陸上・駅伝

特集:2024日本学生個人選手権大会

福岡大・山形愛羽が100mと200mで「二冠」 世界リレーを経験し、思いを新たに

学生個人で女子100mと200mの二冠に輝いた福岡大の山形(撮影・藤井みさ)

山形愛羽のレース内容

6月15日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
100m予選(風+0.8)11秒68
100m準決勝(風+3.4)11秒36
100m決勝(風+1.7)11秒41

6月16日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
200m予選(風+0.6)24秒48
200m準決勝(風+2.8)23秒77
200m決勝(風+1.4)23秒53

6月15、16日に行われた2024日本学生陸上競技個人選手権女子100mと200mで、福岡大学の山形愛羽(あいは、1年、熊本中央)が「二冠」を達成した。中でも11秒41(追い風1.7m)をマークした100mは、土井杏南(現・JAL)が2012年にマークしたU20日本記録(11秒43)を塗り替える好記録。強い先輩たちとレベルの高い環境下で練習を積み、成長著しい。

100m、200mともに自己ベストと大会記録更新

100m決勝には昨年9月の日本インカレで「ワンツースリーフィニッシュ」を飾った甲南大学の藏重みう(2年、中京大中京)、岡根和奏(3年、龍谷大平安)、奥野由萌(3年、彦根翔西館)のほか、今年5月の関東インカレと昨年の学生個人を制した青山学院大学の石川優(4年、相洋)といった実力者がそろった。そこへ昨年の全国高校総体(インターハイ)で100mと200mの「二冠」を飾った山形がどのように絡んでくるか、注目された。

準決勝で追い風3.4mの参考記録ながら11秒36を出し、「決勝では絶対に自己ベストが出る自信があった」と言う山形。スタート直後の前傾姿勢から、30、40mにかけての「2次加速」を意識した。「自分の中ではそこが勝負だと思っていて、そこで前に出ていれば絶対に負けないし、ちょっとでも遅れていたらシニアの選手の方々にかなわない」。身長154cmと決して大きくはないが「誰にも負けない」と自信を持つピッチで加速を維持。2位の奥野に0秒14先着し、大会記録も更新した。

100mではU20日本新の11秒41をマークし、記念撮影(撮影・藤井みさ)

翌日の200mは予選を24秒48(追い風0.6m)で通過し、準決勝は追い風参考(2.8m)の23秒77。自己記録の23秒88は高校2年のときにマークしたと言い「そこから止まっていたので、絶対に更新したい」という思いを持って決勝に臨んだ。関東インカレ女子1部400mで優勝したフロレスアリエ(2年、東海大静岡翔洋)との一騎打ちを制し、23秒53(追い風1.4m)。有言実行の自己ベストを出すとともに、こちらも100mに続いて大会記録を塗り替えた。

100mの予選を含めて計6本をこなす、タフな2日間を過ごした山形。すべてのレースを終えた後「結構疲労もあって、筋肉痛もあったんですけど、走ったらアドレナリンも出て、あとは気合でした」と振り返った。

200mではフロレスアリエ(右)との勝負を制した(撮影・井上翔太)

「強くなるんだったら福大しかない」

強いチームメートたちと一緒に練習することが、自身の成長につながっていると山形は言い切る。たとえば同級生には、昨年のインターハイで優勝を争った柴藤凜(福大若葉)や江原美月優(神辺旭)らがいる。他にも久保山晴菜(現・今村病院)や兒玉芽生(現・ミズノ)といった、卒業生のトップアスリートとも走ることがある。「練習から日本選手権の決勝レベルで、お互いに意識し合ってできています」と山形。練習から高いレベルで競い合っているから、レース本番に臨むにあたって不安はまったくないと言う。

福岡大に進んだ理由は「強くなるんだったら福大に行くしかない」という直感から。高校時代までは「感覚」に頼る面が大きかったが、大学では動きの一つひとつまで考えて走ることを心がける。「スピード練習や追い込み練習の1本1本について、信岡(沙希重)先生が細かく教えてくださります。アップ中からアドバイスをいただけるので、それをきちんと自分の頭の中で整理して、走りにつなげられていると思います」

強いチームメートたちと練習を積むことが成長につながっている(撮影・藤井みさ)

久保山や兒玉と練習して学べることは? と尋ねられると「一つひとつの動きに集中されていて、『どうしたらそのような動きになるのか』を先生たちと話している姿が、本当にすごいなと思います。自分も動きを確認、相談しながら進めていきたいです」と教えてくれた。

ロサンゼルス・オリンピックは「個人種目で出たい」

今シーズンは、5月にバハマで開催された世界リレーに日本代表として出場し「世界で戦うためには、まだまだ足りない」ということを実感した。特に100mは「11秒前半とかじゃなくて、10秒台を出さないとまずは話にならない。今までは夢みたいに『10秒台を出したい』と言っていたけど、今は本当にめざしています。ここまで来たらかには、しっかり自分の走りと向き合って、陸上人生を続ける中で10秒台を出していきたいです」。世界の舞台を経験したことで、4年後のロサンゼルス・オリンピックは「個人種目で出たい」という思いを新たにした。

世界リレーを経験したことで4年後のオリンピックは「個人種目で出たい」(撮影・井上翔太)

国内の女子短距離勢は、ここのところ苦戦が続いている。福島千里さんが100mの日本記録(11秒21)を打ち立てたのは2010年。今夏のパリオリンピックは個人種目での出場は現状で厳しく、4×100mリレーも出場を逃した。ただ、山形は言う。「信岡先生も『絶対に日本の女子はできる』と言っているので、自分が最初に世界の決勝に行くところを見せたいです」

世界リレーでは、海外選手との体格差や筋肉の付き方の違いを痛感した。「練習量から海外選手を超えないと、強くなれない。海外選手に勝つためにはどうしたらいいのかを考えて、取り組んでいきたいです」。これまであまり採り入れてこなかったウェートトレーニングも少しずつ始め、まだまだ伸びしろはある。

日本選手権では、2種目ともにメダル獲得を狙う。タイムとしては、今年中に100mで11秒3台、200mで23秒4台を出すことをめざす。一つずつ目標をクリアし、いずれは国内トップにとどまらず、国際舞台での活躍を視野に入れている。

日本選手権では2種目ともにメダル獲得を狙う(撮影・井上翔太)

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