陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

青学のスーパールーキー石川優、関東インカレで2冠 夢は学生の内に2度の五輪

初めての関東インカレで石川は100mと200mの2冠を達成した(撮影・全て藤井みさ)

第100回関東学生陸上競技対校選手権

5月20~23日@相模原ギオンスタジアム
石川優(青山学院大1年)
女子1部100m 1位 11秒44(+5.1)
女子1部200m 1位 23秒55(+4.4)
女子1部4×100mリレー 2位 45秒46

石川優(青山学院大1年、相洋)は初出場の関東インカレで、女子100mと200mの2冠を達成。1年生でのスプリント2冠は、のちに世界選手権にも出場した2007年の髙橋萌木子(当時・平成国際大)以来、14年ぶりの快挙となる。アンカーを務めた4×100mリレーでも2位に入り、チーム史上最高順位となる総合3位に大きく貢献するとともに、大会の優秀選手賞も受賞した。これまでの歩みやこれからの目標など、期待のスーパールーキーに迫った。

「1年生で2冠を獲れたのは素直にうれしい」

関東インカレに臨むにあたり、石川は僅(わず)かな不安を抱えていたという。4×100mリレー日本代表として世界リレーに参加し、ポーランド・シレジアから帰国したのが5月4日。そこから2週間のホテルでの隔離期間を経て、関東インカレは解散の翌日が初日だったからだ。しかも隔離中は「練習時間が決められていて、自分のペースで調整できなかった」という。

それでも大会は待ってはくれない。石川は「世界リレーでは他のメンバーがオリンピックの切符をつかんでくれましたが、自分は出場できず悔しかった。オリンピックでは絶対に走りたいので、関東インカレでは100mも200mもタイムを狙っていました」と強い思いを持ち、「結果を出そう」と腹をくくった。

100mは初日の予選(11秒82/向かい風0.2m)、2日目の準決勝(11秒56/追い風6.1m)で、いずれも「スタートで出遅れてしまった」。しかし、決勝はきっちりと修正し、11秒44(追い風5.1m)で1つ目のタイトルを手にした。

100mでは、追い風参考ながら11秒44をマークした(中央が石川)

同じ2日間に予選と決勝をこなした4×100mリレーは、バトン練習が一度もできなかったものの、安井年文総監督の「アンカーに起用し、3走には相洋高校の先輩(金子ひとみ、2年)を入れる」という配慮もあり、決勝は日本体育大学に次ぐ2位(45秒46)でフィニッシュしている。

大会3日目からの200mは、「久々の何日間か続く試合で、少し疲れはあった」というが、予選(25秒03/向かい風2.1m)を終え、「意外に体が動いてくれ、疲労もそれほどこなかった」。最終日の準決勝(24秒13/追い風3.4m)を経て、決勝は参考記録ながら自身初の23秒台となる23秒55(追い風4.4m)で制した。

個人種目2冠に関して、石川はこう振り返る。

「2種目とも追い風参考だったのは少し残念でしたが、1年生で2冠を獲(と)れたのは素直にうれしいですし、今後の試合のモチベーションアップにもなります。優秀選手賞はまさか自分が選ばれるとは思っていませんでしたが、ちゃんと練習やってきて良かったなと改めて感じました」

強豪校の相洋高で世代トップ選手へ

石川は成瀬中に入学し、部活動で陸上を始めたが、中学時代の最高成績は3年生での100mでの関東大会出場。それもあっさりと予選敗退に終わり、自身は「全国にいくなんて、ありえない感じでした」と当時を振り返る。

強豪校の相洋高(神奈川)に進んだ当初も、「先輩たちは全国にバンバン出ていた人たちばかり。本当にここでやっていけるだろうかと不安だった」という。ただ同時に、「せっかく入れてもらったからには、結果を残さないといけない。全国には絶対出たい」と揺るぎない覚悟も持ち合わせていた。

競技に対する真摯(しんし)な姿勢はプラスに働き、めきめき力をつけた石川は、1年目からインターハイ出場を果たす。現在のチームメートでもある高島咲季(2年)らと組んだ4×100mリレーで4位に入賞すると、2年生の時には同種目で日本一に輝いた。一方で悔しい思いも幾度となく味わっている。2年生でのインターハイ100mは、予選で不正スタートにより失格。自身最後となるはずの昨夏のインターハイは、新型コロナウイルスの影響で大会自体が中止になった。

しかし、石川はその時できることをひとつずつクリアしていった。昨年10月の日本選手権100mで高校生最上位の3位に食い込み、3週間後にインターハイの代替大会として開催された全国高校大会では、100mと200mの2冠を達成。100mの11秒56(追い風2.0m)は高校歴代4位タイの好タイムだった。

100m決勝を走り終え、同学年で3位に入った鷺(右)と笑顔を交わした

高校生活で一番印象に残っていることを問うと、それらの輝かしい成績でも、インターハイに関連する苦い思い出でもなかったことは興味深い。

「高校3年間で一番自分が頑張ったと思うのは、個人種目でも4継(4×100mリレー)でもなく、マイル(4×400mリレー)に出たことです。2年の秋に後輩3人と出た時はめちゃくちゃ遅くて、先生に怒られまくりました。1つ上の先輩方がインターハイで優勝するくらいすごい方々だったので、自分たちは全然駄目だと、ずっと言われていました。でも、みんなで練習を積み重ねて、3年の10月にあった全国高校リレー(3位)で全国で戦えるレベルになれたのでうれしかったし、色々な人を見返すことができた気がします」

決して初めから才能に恵まれていたわけではない。それを誰よりも石川自身が理解していたからこそ、たゆまぬ努力を続け、世代トップの選手へと駆け上がることができたのだろう。

青学で本数をこなし、体を鍛え

今年4月に青山学院大学に進学したのは、高島や金子、川崎夏実(2年)といった相洋高の先輩たちから話を聞き、「上を目指していく選手をしっかりサポートしてくれることや、実家から通いやすい」ことが決め手となった。石川に高校1年生の頃から注目していたという安井総監督は、「身長が高くて脚が長い。スタートはちょっと苦手ですが、中間走から後半にかけての2次加速を過ぎた局面で強さがある選手です」と、その走りの特徴を説明する。

4月11日の出雲陸上は、追い風参考(3.0m)だったものの、100mを11秒46で優勝。「緑色のユニホームに違和感がありました」と笑いながらも、大学デビュー戦で好スタートを切った。青山学院大生となって約2カ月、練習の雰囲気もメニューも「高校の頃とは全く違う」と感じている。

「相洋は練習、練習、練習という感じで、絶えず緊張感があったのですけど、青学はいい意味で緩いというか、緊張感はありつつも、みんなで話しながら楽しく陸上ができています。メニューも、相洋では走る本数が少ない代わりに1本1本の質が高かったのに対し、今は例えば250mを3本とか、本数を多めに走り込むイメージです。また、ウェイトトレーニングも大学に入って初めての取り組みで、最初はきちんとできなかったスクワットをやるようになって、股関節から動かせるようになってきた感覚があります」

“世界”を見据えるスーパールーキー

安井総監督は、ウェイトトレーニングについて、「日本の女子スプリンターは、ヨーロッパなどの外国人選手と比べて、上半身がか細い選手が多い。石川は外国人に引けを取らない背丈がありますから、もっと筋肉をつけてパワーをつけると、より力強い走りになってくる」と補足し、「将来的には100mは日本記録(11秒21)に近づいて、グローバルな舞台で活躍できる選手になってほしい」と、スーパールーキーに大きな期待を寄せる。

200mも追い風参考ではあったが、自身初の23秒台となる23秒55をマークした(右が石川)

石川自身も今年度、さらには大学4年間の目標として、“世界”を見据えている。

「今年は、今月の日本選手権で100mと200mで優勝して、東京オリンピックに出場したいです。タイムの目標は、どの試合でも100mは予選から11秒5台を出して、決勝で11秒4台や3台を狙っていければいいかなと。200mは公認記録で23秒台を出すこと。もちろん、青学のメンバーとしても、秋の日本インカレでも記録を出してチームに貢献したいです。また、予定通りなら大学4年の年にもパリオリンピックがあるので、大学在学中に2度、オリンピックに出たいと思っています」

中学の頃は全国大会さえ自分とは無縁の世界に感じていた石川。高校3年間で世代トップから国内トップレベル選手へと成長を遂げ、大学生となった今、アスリートの最高峰であるオリンピックを視野に入れている。無限の可能性を秘めた新星に、ますます目が離せない。

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