立命館大・市河太一 攻守でボールに関わるハードワーカー、目立ちにくい部分も活躍を
「父がサッカーに出会わせてくれて、すべてを教えてくれました」。サッカーの原点についてこう語るのは、昨季からボランチとして立命館大学を支える市河太一(3年、ファジアーノ岡山U-18)だ。
世界と戦ったファジアーノ岡山の下部組織時代
中学・高校時代にJ2ファジアーノ岡山の下部組織でプレーした市河は当時、全国にとどまらず、世界を相手にも戦っていた。ジュニアユース時代にU-14Jリーグ選抜のメンバーとして、東京国際ユース(U-14)サッカー大会で世界各国の名門チームと対戦し、得点も挙げた。大会を通して市河は「やっぱり世界は広いなと感じました(笑)。ありきたりな言葉かもしれませんが、この言葉が一番しっくりきます。いい経験ができたと思っています」。世界と対戦したことで、自分には通用する部分が多くあることを感じたという。
高校3年時には背番号10を背負い、日本クラブユースサッカー選手権(U-18)にチームを導いた。全試合でフル出場を果たし、ゴールを奪うなど活躍を見せたが、チームは惜しくもグループステージで敗退。個人の未熟さを実感し「とにかく差を感じた」と悔しさをにじませた。同時に次のステージでもサッカーを続けることを決意。進路を考える際、関西学生サッカーリーグの試合を観戦し、立命館大のサッカーに惹(ひ)かれたと市河は言う。「家族や高校時代に親身になってご指導くださった素晴らしい先生たちのおかげで、立命館に進学できた」と振り返り、スポーツ推薦ではなくAO入試で合格。新たなサッカー人生への道を開いた。
けがで体のケアを見直し、2年目に飛躍
大学では、ルーキーイヤーから活躍することを思い描いていたが、1年目は年間を通してトップチームに関わることができなかった。入学直後にいきなり疲労骨折。復帰後は着実に下のカテゴリーでプレーを続けたが、シーズン終了直前で再び同じ箇所を疲労骨折してしまった。ピッチに立てたのは、わずか4カ月間ほど。けがに悩まされ、思うようなシーズンを送れなかったが、市河は今、このシーズンが重要だったと振り返る。
「B2(下のカテゴリー)で過ごせた時間は、間違いなく今の自分に影響しています。素晴らしい先輩や同期たちに囲まれ、人としてもサッカー選手としても、大きく成長させてもらいました」と語り、飛躍となった翌シーズンにつなげた。
再び苦しいシーズンを過ごさないよう、体のケアを見直すようになり、2回生になった市河はトップチームに関わり続けた。リーグ開幕戦でデビューを飾ると、チームのために走る運動量と試合を俯瞰(ふかん)する能力が評価され、22試合中18試合に出場。「関西学生サッカーリーグのレベルの高さを肌で感じることができ、その中でどのように自分が貢献できるか考えました。上回生には、技術があって頭の良い選手がたくさんいたので、自分は相手の攻撃の芽を摘み、自分のところから攻撃を展開するスタイルが確立できました」。先輩たちとともにプレーしたことが、大きな収穫となった。
総理大臣杯やインカレ出場権も
3回生となった今シーズン。市河は前年の経験を生かし、チームを引っ張ることが期待されている。今季の目標は得点を重ねることだ。昨季から見る者を魅了する守備を発揮しながら、攻撃にも積極的に顔を出していくいわゆる「Box to Box」と呼ばれるスタイルで、さまざまなシーンでボールに関わることを意識している。「幸いにも良いお手本となる選手がチームにいるので、一つでも多くのものを吸収していきたい」と言うように、今季は個人として大切な1年となってくるだろう。
またチームとしては1部「残留」を一つの目標とした。「ここ数年は残留争いをしているので、昨年よりも良い成績を残せるようにしたいです。自分自身は来年もあるので、弾みがつくようなシーズンにしたいです」とリーグへの意気込みを語るとともに、「総理大臣杯やインカレの出場権も獲得したいです」と全国への意識も忘れてはいない。
オフに走り込みとトレーニングを重ね、体も大きく
残り2年間の大学サッカー生活で目指す姿は「勝利に貢献できる選手」だという。「ゴールやアシストの数字も欲しいですが、デュエルやボール奪取などの目立ちにくい部分でチームに効いていると思われる選手になりたい」と明らかにした。実際、チームメートからも「個人の技術も高く、1人でボールを刈り取り、ドリブルで相手をはがすことができるプレーヤー」という高い評価を得ている。
また、最大の魅力である攻守のハードワークに磨きをかけるため、シーズンオフの冬から走り込みやトレーニングを重ねて体を一回りも二回りも大きくした。4月の京都学生サッカー選手権大会では攻守の要として活躍し、激戦必至のリーグ戦や関西選手権に向け、準備は整ってきている。
チームスローガン「再起」のためにも市河の強靱(きょうじん)さは、確実に必要なピースとなる。20歳の姿には、これからも目が離せない。