甲南大・青山華依 左ひざ大けがからの完全復活に向けて「この場に慣れる」ための連戦
6月14日~16日にあった2024日本学生陸上競技個人選手権で、2年前に女子100mを11秒47の大会記録で優勝した甲南大学の青山華依(4年、大阪)が登場。100mは1日で3本を走りきり、翌日の200mにも出場した。昨シーズン前の練習中に負った、左ひざの大けがからの完全復活をめざしている。
織田記念以来となる、1日に3本のレース
15日の女子100m。予選を組3着の11秒98(追い風1.1m)で通過し、約4時間後の準決勝は組5着の11秒79(追い風3.4m)だった。各組2着以内と3位以下のタイム上位2人が進出する決勝へは進めず。決勝進出者を除いたタイムの上位8人で争われるB決勝に進んだ。4月29日の織田幹雄記念でも1日に3本走ったが、「あのときの3本目は結構バテてしまった」と青山。学生個人では、後半の伸びを欠いたものの11秒98(追い風0.8m)。3本とも11秒台でまとめた。
大学1年のときに東京オリンピックで女子4×100mリレーのメンバーに選ばれ、第1走者を務めた。その年9月の日本インカレでは100mで3位。優勝したのはオリンピックでバトンを渡した当時福岡大学の兒玉芽生(現・ミズノ)だった。大学2年目のシーズン序盤は絶好調。先述の通り、学生個人を大会記録で制したほか、5月の東京選手権でも優勝。静岡国際では200mで自己ベストの23秒60を出した。ただ夏を過ぎてからは、思うように調子が上がらず、日本インカレ決勝は左ひざにテーピングを巻いて出場し、11秒78(追い風0.4m)で4位だった。
大けがに見舞われたのは、3年目のシーズンを迎える前だった。練習中に左ひざが崩れるような感覚を覚え、前十字靱帯(じんたい)の断裂と半月板損傷が発覚した。手術を受け2週間ほど患部を固定。その後は、リハビリとして左ひざの曲げ伸ばしを繰り返した。退院した際にようやく体重をかけて歩けるようになったが、違和感は残った。長時間歩くことができず、大学には車で通っていた時期も1カ月間ほどあったという。
「前に比べたら感覚が全然違う」
その間、後輩たちはめきめきと成長していった。昨年の日本インカレでは藏重みう(2年、中京大中京)と岡根和奏(3年、龍谷大平安)、奥野由萌(3年、彦根翔西館)の3人が女子100mで表彰台を独占。4×100mリレーでも優勝を果たした。青山は「うれしい半面、やっぱり置いていかれているので、焦りの気持ちもありました。悔しいというよりは、遅れずについていきたいという気持ちの方が強いです」と率直に語る。
自身の復帰レースは11月のエコパトラックゲームズ。100mと4×100mリレーに出場し、復活へ確かな一歩を刻んだ。
大けがを経て、再び走れるようになってからというのは、けがをする前の状態に戻っている感覚なのか。それともまた新たな自分を発見しているのか。こちらの疑問を本人に尋ねると、こう答えてくれた。「前に比べたら感覚が全然違うというか、自分の思い通りの動きができない感じなんです。リハビリのときから左足をかばって歩いていたことがあって、歩き方も自分の中ではいまだに何かが違う。この1年で、今の足に合う走り方を探していかないといけないです」
今シーズンに入ってからは、数多くのレースに出場している。3本走った織田記念をはじめ、5月5日の水戸招待(100mを2本)、同12日の木南道孝記念(100mを2本)、同24日の関西インカレ(200m予選のみ)、6月2日の布施スプリント(100mを2本)。グランプリシリーズや大学対校戦のみならず、記録会でも走っているといい、今回の学生個人は11試合目ぐらいだという。「とにかくこの場に慣れるということが大事だと思っているので、結構連戦をしています」
レースを経るたび「やることがいっぱいある」
レースを経るたびに「やることがいっぱいある」という思いを抱いている。「後半の走りがまだまだ。それはこれから後半に向けた練習に取り組むことで、加速やスピードの維持ができるんじゃないかと思います。体力がなければ足も動かない。体も絞れていない。そこを改善しない限り、もがいていても意味はないので、結果を受け止めつつ、一つずつ課題をクリアできたらと思います」
けがをしたときは、「今までずっと走ってきたから『一度休憩』考えていました」。ただ、いざ復帰してみると「1年間の差はなかなか埋まらない」と感じている。大学ラストイヤーの今シーズン、めざしているのはハイレベルなチーム内での争いを勝ち抜いて、日本インカレに出場すること。連戦が終われば、夏場はじっくり練習を積める。勝負の秋、完全復活する姿を待ちたい。