陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

東洋大・柳田大輝が10秒19の自己新で関東インカレV、在学中に“桐生祥秀超え”を

柳田は男子1部100mで予選から決勝まで、圧倒的な力を見せた(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 

5月19~22日@国立競技場(東京)
柳田大輝(東洋大1年)
男子1部100m 優勝 10秒19(-0.2)
男子1部4×100mリレー 3位 39秒37

東洋大学のスーパールーキー柳田大輝(東農大二)は関東インカレ初日の5月19日、男子1部100m予選を10秒29(+0.0)で走り終えた直後、「結構良かったので、(明日の決勝は)気温と風にもよるけど、出せる状況ではあるのかな」とオレゴン世界陸上(米国)の参加標準記録(10秒05)を狙う発言をした。迎えた決勝、柳田は10秒19(-0.2)の自己ベストをマークして優勝を飾った。初のタイトルに喜びを見せたが、「(10秒)0台を出せると感じていたので、やっぱり悔しいです」と漏らした。

予選・準決勝で10秒20台をマーク

柳田は5月8日、同じ国立競技場で開催されたセイコーゴールデングランプリ陸上2022東京に出場し、10秒27(+0.1)で4位(日本人2位)だった。東京オリンピックの舞台にもなった国立競技場に相性の良さを感じ、疲労を抜くとともにスピード強化にも取り組み、関東インカレを迎えた。

初日の5月19日は100m予選と4×100mリレー予選に出場。翌20日は100m準決勝で10秒29(+0.9)をマークし、約3時間後の決勝に備えた。予選と準決勝ではともにスタートで力まずに加速ができ、決勝に向けて手応えを感じられたという。決勝でも柳田はスタートから頭一つ抜け出すとグングン加速し、そのまま1位でゴール。10秒19の記録を見た瞬間は悔しそうな表情を見せたが、観客席からの拍手に笑顔で応えた。

2日間で5レース目となった4×100mリレー決勝、柳田(右端)は粘りの走りで3位につけた

その約3時間後の4×100mリレー決勝ではアンカーを任された。法政大学の松浦謙聖(4年、常総学院)に追い上げられたが、柳田も最後まで粘り、3位でゴールした。

3度目の日本選手権は決勝で勝負

柳田は100m決勝を「ちょっと欲が出たのかな」と振り返った。予選や準決勝に比べ、スタートでは力んで前に出る形になったという。「まだ力が足りないなというよりは、(10秒)0台はそんな簡単には出ないのかな」と目指す記録の壁を実感した。ただ、昨シーズンの10秒20台は昨年6月の日本選手権でマークした10秒22(高校記録)だけだったが、今シーズンはコンスタントに10秒20台を出せていることに、自身の成長を感じている。その要因として、シーズン前の冬季練習を経てケガなくシーズンインできたことが大きいと柳田は言う。

冬季練習を経てケガなくシーズンを走れていることが、好記録の要因だと明かす(中央が柳田)

6月9日には日本選手権が開幕する。柳田は過去2回、決勝を経験している。高校生の時は実業団の選手とのレースも「イケイケで怖いもの知らずにいけた」と言うが、大学生になった今は「最近もそんなに怖いもの知らずかもだけど、勝たないといけないという意識になっている」と言い、決勝での走りにフォーカスしている。世界陸上内定をつかむには10秒05を出した上で3位入賞が条件となるが、柳田は優勝を狙っている。

「桐生さんよりも早く出しました」と言えるように

昨年の東京オリンピックでは男子4×100mリレーで代表補欠の柳田だが、陸上から一歩出ると、この春に新生活を始めたばかりの新入生だ。高校時代も寮生活ではあったが、東洋大の寮では昼食は出ないため、自炊もしなければいけない。4月16日の学生個人選手権の時は「得意料理はチャーハン」と言っていたが、「最近はサボり気味なので頑張ります」と苦笑い。甘いものが食べたい時は、自分でホットケーキを作ることもあるそうだ。

柳田は桐生の姿に、「自分も中長期的に(筋力トレーニングを)気にかけていきたい」と話した

大学4年間の目標は100mで9秒台を出すこと。東洋大OBの桐生祥秀(日本生命)とは同じ環境で練習をすることもあり、柳田にとってもいつかは超えたい存在だ。そんな桐生は4年生の日本インカレで9秒98と日本人初の9秒台をマークしている。「桐生さんに『桐生さんよりも早く出しました』と言ってみたいです」とはにかみながら明かす18歳の快進撃に期待したい。

in Additionあわせて読みたい