陸上・駅伝

東洋大学・柳田大輝 世界選手権に個人種目で出場するため「10秒00を切りたい」

織田記念で男子100mを制した東洋大の柳田(すべて撮影・金居達朗)

第57回織田幹雄記念国際陸上競技大会

4月29日@エディオンスタジアム広島
男子100m(+0.5m)
1位 柳田大輝(東洋大2年)10秒25
2位 楊俊瀚(台湾)10秒25
3位 東田旺洋(関彰商事)10秒26
4位 竹田一平(スズキ)10秒27
5位 桐生祥秀(日本生命)10秒29
6位 平野翔大(新潟アルビレックスRC)10秒31
7位 守祐陽(大東文化大2年)10秒65
8位 本郷汰樹(オノテック)10秒69

4月29日にエディオンスタジアム広島で行われた陸上の織田記念大会男子100mを制したのは、東洋大学の柳田大輝(2年、東農大二)だった。接戦となり、電光掲示版で1着を確認すると、手を数回たたいて喜びを爆発させた。報道陣からグランプリシリーズ初優勝を聞かされると、「よかったです。うれしいです」と笑顔を見せた。

1000分の2秒差を制した織田記念

この日の天候は雨。気温も16度ほどと、コンディションは決して良くなかった。その中で予選2組目を走り、10秒32(追い風0.4m)の組2着で決勝に進んだ。予選を終えた柳田は「もうちょっと動けるかなと思ったんですけど……。逆に1本走ったので、次はもうちょっと動いてくれるかなと思います。タイムは出にくいコンディションだと思うので、しっかり自分のレースをして優勝したい」と語っていた。

そして約2時間後の決勝は8レーンに入った。6レーンにはこの大会が100mの国内復帰戦となり、9秒98の自己ベストを持つ桐生祥秀(日本生命)がいた。柳田は抜群のスタートを切った。リアクションタイムは0.145秒で、8人中2番目に速かった。中盤にかけて伸びていったが、最後は柳田よりも速い自己ベスト10秒12を持つ楊俊瀚(台湾)に迫られた。2人のフィニッシュタイムはともに10秒25(追い風0.5m)で並んだが、1000分の2秒差で柳田に軍配が上がった。

柳田は「最近の中ではいいスタートが切れた。中盤から上げて周りが見えなかったので、勝てるかなと思ったんですけど、逆に後半ばたついてしまった。なんとか逃げ切れてよかった」と振り返ったうえで、「100mでいっぱいいっぱいになってしまった。最後の30~20mをしっかり走り切れたら、もっと走りもタイムも良くなると思う」と話した。

降りしきる雨の中、2位に1000分の2秒上回り優勝を飾った

ウェートトレーニングで筋力アップ

将来の日本短距離界を背負っていくであろう19歳は、順調に成長曲線を描いている。高校3年で出場した2021年の日本選手権で、高校歴代2位の10秒22をマーク。東京オリンピックでは男子400mリレーの補欠選手に選ばれた。その後、東洋大学に進学。22年8月には自己ベストとなる10秒15を記録し、その年に開催された世界選手権男子400mリレーに出場した。

今季は単独で渡米し、シーズンイン。海外での武者修行を振り返り、「レース自体はあんまり納得いってないが、非常にいい経験になった」と語る。レベルの高い大会に出場して得た経験はもちろんのこと、言葉があまり通じない地で試行錯誤しながら練習や生活をしたことで、「新しい発見があった」という。

そして、今季にかけて取り組んできたのが筋力アップだ。今季はウェートトレーニングのクリーンで、昨季の50kgと同じくらいの数値を70kgでも出せるようになった。体重も約2kg増加。春先の沖縄合宿では筋力と走りの感覚が合わなかったというが、最近になって手応えをつかんでいる。柳田は「スタートからしっかり力を発揮できるようになったのと、単純に最大スピードが上がってきたのかなと思う」と話す。

筋力アップの効果を実感するシーズンになっている

「10秒0台では今は喜べない」

今季の最大の目標は、世界選手権に個人種目で出場すること。100mの参加標準記録は10秒00。決して簡単に超えられる記録ではない。ただ、今の柳田は自信にあふれている。「自己ベストは調子が合えばすぐに出る状況だと思っている。10秒0台では今は喜べないので。10秒00を切りたいし、ゆくゆくはぽんぽん出せるようになっていきたい」と意気込む。

織田記念は桐生の100m国内復帰線や山縣亮太(セイコー)の1年7カ月ぶりとなる復帰レースなどとして注目された。柳田は言う。「100mの個人代表になるためには桐生さんだけではなくて、ほかの今までトップの方たちと勝負して勝っていかないといけない」。まだ19歳。可能性は無限大だ。

in Additionあわせて読みたい