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東洋大・柳田大輝、日本選手権3位にも満足なし 布勢スプリントで狙う10秒05超え

柳田は6月9日に開幕した日本選手権で世界選手権の参加標準記録(10秒05)の突破を狙っていた(撮影・すべて藤原伸雄)

日本選手権男子100m決勝で3位に入った東洋大学の柳田大輝(1年、東農大二)は、6月26日の布勢スプリントで7月15日開幕予定のオレゴン世界選手権の参加標準記録(10秒05)突破を狙う。今季は序盤から好調をキープ。柳田は世界選手権の代表だけを目指し、退路を断ってここまできた。

東洋大・柳田大輝が10秒19の自己新で関東インカレV、在学中に“桐生祥秀超え”を

学生代表よりも日本代表に

大学1年目の柳田は、4月の日本学生個人選手権でシーズンインした。予選ではいきなり10秒28(+2.0)をマークし、「今季はいける」と手応えをつかむ。1日3本のスケジュールだった決勝は10秒30(+1.6)とタイムを落としたが、ルーキーながら初戦で全国タイトルを獲得。「矛盾しているようだけど、ゆっくり速く動くことを心がけています」。その表情には自信が満ちていた。

この大会の優勝で、夏に予定されていた学生の世界大会であるワールドユニバーシティーゲームズ(延期)の代表に選ばれることは確実だった。だが、あえて選考を辞退した。直後に控える世界選手権を見据えてのことだ。当時はシーズンも始まったばかり。ライバルたちの状態もはっきりとせず、確実に代表に選ばれるとは言えなかったが、より上のレベルでの勝負を志した。

3度目の日本選手権決勝でサニブラウンを意識

迎えた日本選手権。6月9日の予選は「緊張した」とまさかの出遅れ。出場選手のうち最も遅い0.198秒のリアクションタイムでスタートした。前半で大きく遅れてしまったが、ここからが真骨頂。体を起こした中盤からぐいぐい追い上げ、2着で通過した。

自己ベストを出した準決勝で柳田は(右)は隣を確認する余裕もあった

そして、同日の準決勝。今季1番の走りを見せた。「スタートに集中して、いつもどおり出るだけ」。予選の反省を踏まえ、抜群のスタートを切った。中盤以降も他を寄せ付けず、10秒16(±0)の自己ベスト。1着で堂々とゴールした。ゴール前では横を見る余裕もあり、「タイムも狙おうと思っていたけど、気づいたら見ていた。余力を残した方がいいかなと」

過去2回の日本選手権も、高校生ながら決勝に進んでいた。だが、順位はいずれも7位。高校生としては十分すぎる成績だが、本人は納得していなかった。「準決勝だけの男と言われたくない」。それが、決勝へ向けての意気込みだった。

翌10日の決勝は4レーン。隣の5レーンにはサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が立った。「決勝のレースは想定していて、途中からハキーム選手が来るのは分かっていた」。レースは予想通り、スタートでサニブラウンに先行するも、60m付近で追い抜かれた。そこから必死に耐え、10秒19(+1.1)の3着でフィニッシュ。3年連続の決勝の舞台で、初の表彰台に立った。

決勝で柳田(右)はサニブラウンの隣となり、強さを見せつけられた

ただ、レース後の柳田の表情は明るくなかった。「1番複雑。中途半端に終わってしまった。準決勝よりタイムを落としているので」。ウォーミングアップの段階では、参加標準記録の10秒05も十分に狙える自信があったという。この順位で喜べないことも、この1年の進化の証しだ。

学生のうちに先輩の桐生を超える

日本選手権で個人の代表内定とはならなかったが、4×100mリレーのメンバーに選ばれる可能性は高い。昨夏の東京オリンピックでは、補欠の立場であの決勝のバトンミスを見守った。次は自分があの場所で――。その思いは人一倍強いはずだ。希望の走順は「4走しかほとんど経験がないので……。与えられた走順でできる限りの走りをしたい」という。どんな立場でも日本代表としての責任をもって走る覚悟がある。

ただ、個人の代表を諦めたわけではない。布勢スプリントは昨年、山縣亮太(セイコー)が9秒95の日本記録を樹立した場所だ。その鳥取で、最後の望みをかける。

柳田(右)にとっては今年の日本選手権は初の表彰台だったが、ここに満足する気持ちはない

在学中の目標は、桐生祥秀(日本生命)が東洋大4年生の時に出した9秒98の大学記録更新。すなわち、学生記録の更新だ。日本選手権のミックスゾーンでは、桐生から「後輩の柳田君が『世代交代ですか?』と言ってくるので負けられない」と明かされる一幕もあった。

明るく、人なつっこい性格。冗談で言ったことなのかもしれない。だが、その可能性が夢じゃないと思わせてくれる。そんなスケールの大きさが、この大型スプリンターにはある。

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