北)の2人だ。「今年は4部で全部勝って、入れ替え戦も勝って3部に上げて、僕は引退します」と武田は笑う。

オフェンス時にハドルを組むバジャーズ。秋の3部昇格にかける

新入生が16人も入ってくれた

勧誘に力を入れた成果もあり、新入生は16人が入部を決めてくれた。大阪府立池田高でのアメフト経験者2人も含まれている。「秋までに成長してもらって、上級生の負担が少しでも減れば、もっといいプレーができると思います」

高校まではまったく興味もなかったアメフト。だから兵庫県に住んでいても関西学院大学が強いことも知らなかった。だけどいま、武田は岡山でアメフトに没頭している。「レシーバーで出てて、キャッチすると『ワーッ』と盛り上がる。あの瞬間がいい」

最後の秋シーズンは盛り上がりを何度もつくり出し、3部昇格で終えるつもりだ。

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